ワークデザイン法の概要や特徴、実施手順

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1. ワークデザイン(Work Design)法 とは

 ワークデザイン法とは、システムと目的展開(機能展開)を追究し、問題解決や発想につなげる手法です。アメリカのジェラルド・ナドラー博士によって1959年に発表されたシステム思考法の一つとされています。システム思考は、部分や要素に着目するのではなく、そのつながりを把握し、全体を俯瞰(ふかん)することで真の目的(課題・問題点)を見出すものです。この時点ではまだ発想ツールは含まれていませんでしたが後に、中京大学の日比野省三教授と共に発想法を加味したブレイクスルー思考に発展させました。日本では、早稲田大学の黒須誠治教授らが改良して普及させています。

 また、QCやIEによる問題解決技法は、分析的アプローチによる問題解決技法とされています。これに対してワークデザイン法は、本来果たしたかった目的は何だったのかという目的を再定義するところから始め、再定義した目的を果たす新たな仕組み(システム)を考案することで、問題の解決を図っていく演繹(えんえき)的アプローチとされています。

 ワークデザイン法実施手順の概要は次のようになっています。

(1)テーマの決定

  • 課題がシステムとして扱えるかどうかを確認する。

  その選択基準は、①機能、②インプット(材料、情報)、③アウトプット(具体的な結果)、④手順、⑤環境、⑥設備、⑦方法(人間の行う作業)の7特性です。

(2)システムの目的(機能)を明確にする

  • 「何のために」(目的)「何をする」(機能)のかを押さえる。

(3)目的(機能)をレベルアップしていく

  • 目的展開で目的と手段を明確化する。  

(4)テーマの目的(機能)を決定する

  • システムを新たに開発するのか、改善したいのか目標を決める。

(5)ゴールを設定する

  • (3)のどの目的(機能)レベルをゴールとして取り上げるかを決定する。

(6)理想システムの設計をする

  • コストの制約さえなければ実現可能なシステムを提案する。

(7)情報収集で選択したシステムを評価する

  • 選択したシステムの構成要素、テーマの機能となっているか等をチェックする。

(8)運用するシステムを選択する

  • 選択したシステムの構成要素をどう組み合わせれば実現可能となるかを決定する。

2.ワークデザイン法の特徴となる考え方

 2.1システムの定義

 一般的に「システム」とは、制度、体系、機構、ソフトウェアなどどこにも使える万能な用語となっています。ワークデザイン法では、引き金(トリガー)を引くと、目的のものが得られる仕組みのことをシステムと呼びます。例えば、自動販売機の「引き金(トリガー)」は「お金」となります。

 ワークデザイン法でシステム(システム設計)を定義すると次のようになります。   

  1. システムとは、一言でいえば、INPUTをOUTPUTに換える仕組み、制度、体系のこと
  2. 仕掛けと言ってもよい

 例えば、学生に勉強させるシステムを考えると、図1のように、INPUTが学生でOUTPUTが勉強した学生になります。そのシステムが「学校」「塾」「オンライン」となります。

図1.システムの定義

 2.2目的展開(機能展開)

 ワークデザイン法の代名詞ともなっているのが目的展開(機能展開)です。発想法の「一般化または抽象化」とほぼ同じ意味で使われています。ナドラー博士が発表した段階の活用法は分りにくいため、ここではナドラー博士と共同開発してきた日比野省三氏が改良した活用法を紹介します。

 活用ルールを強いてあげれば、次の2つになります。

  1. 「・・を~する」(名詞+動詞)と表現する
  2. 否定語「~をなくす」はできるだけ使わない

 例えば、図2で「ボールペン」を目的展開してみ...

1. ワークデザイン(Work Design)法 とは

 ワークデザイン法とは、システムと目的展開(機能展開)を追究し、問題解決や発想につなげる手法です。アメリカのジェラルド・ナドラー博士によって1959年に発表されたシステム思考法の一つとされています。システム思考は、部分や要素に着目するのではなく、そのつながりを把握し、全体を俯瞰(ふかん)することで真の目的(課題・問題点)を見出すものです。この時点ではまだ発想ツールは含まれていませんでしたが後に、中京大学の日比野省三教授と共に発想法を加味したブレイクスルー思考に発展させました。日本では、早稲田大学の黒須誠治教授らが改良して普及させています。

 また、QCやIEによる問題解決技法は、分析的アプローチによる問題解決技法とされています。これに対してワークデザイン法は、本来果たしたかった目的は何だったのかという目的を再定義するところから始め、再定義した目的を果たす新たな仕組み(システム)を考案することで、問題の解決を図っていく演繹(えんえき)的アプローチとされています。

 ワークデザイン法実施手順の概要は次のようになっています。

(1)テーマの決定

  • 課題がシステムとして扱えるかどうかを確認する。

  その選択基準は、①機能、②インプット(材料、情報)、③アウトプット(具体的な結果)、④手順、⑤環境、⑥設備、⑦方法(人間の行う作業)の7特性です。

(2)システムの目的(機能)を明確にする

  • 「何のために」(目的)「何をする」(機能)のかを押さえる。

(3)目的(機能)をレベルアップしていく

  • 目的展開で目的と手段を明確化する。  

(4)テーマの目的(機能)を決定する

  • システムを新たに開発するのか、改善したいのか目標を決める。

(5)ゴールを設定する

  • (3)のどの目的(機能)レベルをゴールとして取り上げるかを決定する。

(6)理想システムの設計をする

  • コストの制約さえなければ実現可能なシステムを提案する。

(7)情報収集で選択したシステムを評価する

  • 選択したシステムの構成要素、テーマの機能となっているか等をチェックする。

(8)運用するシステムを選択する

  • 選択したシステムの構成要素をどう組み合わせれば実現可能となるかを決定する。

2.ワークデザイン法の特徴となる考え方

 2.1システムの定義

 一般的に「システム」とは、制度、体系、機構、ソフトウェアなどどこにも使える万能な用語となっています。ワークデザイン法では、引き金(トリガー)を引くと、目的のものが得られる仕組みのことをシステムと呼びます。例えば、自動販売機の「引き金(トリガー)」は「お金」となります。

 ワークデザイン法でシステム(システム設計)を定義すると次のようになります。   

  1. システムとは、一言でいえば、INPUTをOUTPUTに換える仕組み、制度、体系のこと
  2. 仕掛けと言ってもよい

 例えば、学生に勉強させるシステムを考えると、図1のように、INPUTが学生でOUTPUTが勉強した学生になります。そのシステムが「学校」「塾」「オンライン」となります。

図1.システムの定義

 2.2目的展開(機能展開)

 ワークデザイン法の代名詞ともなっているのが目的展開(機能展開)です。発想法の「一般化または抽象化」とほぼ同じ意味で使われています。ナドラー博士が発表した段階の活用法は分りにくいため、ここではナドラー博士と共同開発してきた日比野省三氏が改良した活用法を紹介します。

 活用ルールを強いてあげれば、次の2つになります。

  1. 「・・を~する」(名詞+動詞)と表現する
  2. 否定語「~をなくす」はできるだけ使わない

 例えば、図2で「ボールペン」を目的展開してみます。目的(機能)定義から始め、順に一般化または抽象化します。その時、意識的に抽象化して上位概念の目的となるように記述します。また、各々の目的(機能)に対して「手段は?」のように発想すると、その目的を達成させるための課題解決策となります。上位概念の中から真の目的が見つかります。つまり、ここでは「文字を書く」真の目的は、「情報を伝える」となります。

図2. 目的展開の例

【参考文献】

1. G.Nadler, S.Hibino, Breakthrough Thinking, 2nd Edition, Prima Publishing & Communications, 1994
2.五百井・黒須・平野、「システム思考とシステム技術」、白桃書房、1997
3.吉谷龍一、「ワークデザイン技法」、日刊工業新聞社、1981

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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この記事の著者

粕谷 茂

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを実施中。

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