海流発電とは

 

日本は海に囲まれて近海を黒潮が流れ、海峡では潮の干満で海流が出入りします。この地理的条件から海流発電の実用化は早いのではないかと考えられていました。海流発電は、いろいろな海域で実証試験は続けられてはいますが、決め手となるような海流発電システムは登場していないのです。海流の速度や流れの特性、海の深さが様々であるために、設置地点に即した特注設備になりそれが阻害要因になっています。内海の海峡部については、漁業事業者への対応が必要となることもあります。

NEDOからは、海洋エネルギー発電実証等研究開発事業の基本計画、2020年度実施方針が出されています。NEDOは海流発電を離島用電源に実用化を想定しており、発電コストは40円/kWhが実現できるとしています。2021年度の再エネ固定価格買取制度では、浮体式洋上風力発電の買取価格が36円/kWhと設定されていますから、受け入れ可能なコストだと言えるでしょう。

 

今回は、このような背景を踏まえて、海流発電の概要を解説します。

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1.海流発電とは

 

海流は、海の中を水平移動する海水の流れです。日本では、親潮、黒潮が代表的で、黒潮はメキシコ湾流と並び世界2大海流の巨大海流です。流速は3ノット(時速約5.6キロ)前後で、幅は約100キロ前後です。海中を進む海流は潮汐に影響されず、通年で安定した速さで流れます。このような巨大海流を領海内で利用できる日本は世界的に見ても海流発電の最適条件を満足しています。この巨大エネルギー源を有効利用するのです。長年の開発技術が現実のものになろうとしています。巨大海流発電を実現にする基礎技術が、官民学一体の国家プロジェクトとして実を結びつつあります。海流発電の方式は、海流をプロペラなどで受け、流れる力から回転力へ転換させて電力を得るシンプルなものです。空気の約800倍の密度がある海水のエネルギーは大きいが、風力に比べてその流れる速度は遅いのです。

 

2.海流発電のデメリット

 

海流発電のデメリットとしては、海流のルートが一定しないということです。黒潮も同様で、毎年その流れをみて海流発電設備を設置しなおすとコストが莫大にかかってしまいます。一方、海流発電設備を海流に合わせて動けるようにするシステムは開発されていません。この点が、大きな課題で海流発電を実現するハードルです。海流発電の懸念事項として黒潮本体のエネルギー自体が減ってしまうのではないかという点です。黒潮のエネルギー変動が、海の生態系に影響する可能性もあります。

 

3.海流発電のメリット

 

海流発電のメリットとしては、環境に優しいということです。それは、なぜかというと、

二酸化炭素の排出がないためです。エネルギーを単に発生させさえすれば良いという時代は終わり、環境にやさしいエネルギー作りが必須です。車でも今は電気自動車の普及が常態化しています。このような背景で環境にやさしい海流発電は大きなメリットです。

 

太陽光も風力も環境にやさしいという観点では素晴らしいのですが、海流発電には太陽光・風力の2つにないメリットがあります。再生可能エネルギーでありながら天候に左右されないという点です。海流発電の場合、海水の密度が大きいことから、発電が常に安定したエネルギーを供給することができるのです。発電機自体は海中設置のため、発電機が人目につきません。これは、地上では発電機をどこでも設置できるかというと不可能ですが、海中なので問題がないの...

です。船舶との衝突を避けるため海中深くの設置で、海上の悪天候の影響がありません。

 

4.海流発電は今後どうなるか

 

アメリカでは、メキシコ湾流が流れるので海流発電の基礎研究が進んでいます。イギリスを中心に、ヨーロッパでは波力と潮流のエネルギー密度が高い波力、潮流、潮汐力を利用した発電が進んでいます。海洋エネルギー利用の発電は、それぞれの国にとってポテンシャルが高い分野から取り組まれています。海流発電は、試算上40~70%と桁違いのポテンシャルです。今後、実用化に至った場合は、電力の安定供給に水中浮遊式海流発電システムは世界の2大海流である黒潮の流域で再生可能エネルギー活用に寄与することは明白です。

 

 

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