~第2ステージ:要因水準決定 実験計画法実施マニュアル(その3)

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 今回は右図「実験計画法フローチャート第2ステージ要因水準の決定工程」のうち、第2ステップの「因子の分類」について解説します。

1.因子の分類:性能改善に有効な因子のみ取り上げる

 皆さんは「因子を分類する」意義はどこにあると考えますか?例えば、表1-1のようなケースでは「A君、B君どちらが優れているか」という水準で決めることはできても、それが技術者にとって有効な情報かという点では無意味な要因となります。

 要因DではA君、B君に差があってもどちらか一人を専従者として採用しなければ意味がなく、要因Cの実験時間の違いも性能には全く寄与しません。つまり、性能改善に有効な因子のみを取り上げるべきで、実験効率を上げるために因子を分類し、適切な割り付け(整理)を行うことは重要なことなのです。

 現在では下記のように因子を5分類しています。

  1. 制御因子…技術者自身が何ら制限を受けることなく自由に選択できる因子(機械図面の部品、電子回路の素子、化学反応のプロセスフローに相当する)
  2. 標示因子…水準が存在するが、一番良い水準自体を選択することが無意味な因子を指す(製品の使用条件・強制、劣化などの試験条件・品種・人・設備差)
  3. ブロック因子…水準が存在するが、その水準に技術的意味がない因子(位置差、試験機差、日間差、ロット差などで要因効果を調節に用いることができないが、その効果が制御要因に紛れることを防止するために取り上げる)
  4. 補助因子…実験の条件と環境の記録
  5. 誤差因子…その状態を記録せず実験値に影響を与える全ての上記以外の因子

   これ以外にもパラメータデザインでは、ノイズ成分(バラツキ)に影響がなく、出力を目標値に一致させる調整用の信号(調整)因子があります。

2.因子の分類と割り付け

 それでは次に因子の分類と割り付けについて解説します。

 因子と対応直交表との関係を下の表1-2に挙げます。

表.1-2 直交表と因子の割り付け

 内側直交表には制御因子とブロック因子を、また外側直交表には標示因子誤差因子をわりつけます。外側直交表はノイズを与えるための因子と水準が対応します。調合された誤差因子、強制条件などが対応する時は直交表ではなく、一元配置となります。内側直交表の全列に制御因子を割り付けることがポイントです。

 ブロック因子の使い方ですが、ブロック因子も内側直交表に割り付ける際、以下のように行います。

  1. タ...


 今回は右図「実験計画法フローチャート第2ステージ要因水準の決定工程」のうち、第2ステップの「因子の分類」について解説します。

1.因子の分類:性能改善に有効な因子のみ取り上げる

 皆さんは「因子を分類する」意義はどこにあると考えますか?例えば、表1-1のようなケースでは「A君、B君どちらが優れているか」という水準で決めることはできても、それが技術者にとって有効な情報かという点では無意味な要因となります。

 要因DではA君、B君に差があってもどちらか一人を専従者として採用しなければ意味がなく、要因Cの実験時間の違いも性能には全く寄与しません。つまり、性能改善に有効な因子のみを取り上げるべきで、実験効率を上げるために因子を分類し、適切な割り付け(整理)を行うことは重要なことなのです。

 現在では下記のように因子を5分類しています。

  1. 制御因子…技術者自身が何ら制限を受けることなく自由に選択できる因子(機械図面の部品、電子回路の素子、化学反応のプロセスフローに相当する)
  2. 標示因子…水準が存在するが、一番良い水準自体を選択することが無意味な因子を指す(製品の使用条件・強制、劣化などの試験条件・品種・人・設備差)
  3. ブロック因子…水準が存在するが、その水準に技術的意味がない因子(位置差、試験機差、日間差、ロット差などで要因効果を調節に用いることができないが、その効果が制御要因に紛れることを防止するために取り上げる)
  4. 補助因子…実験の条件と環境の記録
  5. 誤差因子…その状態を記録せず実験値に影響を与える全ての上記以外の因子

   これ以外にもパラメータデザインでは、ノイズ成分(バラツキ)に影響がなく、出力を目標値に一致させる調整用の信号(調整)因子があります。

2.因子の分類と割り付け

 それでは次に因子の分類と割り付けについて解説します。

 因子と対応直交表との関係を下の表1-2に挙げます。

表.1-2 直交表と因子の割り付け

 内側直交表には制御因子とブロック因子を、また外側直交表には標示因子誤差因子をわりつけます。外側直交表はノイズを与えるための因子と水準が対応します。調合された誤差因子、強制条件などが対応する時は直交表ではなく、一元配置となります。内側直交表の全列に制御因子を割り付けることがポイントです。

 ブロック因子の使い方ですが、ブロック因子も内側直交表に割り付ける際、以下のように行います。

  1. タイヤの例:タイヤ開発において四輪をそれぞれ要因R1R2R3R4(ブロック因子)として内側直交表に割り付け、タイヤ位置による摩耗差が制御要因に紛れ込むのを防止する。
  2. 測定器の例:実験サンプルが多い時、二つの試験機C1C2を使いたい。この時、要因Cを内側にわりつけ、試験機差異が制御要因に紛れ込むのを防止します。

 

 次回は「第2ステージ:要因水準決定『因子ランクの設定』」について解説します。

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この記事の著者

森 輝雄

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