特許には何が書いてあるのか 新規事業を実現する技術経営のあり方 (その2)

 前回のその1に続いて解説します。
 

1. 技術経営: 特許には何が書いてあるのか

 
 【特許明細書】には次のことが書いてあります。
 
(1) 発明の属する技術分野 (この発明は・・・に関するものである)
(2) 従来の技術 (従来にはこのようなものがあった)
(3) 発明が解決しようとする課題 (それにはこのような欠点・問題があった)
(4) 課題を解決するための手段 (その欠点を解決するためにこのようにする)
(5) 発明の実施の形態・実施例など (具体的にはこのようにする)
(6) 発明の効果 (これによりこのような素晴らしい効果がでる)
 
 特許明細書には従来の技術と課題とそれをブレークスルーするための発明の内容が書いてあることがわかります。そこで他人の特許をヒントにして、全く新しい発明(イノベーション)を生み出そうとするのが、これからの話です。まさに「特許活用によるイノベーション創出の提案」ということになります。
 

2. 技術経営に基づく2つの方法

 
 ここまで、特許について説明しましてきました。自社の特許を読むことで、自社のコア・コンピタンスがわかります。すなわち、自社の強みがわかるということです。その強みをどの分野に活かし、その強みをどう発展させていくかという特許戦略が重要です。全く自社の既存の技術や市場に基づかなければ、飛び地のビジネスになりそれは未経験のリスクが高くなります。また、価値のあるアイデアを社内で提案してもなかなか受け入れられないこともあるでしょう。従って、特許活用によるイノベーション創出の提案は、スタートを自社のコアコンピタンスから考えるというのが、ポイントとなります。
 
 ここでは、2つの方法を解説します。方法1は、既存技術を用いて、新規市場を目指す活用方法です。方法2は、既存技術を用いて、さらにその技術を発展させていく活用方法です。技術の棚卸しを、図1の様な四象限マトリックスを用いて考えます。既存技術、新規技術、既存市場、新規市場の4つの中で、自社の現状は左下の(既存技術)(既存市場)のモノを作って売っていると思われます。それを、特許の情報を利用して発展させていくという方法です。
 
図1. 技術の棚卸し(四象限マトリックス)
【出典】中長期的成長に向けた富士フィルムのR&Dの取組み(2016/3/29) 15頁より
 
 

3. 技術経営:既存技術を用いて、新規市場を目指す

 
 これは自社技術を用いて新しい市場に展開する場合の方法です。公式は以下です。
 
「保有技術」×「商品等のキーワード」≒ 「保有技術適用可能な商品」
 
 「保有技術」とは自社の特許の中から選んだり、自社の技術シーズから絞り込むことが可能です。特許がない場合でも、技術者であれば自社の強い技術というのが何であるかわかると思います。特許の中には強みとなる技術と、さらに利益を生み出しているネタが含まれています。そして、ある程度の客観的な指標となります。特許になっていないものでも構いませんが、その強さを客観的に見る必要があります。そして、「商品等のキーワード」というのは、将来期待できる分野、自社と関連のある隣の分野などのキーワードを抽出します。このキー...
ワードの選択はセンスが必要かもしれません。整理すると以下のステップになります。
 
手法1会社のもつ技術的な強みに立脚した、新規事業を考えるフロー
 
STEP1 特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
 
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
  ↓
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
  ↓
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
  ↓
実 行
 
 次回は、このステップを実例を上げて解説します。
 
 

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