会社の基礎体力とは

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 ものづくり中小企業、特に社員数十人規模の小規模企業の経営者は、日々の実務をこなす中で、小規模ゆえに様々な問題に直面しています。また戦後の経済成長時代に業績を伸ばし業界での地位を築いてきた企業も時代の変化の中で、先代経営者から二代目、三代目と、若い経営者に経営を引き継ぎ、新しい感覚のビジネスを模索している企業も多く見受けます。ただ、そこには共通課題も見えてきます。特に、規模の小さい企業に見られる特徴として次の5点があげられます。
  
・多品種少量生産への対応遅れ、生産性の低下、納期・品質トラブル発生
・高度な業務に対応できる人材の不足
・と言いつつ社員の教育もままならず、社員の能力発揮が不十分
・組織の役割が曖昧、仕組み化が遅れ、個人商店的な経営から脱皮できず
・企業の成長を支えるPDCAの改善活動が停滞、又は全く実施されていない
 
 つまり、企業組織としての力が発揮されておらず、潜在能力を充分に引き出せていないのです。企業にも、幼年期、青年期、壮年期と呼ばれる成長過程があります。厳しい競争環境下で、売り上げが低迷している企業は、幼年期からなかなか青年期を迎えられない企業も多いと考えられます。また、売り上げを伸ばしている企業でも、体力が十分備わらない幼年期のまま、規模のみが拡大し様々なひずみが生じている場合も多いのです。では、各成長過程で企業はなにをなすべきかを考えてみます。
 
Step1:基礎体力をつける(幼年期)
Step2:他社との優位性確保、他社との差別化・競争力UP(青年期)
Step3:売上・利益拡大(壮年期)
 
 以下に、成長の各ステップを詳しく見てみましょう。
 
 

◆ Step1 基礎体力をつける(幼年期)

 
 企業の基礎体力とは「PDCAが回る」「人材育成の仕組み化」「業務の仕組み化」を指します。この三つがそろって初めて企業の成長に耐えうる「体力」が備わってくるのです。
 

(1) PDCAの回る改善活動の仕組み作成と実施フォロー

 
 企業にとって、これからの成長に欠かせない全社員による基本的な考え方の共有、日常行動を定着させます。
 

【毎日夕会】

 
 日常の問題点、課題の整理と優先付けを毎日30分~1時間の会議でディスカッションを行います。(夕方または早朝に開催)役職者に経営者が加わり、司会と記録(議事録)は当番制にします。すぐ解決できる項目は、分担を決めて実行し、次回の会議で結果を報告します。また、中長期で解決しなければならない項目、部門横断的な仕組みの構築が必要な項目はリストアップして、「業務計画」で各部門で取り組む、または経営課題等はプロジェクト計画実施項目に追加していきます。
 

【経営方針書】

 
 経営トップによる方針・目標を毎年度初めに立案して「経営方針書」を作成します。全社員を集め、トップが説明し理解させます。方針と、年間の具体的な施策の実施項目と目標値を設定します。
 

【業務計画書】

 
 経営方針書のトップ方針に従って社員(役職者)は「業務計画書」を作成します。トップの方針や目標を達成するため、自部門の範囲で実施する目標を立てます。主な項目としては、
 
 ・売り上げ、利益の改善
 ・品質改善
 ・生産性の改善
 ・教育
 ・経費削減など 
 
 これは、日常の業務改善以外の改善項目・目標として、部門メンバー全員で分担して実施します。毎月実施した改善は、月末にトップを交えてレビューを行います。
 

(2) 人材育成計画作成と実施フォロー

 

【人材マップ】の作成

 
 社員の構成や特性を「見える化」し把握することが、これから人材を有効活用するために重要となっています。そのひとつの手法として「人材マップ」を作成し、個人の経歴、能力・技能のスキル、特性などのカテゴリーで「見える化」し、採用・配置(ローテーション)・人材育成・人材活用の計画立案・実行に役立たせます。トップの描いた会社の将来像によって「求める人材像」が明確になり、人材マップによって「社員の現状」が把握できれば、それらを引き算すると、人材ギャップが明確になります。将来必要となる人材に対して、現状ではどの職種、専門分野で、どういう能力を持った人材が何人足りない、というように、人材ギャップが質と量の両面で明らかになります。
 

【人材育成計画】

 
 人材ギャップが見える化されると、これまで感覚的に行っていた人材育成と人材活用を、よりシステマティックに改めることが可能となります。まず、人材育成については、人材ギャップを見ることで、将来必要になるスキルが明らかになり、組織として優先的に引き上げるべきスキルを特定し教育などを集中的に実施します。
 

【信賞必罰】

 
 一般の会社は、「信賞必罰」と口ではいいつつも、何を賞するか、何を罰するかはあまり明文化していません。極端に言うとすべて社長の胸先三寸です。そして、このような制度のない会社は不公平感がはびこっており、概して社内が暗いのです。組織を活性化し、信賞必罰でメリハリをつけるために、信賞必罰制度を運用する仕組みを構築します。会社の求める人材の能力、実績評価基準が明確化されれば、おのずと誰もが納得いく信賞必罰制度の構築が可能です。透明性と、普遍的な基準を設けることによってそれは実現可能となります。
 

(3) 経営体制強化・・・業務を仕組みで動かす

 

【組織の責任権限】明確化

 
 指揮命令系統が曖昧であったり、特定の個人に仕事が集中している組織は業務処理が非効率であったり、ミスが多発したり、様々な問題が生じます。組織の役割、組織の長、構成員の役割ははっきりと明文化しておく必要があります。ただし、社員の数が絶対的に少ない小規模企業では、助け合い精神で、お互いの仕事をカバーしながら行っていかなければなりません。
 

【業務フロー】の明確化

 
 個人商店では、業務の処理方法や、判断基準は個人の裁量に任されています。ただ、それでは人によって仕事のやり方が違ってきます。また、社長はいちいち、それぞれの社員へ指示を出し、また結果を聞いてその都度判断を下さなければなりません。業務量が少ない、少人数の組織では、それは成り立ちますが、業務量が増大し、社員数も増えてくるとそうはいきません。聖徳太子でもせいぜい10人の行動を把握できるだけです。そこで、業務内容を一定のルールで動かす必要が生じてきます。社長は、人を直接動かすのではなく、ルールによって業務をうまく回して人を動かすことが必要になってきます。業務フロー、業務マニュアルを作成し、社内をすべて仕組み化して動かすようにします。業務マニュアルの作成方法については、機会を改めて説明します。
 

【業務の見える化】推進

 
 経営の状況(売上、経費、生産性・・・)、改善活動の進捗状況など、指標を明確にし、その達成度・推移の実績管理を行います。見える化する事によって、新たな問題点も見えてきます。
 
 これらの活動は、半年~一年かけて定着させます。個人商店的な経営から抜け出し、組織と仕組みによる経営に移行するのは容易なことではありません。しかし、ここから抜け出さなければ、業績も低迷したレベルで止まってしまいます。成長企業として、一歩上に抜け出せるかどうかは、この基礎体力...
 ものづくり中小企業、特に社員数十人規模の小規模企業の経営者は、日々の実務をこなす中で、小規模ゆえに様々な問題に直面しています。また戦後の経済成長時代に業績を伸ばし業界での地位を築いてきた企業も時代の変化の中で、先代経営者から二代目、三代目と、若い経営者に経営を引き継ぎ、新しい感覚のビジネスを模索している企業も多く見受けます。ただ、そこには共通課題も見えてきます。特に、規模の小さい企業に見られる特徴として次の5点があげられます。
  
・多品種少量生産への対応遅れ、生産性の低下、納期・品質トラブル発生
・高度な業務に対応できる人材の不足
・と言いつつ社員の教育もままならず、社員の能力発揮が不十分
・組織の役割が曖昧、仕組み化が遅れ、個人商店的な経営から脱皮できず
・企業の成長を支えるPDCAの改善活動が停滞、又は全く実施されていない
 
 つまり、企業組織としての力が発揮されておらず、潜在能力を充分に引き出せていないのです。企業にも、幼年期、青年期、壮年期と呼ばれる成長過程があります。厳しい競争環境下で、売り上げが低迷している企業は、幼年期からなかなか青年期を迎えられない企業も多いと考えられます。また、売り上げを伸ばしている企業でも、体力が十分備わらない幼年期のまま、規模のみが拡大し様々なひずみが生じている場合も多いのです。では、各成長過程で企業はなにをなすべきかを考えてみます。
 
Step1:基礎体力をつける(幼年期)
Step2:他社との優位性確保、他社との差別化・競争力UP(青年期)
Step3:売上・利益拡大(壮年期)
 
 以下に、成長の各ステップを詳しく見てみましょう。
 
 

◆ Step1 基礎体力をつける(幼年期)

 
 企業の基礎体力とは「PDCAが回る」「人材育成の仕組み化」「業務の仕組み化」を指します。この三つがそろって初めて企業の成長に耐えうる「体力」が備わってくるのです。
 

(1) PDCAの回る改善活動の仕組み作成と実施フォロー

 
 企業にとって、これからの成長に欠かせない全社員による基本的な考え方の共有、日常行動を定着させます。
 

【毎日夕会】

 
 日常の問題点、課題の整理と優先付けを毎日30分~1時間の会議でディスカッションを行います。(夕方または早朝に開催)役職者に経営者が加わり、司会と記録(議事録)は当番制にします。すぐ解決できる項目は、分担を決めて実行し、次回の会議で結果を報告します。また、中長期で解決しなければならない項目、部門横断的な仕組みの構築が必要な項目はリストアップして、「業務計画」で各部門で取り組む、または経営課題等はプロジェクト計画実施項目に追加していきます。
 

【経営方針書】

 
 経営トップによる方針・目標を毎年度初めに立案して「経営方針書」を作成します。全社員を集め、トップが説明し理解させます。方針と、年間の具体的な施策の実施項目と目標値を設定します。
 

【業務計画書】

 
 経営方針書のトップ方針に従って社員(役職者)は「業務計画書」を作成します。トップの方針や目標を達成するため、自部門の範囲で実施する目標を立てます。主な項目としては、
 
 ・売り上げ、利益の改善
 ・品質改善
 ・生産性の改善
 ・教育
 ・経費削減など 
 
 これは、日常の業務改善以外の改善項目・目標として、部門メンバー全員で分担して実施します。毎月実施した改善は、月末にトップを交えてレビューを行います。
 

(2) 人材育成計画作成と実施フォロー

 

【人材マップ】の作成

 
 社員の構成や特性を「見える化」し把握することが、これから人材を有効活用するために重要となっています。そのひとつの手法として「人材マップ」を作成し、個人の経歴、能力・技能のスキル、特性などのカテゴリーで「見える化」し、採用・配置(ローテーション)・人材育成・人材活用の計画立案・実行に役立たせます。トップの描いた会社の将来像によって「求める人材像」が明確になり、人材マップによって「社員の現状」が把握できれば、それらを引き算すると、人材ギャップが明確になります。将来必要となる人材に対して、現状ではどの職種、専門分野で、どういう能力を持った人材が何人足りない、というように、人材ギャップが質と量の両面で明らかになります。
 

【人材育成計画】

 
 人材ギャップが見える化されると、これまで感覚的に行っていた人材育成と人材活用を、よりシステマティックに改めることが可能となります。まず、人材育成については、人材ギャップを見ることで、将来必要になるスキルが明らかになり、組織として優先的に引き上げるべきスキルを特定し教育などを集中的に実施します。
 

【信賞必罰】

 
 一般の会社は、「信賞必罰」と口ではいいつつも、何を賞するか、何を罰するかはあまり明文化していません。極端に言うとすべて社長の胸先三寸です。そして、このような制度のない会社は不公平感がはびこっており、概して社内が暗いのです。組織を活性化し、信賞必罰でメリハリをつけるために、信賞必罰制度を運用する仕組みを構築します。会社の求める人材の能力、実績評価基準が明確化されれば、おのずと誰もが納得いく信賞必罰制度の構築が可能です。透明性と、普遍的な基準を設けることによってそれは実現可能となります。
 

(3) 経営体制強化・・・業務を仕組みで動かす

 

【組織の責任権限】明確化

 
 指揮命令系統が曖昧であったり、特定の個人に仕事が集中している組織は業務処理が非効率であったり、ミスが多発したり、様々な問題が生じます。組織の役割、組織の長、構成員の役割ははっきりと明文化しておく必要があります。ただし、社員の数が絶対的に少ない小規模企業では、助け合い精神で、お互いの仕事をカバーしながら行っていかなければなりません。
 

【業務フロー】の明確化

 
 個人商店では、業務の処理方法や、判断基準は個人の裁量に任されています。ただ、それでは人によって仕事のやり方が違ってきます。また、社長はいちいち、それぞれの社員へ指示を出し、また結果を聞いてその都度判断を下さなければなりません。業務量が少ない、少人数の組織では、それは成り立ちますが、業務量が増大し、社員数も増えてくるとそうはいきません。聖徳太子でもせいぜい10人の行動を把握できるだけです。そこで、業務内容を一定のルールで動かす必要が生じてきます。社長は、人を直接動かすのではなく、ルールによって業務をうまく回して人を動かすことが必要になってきます。業務フロー、業務マニュアルを作成し、社内をすべて仕組み化して動かすようにします。業務マニュアルの作成方法については、機会を改めて説明します。
 

【業務の見える化】推進

 
 経営の状況(売上、経費、生産性・・・)、改善活動の進捗状況など、指標を明確にし、その達成度・推移の実績管理を行います。見える化する事によって、新たな問題点も見えてきます。
 
 これらの活動は、半年~一年かけて定着させます。個人商店的な経営から抜け出し、組織と仕組みによる経営に移行するのは容易なことではありません。しかし、ここから抜け出さなければ、業績も低迷したレベルで止まってしまいます。成長企業として、一歩上に抜け出せるかどうかは、この基礎体力づくりが成功するかどうかに掛かっているのです。
 

◆ Step2:他社に対する優位性確保

 
 PDCAがうまく回転するようになったら、自社の強みをより強くして、弱みを克服する方策を講じ、ニッチな分野で業界一を目指すことが次のステップとして重要になります。幼年期から青年期に入ると、個性を磨かなければ企業は成長できません。自社は、お客様から見て、他社と比べて、どのような特徴、利点があるだろか?を考えます。お客様が自社を選んでくださっている理由が必ずあります。それをもっと磨き、他のお客様にも認めてもらう努力をします。
 
 Q・・・業界一の品質、技術、サービス
 C・・・リーズナブルな価格
 D・・・ジャスト・イン・タイム生産 
                          などが優位性として上げられます。
 

◆ Step3:売上・利益拡大(壮年期)

 
 ヒット商品を単発的に出すのではなく、自社の優位性確実なものにし継続的な売上高の確保、利益を出し続けるための方策を講じます。
 
IE
 
 戦略の方向性は新製品・新技術の開発、(海外)新市場への進出、圧倒的に優位な生産工程構築などの自社の強みを生かした新たな事業分野への進出です。そのためには、ビジネスモデルの転換も必要となります。
 
  

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


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