1. スパッタリング技術とは
スパッタリング(スパッタ)は、図1のように、コーティング技術の分類では薄膜形成に用いられる物理的気相成長法(PVD)の一種で、真空中でプラズマを用いて成膜します。『材料選択の多さ、高い密着性、制御のしやすさ』が特徴で、工具等のコーティングや、半導体や液晶、光学素子等の機能膜形成に広く用いられています。特に近年では、プラスチック表面の装飾等の用途にも広がりつつあります。今回、スパッタリングの基本原理と装置、コーティングとしての特徴に触れ、プラスチックへの成膜を含めた応用分野と、技術導入の注意点について2回に分けて解説します。
図1.コーティング技術の分類
2. 技術的な原理
スパッタリング現象とは、物質にイオン等を高速で衝突させることにより、分子が叩き出される現象のことです。この現象を利用して、対象物にコーティングや表面改質を行う技術をスパッタリングと呼びます。この現象の身近な例では、図2のように蛍光灯を使用しているとガラス管の端がしだいに黒くなってくる現象があります。これは蛍光灯のフィラメントが放電によって少しずつ弾き飛ばされ、ガラス管に付着していくためにおきます。1)
図2.蛍光灯とスパッタリング現象...