原因から結果 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その72)

 前回から時系列や物理量で整理した知識を、それらの関係性で考えることについて解説しています。今回もその解説を続けます。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

 前回は関係性をいくつかの種類に分け、その最初の項目の「原因と結果」を更に4つの類型に分けました。今回は「原因と結果」の最初の類型の「リニア(1つの原因→1つの結果)」についてです。

1. リニアの連鎖の例:「風が吹けば桶屋がもうかる」

 「風が吹けば桶屋がもうかる」の構造ですが、この話は皆さんもご存じの通り、風が吹くと土埃が舞い、盲人が増え、盲人はその昔三味線で生計をたてていたので、三味線が売れるようになる。そうすると三味線に使われる猫の皮の需要が増え…と一つの原因が一つの結果を生み、その結果がまた原因となり、別の結果を生む、といったような連鎖を示しています。

2. リニアを考える場合の重要な視点

 革新的なアイデアを創出するための前提を作る場合に、上記の例えのようにリニアの思考の連鎖で重視しなければならない点が、丁寧に原因と結果の関係をより完全な形で表現することです。それは何のためかというと、既に認識されている連鎖の関係性の不完全性を補い、その連鎖をより完全な形で表現することで、補強された部分も含めて詳細に表されているリニアの原因と結果の関係性の連鎖が、より多くの革新的なアイデアの源になるということです。

 これを別の視点からいうと、不完全な形ではあるけれども、既に一つの原因と結果もしくはその内の一つが認識されているので、そこを出発点に未認識の「結果」(そしてそれがまた原因となる)を発想することは容易なことであるということもいえます。このようなリニア思考の連鎖発想を行っていく際に重要な点を2つ挙げます。

(1) 重要点1:「原因」の「本質」を考え言語化する

 上の例では「風が吹くと土埃が舞う」という説明となっていますが「風が吹く」と「土埃が舞う」との間には、現実にはまだその原因がもたらす未認識の結果(またそれが原因となるのですが)があります。

その未認識の結果を見つけるために、まずは「風が吹く」とは本質的にどういうことかを考えます。「風が吹く」とは、そもそも「空気という質量を持ったものが移動する」ということです。したがって「風が吹く」の「本質」を言語化します。

(2) 重要点2:既に認識済の原因と結果の間の欠けている結果と原因(またその結果が原因となる)の連鎖を記述する

 次に「空気という質量を持ったものが移動する」という原因により、どのような結果が出るのかを考えます。結果として他のもの(気...

体、液体、固体)に作用し、それらを動かすという結果をもたらします(実は他に、変形させたり、摩擦熱を生み出すなどの結果を生み出すのですが、それはまた後に議論する「ピラミッド(1つの原因→複数の結果)」で議論します)。

 実は、土埃は作用する固体の一部に過ぎません。風は土埃だけでなく、様々なもの(固体、液体、気体)を動かすという効果があることが、ここから知ることができます。

 この重要点2は、上記の重要点1で「原因」の「本質」を考え言語化することができているため、比較的容易に作業を進めることができます。

 次回に続きます。

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