基本的な考え方 ジャスト・イン・タイム生産(その12)

 

【目次】

第2章 基本的な考え方を押さえておく

(1) 「改革」である
  「改善」と「改革」の違いとは
  「自己啓発」ではなく「自己革新」を行なう
  「改革」と「改善」を使い分ける
(2) 「ムダ取り」である
   生産性の向上は改革の結果
  「ムダ」とは何か
(3) 「流れ」である
   製造業には7つの流れがある
   流れ化の5つのポイント
   流れ生産の基本は「1個流し」
   1個にこだわる。
(4) 「少人化」で生産性を上げる
   見せかけの「効率的」にごまかされるな
   効率化とはできるだけ少ない人員で対応すること
(5) 大切なのはタクトタイムを守ること
   個々の効率・全体の効率
   「タクトタイムを守る」とは
   企業全体の同期を図る

(6) もう一つの「5S」でスモールメリットに対応する
   スケールメリットからスモールメリットヘ← 今回の記事

(7) 7つの経営課題をゼロベースで考える
   「ゼロベース発想法」で課題を根本から解決する

 

第2章 基本的な考え方を押さえておく

 ジャスト・イン・タイム(JIT)生産を実現するためには、JITの考え方を理解しておく必要があります。JIT改革で重要なキーワードを取り上げて説明します。

(6) もう一つの「5S」でスモールメリットに対応する

 シンプル・スモール・スリム・ショート・スムーズ、これは、フレキシブル生産を可能にする5つのキーワードです。この「もう一つの5S」を実現するキーワードで整理すると、次のようになります。

 

◆ スケールメリットからスモールメリットへ

 この半世紀、企業はひたすら規模の拡大による利益追求を図ってきました。10個より100個、100個より1000個というように、量の拡大による「スケールメリット」を享受して成長を果たした時代でした。しかし現在のように、変化の激しい世の中では、これまでと同じやり方では対応していけません。かつては、少々在庫がたまっても、すぐに消費されてしまいましたが、今では必要以上に作れば売れ残り、在庫が企業の足かせになってしまいます。

 そこで、注目されているのが「スモールメリット」です。顧客が求める量だけをつくり、顧客ニーズに細かく対応することで利益に結び付けようとする考え方で、小さいことや、小回りがきくことをメリットにしようというものです。

 しかしこの方法では、1回に得られる利益は小さく、スケールメリット時代のような、ある種の効率のよさは期待できません。これからは「数量」より「回数」が勝負です。回数をこなすためには、企業のすべてのムダを取り、組織をシンプルかつスリムにして、小回りのきく、柔軟な体質にしていくことです。

 スモールメリット時代には「もうひとつの5S」が重要な鍵になるといわれています。「5S」といえば「整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)」を指しますが、それに加えてスモールメリット時代には「シンプル・スモール・スリム・ショート・スムーズ」からなる5Sが必要だというのです。以下に解説致します。

① シンプル・イズ・ベスト

 最初のSは「シンプル」です。経済の発展とともに、企業も大きく成長してきましたが、その一方で、組織や仕組みは肥大化し、複雑になってしまいました。その反省から、いちど原点に立ち返り、シンプルな状態に戻すべきだという声が高まっています。シンプルな組織、シンプルなシステムに戻して、フットワークを軽くすること。そのために必要なのは、単純化、簡素化、専門化の推進です。

② スモール・イズ・ビューティフル

 「大量生産・大量輸送・大量販売・大量消費」と戦後、日本のキーワードは、一貫して「大」でした。これからの時代のキーワードは、それとは正反対の「スモール」。「小さくつくり、小さく運んで、小さく売り、そして顧客や社会のニーズにこまめに対応して、利益に結び付ける」。まさに「スモールメリット」です。これに対応するポイントは、小受注化、小ロット化、小型化、小組織化となります。

③ スリム・イズ・エレガント

 3つめのSは「スリム」。企業もスリム化の時代です。工場を建設する、新しい設備を導入するなどというと人は、先々のことまで考えるあまり、フルスペックの装備にしたがります。その結果、不似合いなくらい、大掛かりなものになってしまうのです。これは、明らかにその企業の気質によるものでしょう。

 このような企業こそ、スリム化が必要です。企業経営の本質を見直して、スリムな体質に脱皮することで、変動する市場ニーズに柔軟に対応できる力を手に入れることができるのです。企業のスリム化のキーワードには、ムダゼロ化、少人化、フラット組織化、流れ化、自働化、多能工化などが挙げられます。

④ ショート・イズ・フレキシブル

 近年、多品種化対応とともに、企業に求...

められているのが「短納期化対応」。つまり、リードタイムの短縮化です。フレキシブル生産を追求していくと、すべてが「リードタイムの短縮」という課題にぶつかります。納期をショート化することで、様々な変化にフレキシブルに対応できるからです。そのためには、開発・販売・生産・物流・財務における全てのリードタイムをいかに短縮するかが、今後のテーマとなるでしょう。

⑤ スムーズ・イズ・エクセレント

 忙しい時と暇な時の差が大きいと、仕事はしにくいものです。また、ある時はX製品だけ、またある時はY製品だけというように、生産する品目にバラツキがあるのも問題です。そのような仕事の進め方を行っていると、仕組みは肥大化し、リードタイムは長くなり、そして複雑なシステムになるのは、目にみえています。仕事はできるだけ波をなくし、スムーズにしたいものです。そのためには、すべての仕事を徹底して流れ化し、平準化していくことです。スムーズな仕事はエクセレントです。

 次回は、(7) 7つの経営課題をゼロベースで考えるから解説を続けます。

 

 【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

 

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