成功の確率を向上させるプロジェクト計画の進め方

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1 プロジェクトの課題

 プロジェクトの課題として、成果物が不明確、コスト・期間・資源の見積が不十分、品質管理不足、リスク対応が不十分、調達方法が不適切、要員計画・人材の不備、コミュニケーション不足などが挙げられます。いずれも不十分なマネジメント・プランに起因していることが大部分です。

 プロジェクトマネジメントで広く使われるPMBOKでは、管理すべき項目として①統合②スコープ③コスト④タイム⑤品質⑥ヒューマンリソース⑦コミュニケーション⑧調達⑨リスクの九つに分類していますが、ここでは課題解決のために、各マネジメントの目的、プランニングについて述べてみます。

2 各マネジメントの目的と対応策

2.1 スコープ・マネジメント

 スコープ・マネジメントの目的は、どのような成果物を、どのような条件のもとで作成するかといったことを明確にすることです。そのためには、プロジェクトの成果物・作業範囲の確定、実施フェーズでの変更管理、最終的な成果物の検証・受入れなどを文書化し、必要に応じて更新していくことが必須です。

2.2 タイム・マネジメントとコスト・マネジメント

 タイム・マネジメントとコスト・マネジメントの目的は、開発計画のコスト・期間・資源の見積り、プロジェクトのベースラインの設定、実施フェーズのマネジメント・プランの作成です。タイム・マネジメントではPDM、PERT、CPM、ガントチャート、マイルストーンチャート、期間短縮法などの手法を活用し作成します。

 コスト・マネジメントでは、各種見積り法によるコスト見積り、アーンドバリュー分析(EVMS)、経費の分類などが必要となります。

2.3 クオリティ・マネジメント

 このプロセスは、いかにプロジェクトマネジメント・チームが組織のクォリティ・ポリシー(品質方針)を実現するかを計画し、クオリティ・マネジメント・プランを作成します。組織の構造、品質責任の所在、開発手続き、各種処理手続き、品質要員などの記述を行い、品質方針に沿ったプロジェクトの品質目標が実現されるプロジェクトのしくみを計画します。クォリティ・コントロールのツールとしてQC七つ道具などの活用、QC運動でのPDCAが重要です。

2.4 ヒューマン・リソース・マネジメント

 ヒューマン・リソース・マネジメントの目的は、プロジェクト組織の維持・運営、要員要求に基づく要員確保の計画、プロジェクトチームのパフォーマンス向上にあります。このため、組織プランニング、要員確保、チーム構築のプランニングが必要です。また、人間関係、要員のモチベーション、リーダーシップなどが重要で、特にプロジェクトマネージャーの資質が要員に大きく影響を与えます。

2.5 コミュニケーション・マネジメント

 コミュニケーション・マネジメントの目的は、各種マネジメントプラン、進捗データ収集、報告書などが必要とされる人々にタイムリーに伝達されることです。このためにコミュニケーション・プランニング、情報配布と進捗報告、パフォーマンスレポートが必要です。さらに、プロジェクトマネージャーは、内部インターフェースとステークホルダー(外部)へのインターフェースとしての役割も重要であり、プロジェクトマネージャーにはアカウンタビリティ能力の強化が求めらます。

2.6 調達マネジメント

 調達マネジメントの目的は、プロジェクトで必要と判断される対象物をコスト、期...

1 プロジェクトの課題

 プロジェクトの課題として、成果物が不明確、コスト・期間・資源の見積が不十分、品質管理不足、リスク対応が不十分、調達方法が不適切、要員計画・人材の不備、コミュニケーション不足などが挙げられます。いずれも不十分なマネジメント・プランに起因していることが大部分です。

 プロジェクトマネジメントで広く使われるPMBOKでは、管理すべき項目として①統合②スコープ③コスト④タイム⑤品質⑥ヒューマンリソース⑦コミュニケーション⑧調達⑨リスクの九つに分類していますが、ここでは課題解決のために、各マネジメントの目的、プランニングについて述べてみます。

2 各マネジメントの目的と対応策

2.1 スコープ・マネジメント

 スコープ・マネジメントの目的は、どのような成果物を、どのような条件のもとで作成するかといったことを明確にすることです。そのためには、プロジェクトの成果物・作業範囲の確定、実施フェーズでの変更管理、最終的な成果物の検証・受入れなどを文書化し、必要に応じて更新していくことが必須です。

2.2 タイム・マネジメントとコスト・マネジメント

 タイム・マネジメントとコスト・マネジメントの目的は、開発計画のコスト・期間・資源の見積り、プロジェクトのベースラインの設定、実施フェーズのマネジメント・プランの作成です。タイム・マネジメントではPDM、PERT、CPM、ガントチャート、マイルストーンチャート、期間短縮法などの手法を活用し作成します。

 コスト・マネジメントでは、各種見積り法によるコスト見積り、アーンドバリュー分析(EVMS)、経費の分類などが必要となります。

2.3 クオリティ・マネジメント

 このプロセスは、いかにプロジェクトマネジメント・チームが組織のクォリティ・ポリシー(品質方針)を実現するかを計画し、クオリティ・マネジメント・プランを作成します。組織の構造、品質責任の所在、開発手続き、各種処理手続き、品質要員などの記述を行い、品質方針に沿ったプロジェクトの品質目標が実現されるプロジェクトのしくみを計画します。クォリティ・コントロールのツールとしてQC七つ道具などの活用、QC運動でのPDCAが重要です。

2.4 ヒューマン・リソース・マネジメント

 ヒューマン・リソース・マネジメントの目的は、プロジェクト組織の維持・運営、要員要求に基づく要員確保の計画、プロジェクトチームのパフォーマンス向上にあります。このため、組織プランニング、要員確保、チーム構築のプランニングが必要です。また、人間関係、要員のモチベーション、リーダーシップなどが重要で、特にプロジェクトマネージャーの資質が要員に大きく影響を与えます。

2.5 コミュニケーション・マネジメント

 コミュニケーション・マネジメントの目的は、各種マネジメントプラン、進捗データ収集、報告書などが必要とされる人々にタイムリーに伝達されることです。このためにコミュニケーション・プランニング、情報配布と進捗報告、パフォーマンスレポートが必要です。さらに、プロジェクトマネージャーは、内部インターフェースとステークホルダー(外部)へのインターフェースとしての役割も重要であり、プロジェクトマネージャーにはアカウンタビリティ能力の強化が求めらます。

2.6 調達マネジメント

 調達マネジメントの目的は、プロジェクトで必要と判断される対象物をコスト、期間、品質などでプロジェクトの目標に合致する方法で調達することです。方法として、入札の方法、リスク、モチベーションを考慮した最適の契約方式を適用します。このため、調達プランニング、入札プランニング、入札と業者選定、契約と契約管理及び契約終結の作成が重要となります。

2.7 リスクマネジメント

 リスクマネジメントの目的は、プロジェクトの様々なリスク事象にともなう不必要でかつ重大な損失や完了にいたれないことなどを未然に防ぐことです。このため、事前にリスクを特定、分析し、損失を最小に機会を最大にするような対応策の策定を、継続的に行わなければなりません。リスクアセスメントとしてリスクの特定・定量化・対応策とリスクコントロールが重要です。

以上の点に留意して、プロジェクトの計画を進めれば、成功の確率向上が大いに期待できます。

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この記事の著者

パネライのシン  

サービスマネジメントによるプロジェクトマネジメントを得意としています。

サービスマネジメントによるプロジェクトマネジメントを得意としています。


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