SN比について 超実践 品質工学 (その5)

 

【超実践 品質工学、連載記事へのリンク】

  1. 未来の品質
  2.  機能性評価
  3.  機能定義
  4.  ばらつき要因、ノイズ因子
  5.  SN比について
  6.  機能性評価の使いどころと効果

 

◆関連解説『機能性評価とは』
 
 機能の安定性を測る尺度(ものさし)であるSN比について見ていきましょう。一度何を計算しているかを理解してしまえば、実務でのSN比の計算はExcel®などの計算ツールを使用すればよいのです。計算を恐れる必要はありません。大切なのは計算に用いるデータの質です。それは正しい機能定義、ノイズ因子の選択、適切な実験の方法(計測誤差の管理など)によって得られるものです。
 

1. SN比とは

 品質工学におけるSN比は要するに、お客様が欲しい成分と欲しくない成分の比のことです。図5のような評価データのうち、お客様の欲しい成分はどの部分でしょうか。思い出してほしいのは、グラフの縦軸は機能の出力で、お客様が欲しいものであったということです。図6のように、入出力の傾き(変換効率)は大きいほうが望ましいのです。この場合、平均の傾きβN0の大きさの成分を欲しい成分(有効成分A)と考えます。
 
                            
図5. ノイズ因子で変動した機能の出力
 
                        
図6. 機能の出力の有効成分と無効成分
 
 つぎに、お客様の欲しくない成分について考えます。一つは、積極的に与えたノイズ因子条件N1とN2の間の差(変動)です。使用条件、環境条件といったノイズ因子の条件によって、出力が変わらないほうが良いですよね。これが欲しくない成分の一つ目(有害成分B、図6左下)です。二つ目は、本来機能の関係は線形になってほしいのに、そうなっていない非線形な成分(有害成分C、図6右下)です。SN比とは、これらの有効成分Aと有害成分B+Cの比をとったもの、すなわちお客様が欲しい成分と欲しくない成分の比です。
 
                                  
 
 SN比全体では、大きいほど良いということです。つまり、機能性評価を行ってSN比が大きくなるような設計を目指していけばよいのです。これにより、性能に関する特性(ほしい成分)や騒音、発熱などの副作用(ほしくない成分)をあちこち追いかけてモグラたたきをするのではなく、SN比を理想に近づけるように開発のベクトルを合わせることが可能になります。
 

2. SN比の計算

 実務でのSN比の計算は、使用しやすいエネルギー比型SN比をお勧めします。筆者著書「これでわかった! 超実践 品質工学」(日本規格協会、2016年)の162~168ページに計算方法を解説しました。また、同書の特別付録(無償ダウンロード版ツール)でSN比が計算可能です。本ツールでは品質工学の実験計画を行うための計画書、機能性評価やパラメータ設計の解析計算を行うための解析ツールも含まれています。また、エネルギー比型SN比の数理や特殊なデータ形式の場合の詳細な計算方法については、筆者著書「エネルギー比型SN比」(日科技連出版社、2016年)に詳しいので、ご興味のある方はこちらもご参照ください。
 
  次回は、機能性評価の使いどころと効果について解説します。   

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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