全固体電池とは?メリット・デメリットは?開発状況や将来性について

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全固体電池とは?メリット・デメリットは?開発状況や将来性について


近年、エネルギー貯蔵技術として全固体電池が注目を集めています。この技術の実現が進むと、現代のエネルギーシステムは大きく変革する可能性があります。本記事では、全固体電池の基本原理からメリット・デメリット、そして現在の開発状況について詳しく解説します。

 
1. 全固体電池とは何か

全固体電池は、その名の通り、名前の通り液体やゲルを一切使用せず、すべての成分が固体で構成される電池のことを指します。一般的なリチウムイオン電池では、電解質として液体が使用されるのが特徴ですが、全固体電池はこれを固体で置き換えることで、リークのリスクを減少させたり、熱安定性を向上させるなどの利点が得られます。
具体的な構造としては、負極、固体電解質、および正極から成り立っており、イオンの移動はこの固体電解質内で行われます。

全固体電池の仕組みや構造

全固体電池の核心部分は固体電解質です。この電解質がイオンの移動を担当し、電池の動作を支える役割を果たします。この固体電解質の性質や特性は、電池の全体的な性能に影響を及ぼします。

 


関連記事:全個体電池とは従来の電池と何が違うのか? わかりやすく解説


 

2. 全固体電池の製造方法の種類

全固体電池の製造技術は日々進化しています。主な製造方法としては、バルク型と薄膜型の2つが挙げられます。

バルク型全固体電池

バルク型全固体電池は、固体電解質を大量に使用し、厚みのある形状にする方式です。この形状がもたらす利点は、製造過程が比較的簡易であることです。一方で、イオンの移動距離が長くなるため、内部抵抗の増大や充放電速度の低下が懸念されます。

薄膜型全固体電池

薄膜型の全固体電池は、先進的な製造技術を駆使して、電解質を薄いフィルム状に形成する方式です。この薄い構造のため、イオンの移動距離が短縮され、高い電気伝導性や迅速な充放電反応が可能となります。また、この方式は緻密な層の重ね合わせにより、エネルギー密度を高める可能性も秘めています。

 

3. 電解質の素材の種類

電解質の種類や性質は、全固体電池の性能や特性に大きく関わります。

酸化物系(無機/セラミック)

酸化物系の固体電解質は、主にセラミック材料で構成されるものです。これは高いイオン伝導性を持ち、特に高温環境下での動作に適しています。しかし、セラミックは破壊しやすいという性質から、電池の柔軟性や耐衝撃性に課題があるとされています。

硫化物系

硫化物系の固体電解質は、近年注目を浴びている材料の一つであり、特にアンモニウム塩を基にしたものが研究されています。これは、非常に高いイオン伝導性を持ち、またリチウムイオンの挿入・排出に適しています。

ポリマー系

ポリマー系の固体電解質は、有機高分子材料をベースとしたものです。これは、柔軟性に富むため、曲げや衝撃に対しての耐性が高いという特長があります。また、加工性に優れているため、さまざまな形状の電池を製造することが可能です。しかし、伝導性は無機材料に比べて低い傾向にあります。
 

 
4. 全固体電池の仕組みや原理

全固体電池とは、液体の電解質を使用しない、完全に固体成分から成る電池のことを指します。これにより、液漏れのリスクが低減し、形状の自由度が高まります。
原理的には、リチウムイオン電池と同じく、リチウムイオンが正極と負極の間で移動することによって電気を発生させます。しかし、全固体電池ではイオンの移動が固体電解質内で行われるため、その材料や構造が性能に大きく影響します。

カソード(正極)

カソードは、電池の充電時にリチウムイオンを吸収し、放電時にこれを放出する部分です。全固体電池のカソード材料としては、酸化物や硫化物をベースにしたものが多く用いられます。これらの材料は、高いエネルギー密度と安定性を持つとされています。適切なカソード材料の選択は、電池のエネルギー密度やサイクル寿命に直接影響します。

 

セパレータ

セパレータは、正極と負極の間に配置され、物理的に二つの極を隔てる役割を果たす部分です。しかし、全固体電池では、この...

全固体電池とは?メリット・デメリットは?開発状況や将来性について


近年、エネルギー貯蔵技術として全固体電池が注目を集めています。この技術の実現が進むと、現代のエネルギーシステムは大きく変革する可能性があります。本記事では、全固体電池の基本原理からメリット・デメリット、そして現在の開発状況について詳しく解説します。

 
1. 全固体電池とは何か

全固体電池は、その名の通り、名前の通り液体やゲルを一切使用せず、すべての成分が固体で構成される電池のことを指します。一般的なリチウムイオン電池では、電解質として液体が使用されるのが特徴ですが、全固体電池はこれを固体で置き換えることで、リークのリスクを減少させたり、熱安定性を向上させるなどの利点が得られます。
具体的な構造としては、負極、固体電解質、および正極から成り立っており、イオンの移動はこの固体電解質内で行われます。

全固体電池の仕組みや構造

全固体電池の核心部分は固体電解質です。この電解質がイオンの移動を担当し、電池の動作を支える役割を果たします。この固体電解質の性質や特性は、電池の全体的な性能に影響を及ぼします。

 


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2. 全固体電池の製造方法の種類

全固体電池の製造技術は日々進化しています。主な製造方法としては、バルク型と薄膜型の2つが挙げられます。

バルク型全固体電池

バルク型全固体電池は、固体電解質を大量に使用し、厚みのある形状にする方式です。この形状がもたらす利点は、製造過程が比較的簡易であることです。一方で、イオンの移動距離が長くなるため、内部抵抗の増大や充放電速度の低下が懸念されます。

薄膜型全固体電池

薄膜型の全固体電池は、先進的な製造技術を駆使して、電解質を薄いフィルム状に形成する方式です。この薄い構造のため、イオンの移動距離が短縮され、高い電気伝導性や迅速な充放電反応が可能となります。また、この方式は緻密な層の重ね合わせにより、エネルギー密度を高める可能性も秘めています。

 

3. 電解質の素材の種類

電解質の種類や性質は、全固体電池の性能や特性に大きく関わります。

酸化物系(無機/セラミック)

酸化物系の固体電解質は、主にセラミック材料で構成されるものです。これは高いイオン伝導性を持ち、特に高温環境下での動作に適しています。しかし、セラミックは破壊しやすいという性質から、電池の柔軟性や耐衝撃性に課題があるとされています。

硫化物系

硫化物系の固体電解質は、近年注目を浴びている材料の一つであり、特にアンモニウム塩を基にしたものが研究されています。これは、非常に高いイオン伝導性を持ち、またリチウムイオンの挿入・排出に適しています。

ポリマー系

ポリマー系の固体電解質は、有機高分子材料をベースとしたものです。これは、柔軟性に富むため、曲げや衝撃に対しての耐性が高いという特長があります。また、加工性に優れているため、さまざまな形状の電池を製造することが可能です。しかし、伝導性は無機材料に比べて低い傾向にあります。
 

 
4. 全固体電池の仕組みや原理

全固体電池とは、液体の電解質を使用しない、完全に固体成分から成る電池のことを指します。これにより、液漏れのリスクが低減し、形状の自由度が高まります。
原理的には、リチウムイオン電池と同じく、リチウムイオンが正極と負極の間で移動することによって電気を発生させます。しかし、全固体電池ではイオンの移動が固体電解質内で行われるため、その材料や構造が性能に大きく影響します。

カソード(正極)

カソードは、電池の充電時にリチウムイオンを吸収し、放電時にこれを放出する部分です。全固体電池のカソード材料としては、酸化物や硫化物をベースにしたものが多く用いられます。これらの材料は、高いエネルギー密度と安定性を持つとされています。適切なカソード材料の選択は、電池のエネルギー密度やサイクル寿命に直接影響します。

 

セパレータ

セパレータは、正極と負極の間に配置され、物理的に二つの極を隔てる役割を果たす部分です。しかし、全固体電池では、このセパレータも電解質の役割を果たし、リチウムイオンの移動を許容します。そのため、セパレータの材料や構造は、電池のイオン伝導性や安全性に直接影響します。

 

アノード(負極)

アノードはカソードとは反対側に位置する電極で、全固体電池においてもリチウムイオンの移動と電子の移動を伴う反応が起こります。一般的なリチウムイオン電池のアノード材料としては、黒鉛が主に用いられていますが、全固体電池においては、シリコン、リチウム金属、リチウムチタン酸など、様々な材料が研究・開発されています。放電時には、アノードにリチウムイオンが吸収され、充電時には放出されるという反応が起こります。

 

電解質

電解質は、リチウムイオンの移動を許容する部分であり、全固体電池の中核をなす部分です。液体電解質とは異なり、全固体電池の電解質は固体であり、これがイオンの移動を支える役割を果たします。電解質の材料には、酸化物系、硫化物系、ポリマー系などがあり、それぞれの材料には、伝導性や安定性、製造技術に関する特徴があります。適切な電解質の選択は、電池の全体的な性能や安全性を決定する要因となります。
 

 
5. 全固体電池のメリットとは

全固体電池はその特性から多くの製品に利点をもたらしています。

 

メリット:安全に使用できる

全固体電池は、その名の通り、全ての成分が固体で構成されているため、内部での液体の動きや膨張が起こりにくいため、電池内部の短絡やオーバーヒートが起きにくくなります。また、液体電解質を使用したリチウムイオン電池では、火災や爆発のリスクがあることが知られていますが、全固体電池ではそのリスクが大幅に低減します。この安全性の高さは、電動車や家電製品など、多くの製品において非常に重要な要素となります。

 

メリット:液漏れしない

液体電解質を使用する従来の電池では、高温や衝撃などの外部からのストレスにより液漏れが発生する可能性がありました。しかし、全固体電池では、全ての成分が固体であるため、液漏れの心配が一切ありません。これにより、電池の長期間の保存や運搬が容易になり、保管時の安全性も向上します。

 

メリット:高エネルギー密度

全固体電池は、リチウム金属をアノードとして使用することが可能です。リチウム金属の使用により、単位体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上します。これにより、より小型かつ軽量で高いエネルギーを持つ電池の製造が可能となります。特に電動車やドローンなど、エネルギー密度が要求されるアプリケーションにおいて、全固体電池の利用は革命的とも言えるメリットをもたらします。

 

メリット:急速充電ができる

全固体電池の一部は、急速に充電することが可能です。これは、固体電解質が持つ高いイオン伝導性と、アノードやカソードの材料の選択によるものです。急速充電に対応する全固体電池を使用することで、短時間での充電が求められる場面、例えば電動車の充電ステーションなどでの高速充電が実現可能となります。

 
6. 全固体電池のデメリットとは

様々なメリットがある全固体電池ですが、下記の様なデメリットもあります。

デメリット:高温動作に弱い

全固体電池は、固体電解質を用いるため、一般的に高温での動作に弱いとされます。固体電解質の中でも、特にセラミック系の電解質は、高温での熱膨張や収縮が大きく、電極との界面での接触不良や割れが発生するリスクが高まります。このため、継続的な高温環境下での使用や、急激な温度変化には適していないという課題があります。

 

デメリット:連続的な大電流供給が難しい

全固体電池は、固体間のイオンの移動が液体電解質に比べて制約されるため、大電流の供給や放電が難しいという特性があります。特に、電解質と電極の界面でのイオンの移動抵抗が大きいと、高電流時の動作に制約が生じることが多いです。このため、例えば、大容量の負荷がかかる電動車の急加速時など、一時的な大電流の要求があるシチュエーションでの利用には課題が残ると言えます。

 
7. 全固体電池の実用化への開発状況

全固体電池(solid-state battery)は、近年のエネルギー貯蔵技術の研究開発の中心的存在として注目を浴びています。以下、全固体電池の実用化に向けた開発状況について解説します。

1.研究の進展

全固体電池に関する基礎研究は、数十年以上前から行われていますが、最近の技術進展により、商業化に向けた動きが加速しています。特に、固体電解質の材料技術や、電極と固体電解質との界面技術の進展が顕著です。

 

2.産業界の動き

多くの大手電池メーカーや自動車メーカーが全固体電池の研究・開発に注力しています。これらの企業は、2020年代中盤以降に商業化を目指しており、一部の企業はすでに試作品を公開しています。

 

3.実用化の課題

全固体電池の実用化にはまだいくつかの技術的な課題が残っています。例えば、長期間の信頼性、高電流充放電時の性能、生産技術の確立などです。これらの課題を解決するための研究が盛んに行われています。


全固体電池の実用化に向けた動きは、エネルギー技術の革新として、そして環境問題への対応として、非常に大きな意義を持っています。今後の技術開発の進展によっては、私たちの生活や産業のさまざまなシーンで全固体電池が普及する日が近いかもしれません。

 


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8. まとめ

全固体電池は、次世代の電池技術として大きな期待が寄せられています。多くのメリットを持つ一方で、いくつかの課題も存在するため、今後の技術開発が注目されます。特に、安全性やエネルギー密度の向上が期待される中、実用化への道のりはまだ長いとも言われていますが、そのポテンシャルは非常に高く、エネルギー産業における大きな革命をもたらすのではないでしょうか。

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


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