4つの印刷条件 スクリーン印刷とは(その6)

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【関連解説:印刷技術】

 前回のその5に続いて解説します。
 

1. 4つの印刷条件

 
 スクリーン印刷には、多くの印刷条件があると思われていますが、ほとんどが適正化すべき「前提条件」であり、本当の意味での印刷条件は、クリアランス及びスキージ印圧、角度、速度の四つだけです。
 
 それぞれの印刷条件が印刷品質の何に影響を及ぼすかを考えることで、適正化が容易になります。
 
  A クリアランス   版離れや寸法精度に影響を与えます
  B スキージ印圧     版上のインキ・ペーストの掻き取りに影響します
  C スキージ角度    インキ・ペーストに対する下向きに吐出の方向を決めます(充てん力)
  D スキージ速度    充てん力の微調整と版離れに影響します
 
 
 スキージ角度と速度は、インク・ペーストに対する「充てん力」を増減し、にじみ、カスレなどの印刷解像性に影響を与えます。また、穴埋め印刷時の充てん性に影響与えます。
 
 高品質スクリーン印刷のための四つの印刷条件設定の順序は次のとおりです。
 
  ① 印刷均一性、安定性の確保  
  ② 印刷寸法精度の維持
  ③ 印刷解像性向上又は、印刷膜厚の微調整
 
 従来の手法では、③の印刷解像性向上や印刷膜厚の整合に重きを置き、印刷条件を変更していたために、量産印刷で最も重要な印刷均一性を損なっていたと思われます。
 
 

2. 粘度の測定

 
 これまで、スクリーン印刷でのインキ・ペースト粘度の測定には、標準がなく、数字だけを聞いてもイメージがわかないことがあります。そもそも粘度とはどのように計るのでしょうか。
 
 正しい粘度は、せん断速度とせん断応力を測定することで算出できます。せん断速度は、液体を挟んだ二枚の平行版の片方を固定し、もう一方を1000μm/secで移動させたときに、二枚の板の距離が100μmであった場合、1000μm/sec÷100μmでせん断速度は10μm/sec となります。二枚の板の距離が10μmの時は、100μm/secとなります。つまり、せん断速度とは、測定すべき液体を対抗する板で挟み、その速度と距離を精密に制御して設定するものです。せん断応力も同様の条件での回転センサーを止めようとする力となります。
 
 粘度計には、図の左側のようなセンサーが液体中で回転するB型粘度計と右側のような円錐状のセンサーで液体を挟むE型粘度計があります。
 
 
 通常、よく使用されている回転粘度計は、B型粘度計のような構造であり、この構造では、せん断速度やせん断応力は測定できません。つまり、正確な意味での粘度が測れないものです。表示される粘度の値は、何らかの換算した値だと思いますが、すべてのインキ、ペーストで正しい粘度値を示しているとは限りません。一方、E型粘度計は、円錐状のセンサーを使用...

 

【関連解説:印刷技術】

 前回のその5に続いて解説します。
 

1. 4つの印刷条件

 
 スクリーン印刷には、多くの印刷条件があると思われていますが、ほとんどが適正化すべき「前提条件」であり、本当の意味での印刷条件は、クリアランス及びスキージ印圧、角度、速度の四つだけです。
 
 それぞれの印刷条件が印刷品質の何に影響を及ぼすかを考えることで、適正化が容易になります。
 
  A クリアランス   版離れや寸法精度に影響を与えます
  B スキージ印圧     版上のインキ・ペーストの掻き取りに影響します
  C スキージ角度    インキ・ペーストに対する下向きに吐出の方向を決めます(充てん力)
  D スキージ速度    充てん力の微調整と版離れに影響します
 
 
 スキージ角度と速度は、インク・ペーストに対する「充てん力」を増減し、にじみ、カスレなどの印刷解像性に影響を与えます。また、穴埋め印刷時の充てん性に影響与えます。
 
 高品質スクリーン印刷のための四つの印刷条件設定の順序は次のとおりです。
 
  ① 印刷均一性、安定性の確保  
  ② 印刷寸法精度の維持
  ③ 印刷解像性向上又は、印刷膜厚の微調整
 
 従来の手法では、③の印刷解像性向上や印刷膜厚の整合に重きを置き、印刷条件を変更していたために、量産印刷で最も重要な印刷均一性を損なっていたと思われます。
 
 

2. 粘度の測定

 
 これまで、スクリーン印刷でのインキ・ペースト粘度の測定には、標準がなく、数字だけを聞いてもイメージがわかないことがあります。そもそも粘度とはどのように計るのでしょうか。
 
 正しい粘度は、せん断速度とせん断応力を測定することで算出できます。せん断速度は、液体を挟んだ二枚の平行版の片方を固定し、もう一方を1000μm/secで移動させたときに、二枚の板の距離が100μmであった場合、1000μm/sec÷100μmでせん断速度は10μm/sec となります。二枚の板の距離が10μmの時は、100μm/secとなります。つまり、せん断速度とは、測定すべき液体を対抗する板で挟み、その速度と距離を精密に制御して設定するものです。せん断応力も同様の条件での回転センサーを止めようとする力となります。
 
 粘度計には、図の左側のようなセンサーが液体中で回転するB型粘度計と右側のような円錐状のセンサーで液体を挟むE型粘度計があります。
 
 
 通常、よく使用されている回転粘度計は、B型粘度計のような構造であり、この構造では、せん断速度やせん断応力は測定できません。つまり、正確な意味での粘度が測れないものです。表示される粘度の値は、何らかの換算した値だと思いますが、すべてのインキ、ペーストで正しい粘度値を示しているとは限りません。一方、E型粘度計は、円錐状のセンサーを使用し、先端のギャップを精密に制御する事で、正確な粘度が測定できます。
 
 スクリーン印刷用のインキ、ペーストは、せん断速度が大きくなると粘度が低下する特性を有していますので、回転粘度計の回転数で粘度の値が異なります。大手インキメーカーでは、E型粘度計での5rpmでの2分後の粘度値を使用していますので、私もこれを標準にしています。
  

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この記事の著者

佐野 康

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。


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