情報発信による情報収集とは

1.情報収集のための情報発信とは?

 今回のタイトルについては、皆さん疑問に思われるかもしれません。皆さんの活動のことを聞いて、企業に問い合わせをしてくる顧客があるのではないでしょうか。メディアでの発表や口コミでの情報などに基づいて、問い合わせしてくるわけです。逆に、自社のことを全く知らない顧客からは、問い合わせが来ることがないでしょう。

 したがって、もし顧客についての情報収集をしたければ、積極的に情報発信を行うことで、顧客自ら問い合わせをしてくる可能性が大きくなります。また、この方法では基本的にはこちらから時間とコストを掛けて、一つ一つの情報源から情報収集をする必要はありません。継続的な情報の発信活動はそれなりの工数が必要なものの、うまくこの情報発信と情報収集の仕組みを設計し、関心がもたれるコンテンツを提供していけば、世界中から電子メールなどで問合わせが持ち込まれるようにすることが可能であり、大変効率的です。

 つまり、りんごを収穫するのに、一つ一つりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の幹を揺らしてりんごを木から落とし、地面に落ちたりんごを集めるのに似ています。

 

2.期待される情報の種類

 顧客からの問い合わせ内容は様々でしょう。技術について言えば、単なる自社の研究開発活動や技術の内容についての質問から、こんな問題の解決に貴社の技術は使えないか、さらに踏み込んで共同研究の打診まで多様な問い合わせが期待できます。

 ここで注意が必要なのは、単に先方の質問や依頼に応えるだけでなく、どのような理由でそのような質問や依頼をしているのか、を訊ねることです。基本的に顧客の質問に応えるという活動だけを取り上げれば、自社には情報面でのメリットはありません。むしろその質問や依頼の背景を知ることに大きな価値があります。この点は大変重要です。

 情報発信による情報収集が良いのは、基本的に「先方の都合で」問い合わせや依頼が来る形をとり、こちらからのお願いではないので、こちらからいろいろと質問してもあまり問題にはなりません。また先方も差し支えの無い範囲では教えてくれるものです。通常の情報収集では、「こちらの都合で」先方から情報を収集するわけで、なかなか突っ込んだ質問が難しい場面が多いものです。その点、先方からの問い合わせは、先方の状況を細かく聞くことができる絶好のチャンスとなります。

 

3.情報数の重要性

 もちろん個々の情報の内容は重要ですが、問い合わせが多ければ、個別の顧客だけではなく市場全体がどのようなニーズを持っているのか、その背景にどのような大きな動きがあるのか等、俯瞰的な視点から市場を捉えられる情報を得ることができます。

 従って、問い合わせを促進する視点から、コンテンツを作る必要があります。問い合わせ窓口をPRする等も有効でしょう。また、情報発信の対象地域は出来るだけ広いほうが良いので、外国語での情報の発信も積極的に進めるべきです。またリバースイノベーションの可能性もあるため、対象地域は先進国に限らず、途上国も念頭において進める必要があります。

 

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4.情報発信の内容

 市場情報を収集するという観点で、発信する情報は大きくは次の2つです。

(1)自社の事業戦略

 顧客にとっては、自社の事業戦略、特に狙いとする領域や展開する製品が重要です。もし、自社が考えている分野が顧客が求めている製品や技術分野と合致していれば、顧客が関心を持つ可能性は高くなります。またサプライヤーが様々な提案をしてくる可能性があります。そのようなサプライヤーからも自社の市場に関する情報や、サプライヤーの長期的に計画している製品や技術に関わる情報を得ることができるかもしれません。

 一方事業戦略を開示したら、競合企業の知るところとなり、競合企業の反応を引き起こしてしまうという懸念はもっともです。しかし、上場している企業はアニュアルレポートやアナリスト説明会の資料で、このようなことは企業により程度の差はあれ既に公開しています。

 必要に応じて具体的な部分を補うという形で、また当然公開してはならない情報もありますから、その点は適宜取捨選択し、明確に情報開示の目的、対象分野を決定していれば、事業戦略や技術戦略を開示することはさほど大きな問題にはなりません。

(2)自社のコア技術や活動対象技術領域

 自社が拠り所とし、自社の強みといえるコア技術や現状の技術戦略の対象分野はおおいに紹介する価値があります。東レなど概略ですが、長期にわたる自社の技術のロードマップを開示している企業もあります。これらの情報から、その技術はこんな用途に使えないかといった問い合わせや、さらには共同研究や開発の依頼も来る可能性があります。また仮に共同研究や共同開発に至らなくても、これらの情報は今後のテーマを考える上で貴重なインプットになります。


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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