半導体とは何か?種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説

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半導体とは何か?種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説

 

半導体は導体と絶縁体の中間に位置するものです。半導体デバイスの主な物質はゲルマニウムやシリコンで、抵抗率は導体と絶縁体の間の値となっています。半導体集積回路を半導体と略していますが、半導体素子は物質の電気伝導性を示すもので、半導体集積回路の本質は、略されている集積回路、電子回路のほうにあります。

 

集積回路でなぜ半導体が重要なのでしょうか。回路を設計する必要があるということは、設計条件を満たして、設計した通りに動かす必要があるということです。すなわち、導通させたり、導通さなかったりする素子つまりは0/1の制御が必要になり、これを実現できるのが半導体です。

 

半導体には真性半導体と不純物半導体の2種類があります。この2種類の組み合わせによってスイッチ特性をもつ素子を作ることができますので、回路設計では半導体の理解が非常に重要です。今回は、このような背景を踏まえて、半導体の種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説します。

 

【目次】

1. そもそも半導体とは?

2. 半導体を構成する主な材料

3. 半導体の分類と種類

  •  (1)n型半導体とp型半導体の違い、不純物半導体
  •  (2)ディスクリート半導体
  •  (3)IC(集積回路)
  •  (4)LSI(大規模集積回路)
  •  (5)オプト半導体
  •  (6)センサー半導体
  •  (7)ロジック半導体
  •  (8)メモリ半導体

4. 半導体の具体的な使用シーン

5. PCと半導体

  •  (1)マイクロプロセッサ、DRAM、NAND
  •  (2)SOC

6. パワー半導体

  •  (1)パワー半導体の種類

7. まとめ

 

1. そもそも半導体とは?

半導体デバイスはシリコンウエハ上に数百工程からなる「前工程=ウェハ工程」によりデバイス構造を作りこみ、その後チップに切り分けてパッケージに組み立てる「後工程=組み立て工程」により製品となります。 

 

半導体とは、外形が小型で体積・面積あたりの実装効率がよく、多くの回路・機能を内蔵して、大量のデータを短時間で高精度に処理できます。これらを満たしながら相対的に消費電力と発熱が小さく、独自の処理方式を実現できる仕組みが内蔵されています。 

 

これらの全てを満すのは困難です。しかしこのいくつかを満足するものが半導体です。半導体を活用することでライバルに先駆けて新機能や性能改善で製品価値を増すことも、部品コスト削減や小型化により製品コストを抑えることも可能となります。

 

2. 半導体を構成する主な材料

構成される元素によって半導体は元素半導体・化合物半導体・混晶半導体の3種類に分けることができます。元素半導体は、シリコン、ゲルマニウム、炭素などのⅣ族である一つの元素だけで構成された半導体のことです.化合物半導体は2種類の元素から構成される半導体です.よく使われる化合物半導体にGaAs や、InP などがあり、シリコンではできない発光ダイオードや移動度の高いトランジスターなどに利用されます。

 

3. 半導体の分類と種類

(1)n型半導体とp型半導体の違い、不純物半導体

真性半導体に不純物を添加することで不純物半導体は構成されます。添加不純物はアクセプタとドナーの2種類があります。アクセプタを添加した場合は、ホールを供給しp型半導体となり、ドナーを添加した場合は自由電子を供給しn型半導体になります。リンやアンチモンを真性半導体にドナーとして添加すると、n型半導体(電子が供給)となります。電子供給で、少数キャリアはホール、多数キャリアは電子となります。

 

p型半導体は、ホールが供給されることで、多数キャリアはホール、少数キャリアは電子となります。これは、真性半導体にアクセプタであるインジウムやガリウムの物質を添加すると、結合のための電子が不足してホール供給されるからです。

 

(2)ディスクリート半導体

ディスクリート半導体とは、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、MOS FETなどのことで、複雑な半導体とは別の分類となり、1機能のみを備えている半導体のことです。大量生産が行われ、仕様が同じな製品が多くのメーカーによって製造されています。

 

(3)IC(集積回路)

集積回路はシリコンウェハー上に数百工程からなる「前工程=ウェハー工程」によりデバイス構造を作りこみ、その後チップに切り分けてパッケージに組み立てる「後工程=組み立て工程」により製品となります。集積回路とは、外形が小型で体積・面積あたりの実装効率がよく、多くの回路・機能を内蔵して、大量のデータを短時間で高精度に処理できます。これらを満たしながら相対的に消費電力と発熱が小さく、独自の処理方式を実現できる仕組みが内蔵されています。 

 

これらの全てを満すのは困難です。しかしこのいくつかを満足するものが集積回路です。集積回路を活用することでライバルに先駆けて新機能や性能改善で製品価値を増すことも、部品コスト削減や小型化により製品コストを抑えることも可能となります。

 

(4)LSI(大規模集積回路)

LSI:large scale integrated circuitの略で、ICの集積度の特に大きいものの総称です。集積度による明らかな区別はありません。パッケージ当り50〜100ゲートのものをLSIと呼んでいます。

 

(5)オプト半導体

シリコンフォトニクスへの期待が高まっています。これはシリコン半導体チップと、化合物半導体の高周波・光デバイスを融合させた半導体製造技術で、従来別々に製造していたチップを高集積・小型化して次世代の高速通信ネットワークなどの高度化に対応するものです。ICTの基盤としての光伝送技術分野では,光デバイスそのものを省エネルギー化すると共にICTシステムを省エネルギー化する取り組みが進められています。その実現のためにも、光デバイス小型・集積化の今後を担うシリコンフォトニクス技術の発展が期待されます。

 

シリコンフォトニクスという技術領域は、各種の微小光デバイス、微小光デバイスを要素とする集積回路、CMOSプロセスの活用によるリーズナブルな高精度加工の3点で特徴づけられ、その応用領域は、光伝送だけにとどまらない可能性も持っています。応用領域としては、広域光ネットワーク向けの光トランシーバ、広域光ネットワーク向けの光スイッチ等の制御、装置内ボード間、ボード内チップ間、チップ内の光インターコネクトが考えられ、各々、実用化に向けた動きが活発になっています。例えば量子ドットレーザを組み込むシリコンフォトニクスによりサーバを光電子化すると、100倍の処理速度、1/10の電力消費、1/100の実装面積を実現し、処理速度の壁をレーザー技術で超えることができます。

 

(6)センサー半導体

センサーの構造物は、ダイヤフラム、ビーム、プリング、ウエイト、ミラーなどがあります。ここに登場したものが、MEMSで、MEMSは、マイクロ・エレクトロニクス、マイクロ・メカトロニクス、マイクロ・オプティクスとそれを支える材料技術の融合体で、利用分野も多岐にわたります。通信、バイオテクノロジー、センサネットワークなどです。センサでは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、加速度センサ、角速度センサなどが実現しました。

 

MEMSデバイスのメリットは、小型・低消費電力・低コスト化などです。外形については、従来型加速度センサが、たばこの箱の大きさで、このためアプリケーションは大きな制限を受けていました。それがMEMS技術では、数mm角で実現でき、スマホ、家庭用ゲーム機のコントローラなどへの搭載が進みました。

 

(7)ロジック半導体

ロジック半導体を生産するロジックファウンドリの微細化が進行するサイクルが従来の2年から2.5~3年程度に延長してきていて、7ナノから5ナノへの移行が先延ばしになると言われ始めています。5ナノ投資が2019年以降になり、量産は2021年以降になるという見方です。ちなみに、TSMCの5ナノは2020年着工、2022年量産開始と報道されています。そして、ロジックファウンドリ全体では、7ナノの量産規模が急速に拡大すると予想されています。 

 

また、12ナノ以上の線幅については、減少せずに安定的な生産が続くと予想されています。これは、半導体需要の裾野が広がっているためです。16/20ナノのような先端分野だけでなく、線幅が20ナノ以上のものも生産は安定しています。最先端の製造ラインは、高級スマートフォンやデータセンター用サーバーに搭載するCPUの生産に使いますが、車載半導体の量産品は40ナノであり、中心は150ナノ以上です。

 

(8)メモリ半導体

半導体メモリには、電源を切ると記憶内容が失われる揮発性メモリ、失われない不揮発性メモリがあります。磁気や光学の記憶装置に比べ、データの書き込み、書き換え、消去が高速で、記憶密度が高く、駆動部がないため消費電力が少なく振動に強い特長があります。

 

4. 半導体の具体的な使用シーン

半導体の具体的な使用シーンは、半導体の特長と関連します。すなわち半導体製品が大量・少品種生産を大前提としているところに起因します。半導体のビジネスは、納入数量を最優先します。生産ラインやサプライチェーン、ビジネスモデルのすべてが大量生産、大量販売が前提です。少量生産への柔軟な対応は一般に困難です。さらに短期間で製造技術が進化しますので、積極的に製造中止しなければ採算が取れません。結果として、半導体部品の入手は諦めて市販ボードやモジュールを用いる場合もあると思われます。この場合は、少量でも比較的安価で容易に入手でき、ユーザーが多いものならば利用事例や参考資料も多いでしょう。最新半導体の難易度の高い基板実装や、電源を含む周辺回路を設計する煩わしさからも解放されます。しかしながら予期しない仕様変更や生産中止、入手難はあり得ますし、望むような特別仕様対応はほとんど望めません。

 

半導体の具体的な使用シーンとしては、先端技術としてのモバイル通信規格やAI、自動運転が挙げられます。このいずれにおいても、十分な競争力を実現するには次のような高性能な半導体が不可欠です。

 

【高性能な半導体】

  • 大量のデータを短時間で高精度に処理できる(処理性能)
  • 多くの...

半導体とは何か?種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説

 

半導体は導体と絶縁体の中間に位置するものです。半導体デバイスの主な物質はゲルマニウムやシリコンで、抵抗率は導体と絶縁体の間の値となっています。半導体集積回路を半導体と略していますが、半導体素子は物質の電気伝導性を示すもので、半導体集積回路の本質は、略されている集積回路、電子回路のほうにあります。

 

集積回路でなぜ半導体が重要なのでしょうか。回路を設計する必要があるということは、設計条件を満たして、設計した通りに動かす必要があるということです。すなわち、導通させたり、導通さなかったりする素子つまりは0/1の制御が必要になり、これを実現できるのが半導体です。

 

半導体には真性半導体と不純物半導体の2種類があります。この2種類の組み合わせによってスイッチ特性をもつ素子を作ることができますので、回路設計では半導体の理解が非常に重要です。今回は、このような背景を踏まえて、半導体の種類やそれぞれの特徴、代表例をわかりやすく解説します。

 

【目次】

1. そもそも半導体とは?

2. 半導体を構成する主な材料

3. 半導体の分類と種類

  •  (1)n型半導体とp型半導体の違い、不純物半導体
  •  (2)ディスクリート半導体
  •  (3)IC(集積回路)
  •  (4)LSI(大規模集積回路)
  •  (5)オプト半導体
  •  (6)センサー半導体
  •  (7)ロジック半導体
  •  (8)メモリ半導体

4. 半導体の具体的な使用シーン

5. PCと半導体

  •  (1)マイクロプロセッサ、DRAM、NAND
  •  (2)SOC

6. パワー半導体

  •  (1)パワー半導体の種類

7. まとめ

 

1. そもそも半導体とは?

半導体デバイスはシリコンウエハ上に数百工程からなる「前工程=ウェハ工程」によりデバイス構造を作りこみ、その後チップに切り分けてパッケージに組み立てる「後工程=組み立て工程」により製品となります。 

 

半導体とは、外形が小型で体積・面積あたりの実装効率がよく、多くの回路・機能を内蔵して、大量のデータを短時間で高精度に処理できます。これらを満たしながら相対的に消費電力と発熱が小さく、独自の処理方式を実現できる仕組みが内蔵されています。 

 

これらの全てを満すのは困難です。しかしこのいくつかを満足するものが半導体です。半導体を活用することでライバルに先駆けて新機能や性能改善で製品価値を増すことも、部品コスト削減や小型化により製品コストを抑えることも可能となります。

 

2. 半導体を構成する主な材料

構成される元素によって半導体は元素半導体・化合物半導体・混晶半導体の3種類に分けることができます。元素半導体は、シリコン、ゲルマニウム、炭素などのⅣ族である一つの元素だけで構成された半導体のことです.化合物半導体は2種類の元素から構成される半導体です.よく使われる化合物半導体にGaAs や、InP などがあり、シリコンではできない発光ダイオードや移動度の高いトランジスターなどに利用されます。

 

3. 半導体の分類と種類

(1)n型半導体とp型半導体の違い、不純物半導体

真性半導体に不純物を添加することで不純物半導体は構成されます。添加不純物はアクセプタとドナーの2種類があります。アクセプタを添加した場合は、ホールを供給しp型半導体となり、ドナーを添加した場合は自由電子を供給しn型半導体になります。リンやアンチモンを真性半導体にドナーとして添加すると、n型半導体(電子が供給)となります。電子供給で、少数キャリアはホール、多数キャリアは電子となります。

 

p型半導体は、ホールが供給されることで、多数キャリアはホール、少数キャリアは電子となります。これは、真性半導体にアクセプタであるインジウムやガリウムの物質を添加すると、結合のための電子が不足してホール供給されるからです。

 

(2)ディスクリート半導体

ディスクリート半導体とは、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、MOS FETなどのことで、複雑な半導体とは別の分類となり、1機能のみを備えている半導体のことです。大量生産が行われ、仕様が同じな製品が多くのメーカーによって製造されています。

 

(3)IC(集積回路)

集積回路はシリコンウェハー上に数百工程からなる「前工程=ウェハー工程」によりデバイス構造を作りこみ、その後チップに切り分けてパッケージに組み立てる「後工程=組み立て工程」により製品となります。集積回路とは、外形が小型で体積・面積あたりの実装効率がよく、多くの回路・機能を内蔵して、大量のデータを短時間で高精度に処理できます。これらを満たしながら相対的に消費電力と発熱が小さく、独自の処理方式を実現できる仕組みが内蔵されています。 

 

これらの全てを満すのは困難です。しかしこのいくつかを満足するものが集積回路です。集積回路を活用することでライバルに先駆けて新機能や性能改善で製品価値を増すことも、部品コスト削減や小型化により製品コストを抑えることも可能となります。

 

(4)LSI(大規模集積回路)

LSI:large scale integrated circuitの略で、ICの集積度の特に大きいものの総称です。集積度による明らかな区別はありません。パッケージ当り50〜100ゲートのものをLSIと呼んでいます。

 

(5)オプト半導体

シリコンフォトニクスへの期待が高まっています。これはシリコン半導体チップと、化合物半導体の高周波・光デバイスを融合させた半導体製造技術で、従来別々に製造していたチップを高集積・小型化して次世代の高速通信ネットワークなどの高度化に対応するものです。ICTの基盤としての光伝送技術分野では,光デバイスそのものを省エネルギー化すると共にICTシステムを省エネルギー化する取り組みが進められています。その実現のためにも、光デバイス小型・集積化の今後を担うシリコンフォトニクス技術の発展が期待されます。

 

シリコンフォトニクスという技術領域は、各種の微小光デバイス、微小光デバイスを要素とする集積回路、CMOSプロセスの活用によるリーズナブルな高精度加工の3点で特徴づけられ、その応用領域は、光伝送だけにとどまらない可能性も持っています。応用領域としては、広域光ネットワーク向けの光トランシーバ、広域光ネットワーク向けの光スイッチ等の制御、装置内ボード間、ボード内チップ間、チップ内の光インターコネクトが考えられ、各々、実用化に向けた動きが活発になっています。例えば量子ドットレーザを組み込むシリコンフォトニクスによりサーバを光電子化すると、100倍の処理速度、1/10の電力消費、1/100の実装面積を実現し、処理速度の壁をレーザー技術で超えることができます。

 

(6)センサー半導体

センサーの構造物は、ダイヤフラム、ビーム、プリング、ウエイト、ミラーなどがあります。ここに登場したものが、MEMSで、MEMSは、マイクロ・エレクトロニクス、マイクロ・メカトロニクス、マイクロ・オプティクスとそれを支える材料技術の融合体で、利用分野も多岐にわたります。通信、バイオテクノロジー、センサネットワークなどです。センサでは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、加速度センサ、角速度センサなどが実現しました。

 

MEMSデバイスのメリットは、小型・低消費電力・低コスト化などです。外形については、従来型加速度センサが、たばこの箱の大きさで、このためアプリケーションは大きな制限を受けていました。それがMEMS技術では、数mm角で実現でき、スマホ、家庭用ゲーム機のコントローラなどへの搭載が進みました。

 

(7)ロジック半導体

ロジック半導体を生産するロジックファウンドリの微細化が進行するサイクルが従来の2年から2.5~3年程度に延長してきていて、7ナノから5ナノへの移行が先延ばしになると言われ始めています。5ナノ投資が2019年以降になり、量産は2021年以降になるという見方です。ちなみに、TSMCの5ナノは2020年着工、2022年量産開始と報道されています。そして、ロジックファウンドリ全体では、7ナノの量産規模が急速に拡大すると予想されています。 

 

また、12ナノ以上の線幅については、減少せずに安定的な生産が続くと予想されています。これは、半導体需要の裾野が広がっているためです。16/20ナノのような先端分野だけでなく、線幅が20ナノ以上のものも生産は安定しています。最先端の製造ラインは、高級スマートフォンやデータセンター用サーバーに搭載するCPUの生産に使いますが、車載半導体の量産品は40ナノであり、中心は150ナノ以上です。

 

(8)メモリ半導体

半導体メモリには、電源を切ると記憶内容が失われる揮発性メモリ、失われない不揮発性メモリがあります。磁気や光学の記憶装置に比べ、データの書き込み、書き換え、消去が高速で、記憶密度が高く、駆動部がないため消費電力が少なく振動に強い特長があります。

 

4. 半導体の具体的な使用シーン

半導体の具体的な使用シーンは、半導体の特長と関連します。すなわち半導体製品が大量・少品種生産を大前提としているところに起因します。半導体のビジネスは、納入数量を最優先します。生産ラインやサプライチェーン、ビジネスモデルのすべてが大量生産、大量販売が前提です。少量生産への柔軟な対応は一般に困難です。さらに短期間で製造技術が進化しますので、積極的に製造中止しなければ採算が取れません。結果として、半導体部品の入手は諦めて市販ボードやモジュールを用いる場合もあると思われます。この場合は、少量でも比較的安価で容易に入手でき、ユーザーが多いものならば利用事例や参考資料も多いでしょう。最新半導体の難易度の高い基板実装や、電源を含む周辺回路を設計する煩わしさからも解放されます。しかしながら予期しない仕様変更や生産中止、入手難はあり得ますし、望むような特別仕様対応はほとんど望めません。

 

半導体の具体的な使用シーンとしては、先端技術としてのモバイル通信規格やAI、自動運転が挙げられます。このいずれにおいても、十分な競争力を実現するには次のような高性能な半導体が不可欠です。

 

【高性能な半導体】

  • 大量のデータを短時間で高精度に処理できる(処理性能)
  • 多くの回路・機能を内蔵している(高集積)
  • 外形が小型で体積・面積あたりの実装効率がよい(高集積)
  • 以上を満たしながら相対的に消費電力と発熱が小さい(処理性能)
  • 独自の処理方式を実現できる仕組みが内蔵されている(処理性能)

 

全部を満たすのは至難ですが、少なくともこのいくつかを満足させるのが高性能半導体です。高性能半導体があれば、現実世界をリアルタイムで学習しながら運転を改善できる自動運転車や、同じ面積・電力で何倍も何十倍も処理能力の高いデータセンターがより容易に実現できます。高性能半導体を持たないと、競争が圧倒的に不利になることは明らかです。

 

5. PCと半導体

(1)マイクロプロセッサ、DRAM、NAND

PCを分解すると、様々な部品から構成されていることがわかります。その内、ハードディスクドライブには、OSが格納されています。最近はHDDに替わって、SSDが使われるPCが主流となってきました。SSDには、NANDフラッシュ(以下NAND)という半導体メモリが搭載されています。HDDに比べてSSDは振動に強く、消費電力が低く、動作速度が速いのです。

 

HDDもSSDも、人間の脳にたとえると、長期記憶に相当する役割を担っています。電源を切っても、HDDやSSDの記憶は消えません。一度読み込んだデータは長期間、記憶されるのです。

 

最近主流となったSSDに使われているNANDにおいては、世界シェア1位がサムスン電子で、2位は東芝メモリです。SSDに記憶されていたOSは、DRAMという半導体メモリに移行され、DRAMは、NANDと違って電源を切ると記憶が消えてしまうメモリで、SSDほど大容量の記憶はできません。しかし、高速に読み出し書き込み動作ができるという特徴があります。人間の脳でいえば、「短期記憶」に相当する役割を担っています。

 

DRAMのすぐ近くには、CPUという半導体があります。マイクロプロセッサは、人間の脳で言えば思考する役割を担っています。キーボードに入力したデータをDRAMが記憶し、そのDRAMとマイクロプロセッサがデータをやり取りしながら、仕事を行うのです。このように、PCには、半導体の種類としてプロセッサ、DRAM、NANDの半導体が搭載されています。

 

(2)SOC

SOC:System-on-a-chipと呼ばれる半導体があります。SOCとは、プロセッサやメモリをひとつにまとめ、その1チップだけで、あるひとつのシステムが動作するようにした半導体です。SOCにおいては、設計を専門に行うファブレスという半導体企業が多数存在し、ファブレスが設計したSOCを専門に製造するファンドリーという半導体企業が存在するのです。そのなかで特に、アップルのiPhone用のSOCを独占的に製造しているTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.:台湾)がファンドリーのチャンピオンです。

 

6. パワー半導体

CPUやメモリは、人間の体に例えるなら頭脳です。そしてパワー半導体は筋肉です。CPUやメモリと役割の異なるパワー半導体ですが、他にもいろいろな違いがあります。CPUやメモリといった集積回路は、小電力で動作します。一方、パワー半導体は小電力から大電力を扱います。モーター用の大電力を供給する場合もあれば、CPUやメモリ用の小電力を供給する場合もあるのです。そのため、パワー半導体の大きなものは、弁当箱を超えるようなサイズまであります。

 

パワー半導体は、力強さが求められる産業機器分野に主眼が置かれていますが、コンピュータや民生機器にも使用されます。

 

【パワー半導体の種類】

半導体でスイッチングを行うデバイスとしては、パワートランジスタとサイリスタがありますが、これらはスイッチングデバイスと呼ばれます。ダイオードはスイッチングを行わないデバイスです。

 

パワートランジスタは、数あるパワー半導体の中でも応用範囲が広く、デバイスとしては技術開発が盛んな部類です。パワートランジスタには、主に、パワーMOSFET、バイポーラトランジスタ、IGBTの3つがあります。

 

パワーMOSFETは、CPUに似た構造で、パワートランジスタの中で最も高速なスイッチングが行えます。バイポーラトランジスタに比べ、大きな電力が扱いにくく、MOSFETは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタと訳されます。

 

バイポーラトランジスタはパワートランジスタの中で、最も構造がシンプルなこともあり、より大きな電力を扱えるという利点があります。ただスイッチング動作するために消費電力が大きく、スイッチング速度も比較的遅いのです。

 

IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略で、その構造は、バイポーラトランジスタとパワーMOSFETを組み合わせたもので、大きな電力が扱えると同時に高速スイッチングが行えるという利点を持ちます。ただし、その構造は複雑で、比較的大きな電力領域ではIGBTが主に用いられます。

 

7.まとめ

ここでは、まとめとして、半導体の主なものを改めて紹介します。半導体集積回路メーカーが手掛けているICには、GPU、DSP、MPU(Micro-Processing Unit:マイクロプロセッサ)、電源IC、レーザーやLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、メモリ(DRAMとNANDフラッシュ)、FPGA、通信モデムIC、アナログIC(ADC/DAC)、受光素子やCMOSセンサ、MEMSなどがあります。

 

そして、今後の成長分野としては、高周波半導体とパワー半導体です。高周波半導体はこれから成長が期待される製品です。パワー半導体は電動車のモータ制御をしたり、回生ブレーキによる充電を制御したり、車内のパワーウインドウ・ワイパーなどさまざまな小型モータの駆動にもパワー半導体が使われています。さらにワイヤレス製品が増えるほど無線回路に高周波半導体は欠かせなくなります。次世代移動通信システムには高周波半導体への要求が高まります。生成AIにおけるAIもチップがカギを握るようになり、Google、Facebook、Amazon、Intel、Microsoftなどが熾烈な競争が始まっています。

 

 

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この記事の著者

鈴木 崇司

IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~

IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~


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