イノベーションの発想 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その121)

 

前回から、「発想のフレームワークを使ってイノベーティブなアイデアを発想する手順」の次のステップで、かつ最後のステップである「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」について解説しています。今回は、前回に続けて解説します。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

シュンペーターのモデルを基本にしつつも、あるべき「発想するフレームワーク」を創出するには、以下のような概念を追加していく必要がありそうです。

 

1.シュンペーターのモデルの階層化

今回は、前回解説した、「あるべき発想するフレームワーク」の1つ目の「シュンペーターのモデルの階層化」です。シュンペーターのモデルとは、シュンペーターがイノベーションは、天から降ってくるものではなく、既存知識の新しい組み合わせ、すなわち「新結合」で生み出される、と定義したモデルのことを言います。
 

(1)人間の頭脳の情報蓄積・処理能力は限定されている

人間の頭脳は、コンピューターなどに比べると、情報の蓄積能力や処理の対象となりうる情報量において各段に劣っています。しかし、現実にはその劣った情報蓄積・処理能力しかない人間の頭脳が、様々な偉大なイノベーションを起こしています。それでは、人間の頭脳はどう機能して、偉大なイノベーションを起こすことができるのでしょうか?

 

(2)現実には瞬時にスパーク(新結合)が起こるものではない

そもそも人間の頭の中で起こる大きなイノベーションのための「新結合」は、良く漫画のイラストで出てくるように、頭の中で電球がパットつくように、瞬時に生まれるようなものではないということです。もう少し時間をかけて、準備がなされ、最後にその結果として大きなイノベーションが起こる、というように実現されるように思えます。

 

(3)シュンペーターのモデルの階層化:小さな情報蓄積・処理能力しかない人間の頭脳が大きなイノベーションを起こす仕組み

私は、以下のように、大きなイノベーションは段階的に徐々に進む仕組みにより起こるのではないかと考えます。

 

◎人間の頭脳は、もともとの多数の情報・知識の中から、選択的に「新結合」の対象となる情報・知識を見つけ、それらを「より質の高い上位の知識」に「新結合」することにより、もともとの情報・知識を「結晶化・集約」する。「より質の高い上位の知識」とは、新しい発見が含まれ、その後の「新結合」により、大きなイノベーションを生み出す基の知識となる知識のことを言いう。いうなれば、小イノベーション。ここでいう「もともとの情報・知識」とは、後で最終的に大きなイノベーションを起こすもととなった、もともとの多数の情報・知識のことを言う。

 

◎そのような「結晶化・集約」により、「もともとの多数の情報・知識」の量を減らし、次のより上位の「新結合」に向けて処理対象の情報量を減らす。それにより、情報蓄積・処理能力の劣...

る人間の頭脳の負荷を減らす。

 

◎日々このような活動を行い、多数の「もともとの情報・知識」を「結晶化・集約」をしながらも、小イノベーションを増やし、より上位の「新結合」が起こりやすくするように準備をする。

 

◎そのような作業を繰り返すことで「新結合」の対象となりうる「より質の高い上位の知識」を数多く蓄積し、その「より質の高い上位の知識」の中から重要な知識を選択し、それらの最終的な「新結合」により、大きなイノベーションを起こす。

 

次回は、この「シュンペーターのモデルの階層化」の、イノベーションを起こすための日々の活動への意味合いを解説します。

 

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