【2024年】SAWフィルタとは?用途や仕組み、市場規模などを解説

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【2024年】SAWフィルタとは?用途や仕組み、市場規模などを解説

 

【目次】

    弾性表面波(SAW)の民生用への応用はテレビの映像中間周波数用フィルタが最初で、その後、コードレス電話などへの応用を経て、今やスマートフォンに欠かせない重要部品となっています。必要な周波数は通して、不必要なものはフィルタリングするSAWに代表される高周波フィルタは、スマホでは不可欠なRF部品です。スマホ出荷台数の増加とスマホ本体のハイエンド化に同調して、SAWフィルタの生産数は爆発的に伸びています。スマホ市場拡大の恩恵を最も享受しているスマホ部品の主役です。今回は【2024年】SAWフィルタとは?用途や仕組み、市場規模などを解説を解説します。

     

    1.SAWフィルタとは?概要や特徴について

    (1)SAWフィルタとは

    SAW(surface acoustic wave 弾性表面波)は弾性体表面を伝搬する波のことで、この表面波の性質を応用したフィルタがSAWフィルタです。小型・薄化が可能で、なおかつ高性能で安価という、まさにスマートフォンに最適な特長を持っています。

     

    2. スマートフォンとSAWフィルタ

    SAWフィルタは、スマートフォンなどの移動体通信に使用される周波数帯を中心とした信号のフィルタリング用に使用されます。必要な周波数だけ通して、余計な周波数を取り除くことがこのフィルタの役割です。スマートフォンはLTE、多バンド化などで様々な周波数帯に対応するため、1台に搭載されるSAWフィルタの数は増加し続けています。スマートフォンのハイエンドモデルでは、1台あたり20個以上のSAWフィルタが搭載さます。

     

    3.圧電体と弾性表面波

    物質に圧力を加えると、圧力に比例する形で表面電荷が表れます。この現象を示す物質は圧電体と呼ばれ、この表面に交流電圧を加えることにより(Surface Acoustic Wave:SAW)弾性表面波が生じます。固体表面を伝搬する機械的振動の波です。圧電性基板の上に櫛形電極をつくり、電気信号を振動エネルギーにエネルギー変換します。この原理を利用した無線通信用のフィルタをSAWフィルタと呼んでいます。

    SAW

     

    4. BAWフィルタとはどう異なるのか?

    (1)BAWフィルタとは 

    BAWフィルタは、SAWフィルタとは異なりシリコン基板を使い半導体技術で製造できる。このため、半導体メーカーがフィルタを作ることも可能となる。BAWフィルタには、SMRR型やFBAR型がある。FBAR型は共振器の下部に空洞を設けることで,圧電膜を自由...

    【2024年】SAWフィルタとは?用途や仕組み、市場規模などを解説

     

    【目次】

      弾性表面波(SAW)の民生用への応用はテレビの映像中間周波数用フィルタが最初で、その後、コードレス電話などへの応用を経て、今やスマートフォンに欠かせない重要部品となっています。必要な周波数は通して、不必要なものはフィルタリングするSAWに代表される高周波フィルタは、スマホでは不可欠なRF部品です。スマホ出荷台数の増加とスマホ本体のハイエンド化に同調して、SAWフィルタの生産数は爆発的に伸びています。スマホ市場拡大の恩恵を最も享受しているスマホ部品の主役です。今回は【2024年】SAWフィルタとは?用途や仕組み、市場規模などを解説を解説します。

       

      1.SAWフィルタとは?概要や特徴について

      (1)SAWフィルタとは

      SAW(surface acoustic wave 弾性表面波)は弾性体表面を伝搬する波のことで、この表面波の性質を応用したフィルタがSAWフィルタです。小型・薄化が可能で、なおかつ高性能で安価という、まさにスマートフォンに最適な特長を持っています。

       

      2. スマートフォンとSAWフィルタ

      SAWフィルタは、スマートフォンなどの移動体通信に使用される周波数帯を中心とした信号のフィルタリング用に使用されます。必要な周波数だけ通して、余計な周波数を取り除くことがこのフィルタの役割です。スマートフォンはLTE、多バンド化などで様々な周波数帯に対応するため、1台に搭載されるSAWフィルタの数は増加し続けています。スマートフォンのハイエンドモデルでは、1台あたり20個以上のSAWフィルタが搭載さます。

       

      3.圧電体と弾性表面波

      物質に圧力を加えると、圧力に比例する形で表面電荷が表れます。この現象を示す物質は圧電体と呼ばれ、この表面に交流電圧を加えることにより(Surface Acoustic Wave:SAW)弾性表面波が生じます。固体表面を伝搬する機械的振動の波です。圧電性基板の上に櫛形電極をつくり、電気信号を振動エネルギーにエネルギー変換します。この原理を利用した無線通信用のフィルタをSAWフィルタと呼んでいます。

      SAW

       

      4. BAWフィルタとはどう異なるのか?

      (1)BAWフィルタとは 

      BAWフィルタは、SAWフィルタとは異なりシリコン基板を使い半導体技術で製造できる。このため、半導体メーカーがフィルタを作ることも可能となる。BAWフィルタには、SMRR型やFBAR型がある。FBAR型は共振器の下部に空洞を設けることで,圧電膜を自由に振動させる構成のものです。シリコンに深堀りするためのディープ反応性異方性エッチング・異方性エッチングなど、MEMS技術を用いて製造する必要があります。

       

      (2)SAWフィルとBAWフィルタの違い 

      BAWフィルタはバルク弾性波と呼ぶ圧電膜自体の共振振動を利用する。SAWフィルタは表面弾性波を利用するので、ここが大きな違いです。前述のように、この共振器は基板の種類を問わずシリコン基板上に形成することができます。

       

      5. SAWフィルタの需要を牽引する市場

      SAWフィルタを形成する市場は、スマートフォン端末1台で様々な通信方式に対応したり同じ通信方式でも国や地域によって周波数帯が異なるなど、SAWフィルタの需要を牽引する市場の大きさは凄まじいものがあります。

       

      SAWフィルタは、携帯電話1台あたりミドルレンジスマホでは6~8個、ハイエンドスマホでは実に15~20個も搭載されています。さらに、中国の4Gスマホにおいては、チャイナモバイルなどの通信キャリア大手が3モードではなく、5モード/12バンドを標準仕様と位置づけており、SAWフィルタの搭載員数がiPhoneなどハイエンドスマホに迫る勢いです。SAWフィルタは現在、年間150億個を超える需要があるとされており、今後は、200億個を超える需要に達することが確実視されています。

       

      (1)5G市場におけるSAWフィルタのシェア 

      5Gは、無線通信を一変させる革新的な技術の幅広いカテゴリーで、5GWaveフィルターの世界市場規模は2022年に33百万米ドルとなったと予測され、2029年までは、年間平均成長が35.8%で成長し、301.2百万米ドルの市場規模になると予測されています。 

       

      5GWaveフィルタの主要メーカーには、Mini-Circuits、TDKなどがある。上位2社の世界シェアは80%を超えています。北米は5GWaveフィルタの最大市場で、80%以上のシェアを占め、アジア太平洋地域が10%のシェアを占めています。製品別では、5Gスマートフォンが、70%のシェアを占めています。

       

      6. SAWフィルタの改善余地

      SAWフィルタの小型化は近年めざましい進歩を遂げていますが、さらに一回り小さくすることを目指すためには、チップ材料とチップ設計の両面でのアプローチが欠かせません。また、材料面での改善も不可欠です。SAWフィルタの基板材料には現在、リチウムタンタレートやリチウムナイオベートが使われていますが、二酸化ケイ素の誘電体薄膜を電極の上につけることで高性能化するような試みが進んでいます。材料プロセスと回路の設計をバランスよく調和させることが、SAWフィルタの今後の課題です。

       

      関連解説記事:半導体とは何か?種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説

       

      7. まとめ 

      先端電子部品(SAWフィルタ/BAWフィルタ)は、特定の周波数の電磁波抽出をするもので、通信インフラなど通信機能を有するあらゆる電子機器に組み込まれ、IoT社会に不可欠な基幹物資です。SAWフィルタについてはローエンド品は海外部依存が高まりつつある状況です。BAWフィルタは日本企業の世界シェア4%とすでに海外に依存が進んでいます。データセンター向けなどのハイエンド品は、日本メーカーが優位性を維持しているものの、他国による技術獲得の取組等が継続すれば、ハイエンド品についても優位性を喪失して外部依存が進むおそれがあります。5Gの導入にともない、搭載される周波数帯の組み合わせがより複雑になるなど、フィルタに求められる技術の難易度は高まっています。

       

       

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      この記事の著者

      鈴木 崇司

      IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~

      IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~


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