5Sは人を変え、会社を変える  

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 5S5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、改善の基本中の基本ですが、ではなぜ5Sが続かないのでしょうか。それは5Sの進め方の基本、活動展開の基本に問題があるからです。それらのポイントについて解説します。
 
 企業の成長、発展のためには、改善と人材育成が必要条件です。改善の基本中の基本は5Sで、殆どの企業は5Sの必要性は認識しており、工場、オフィスには“整理・整頓”のポスター等が壁に貼られているのですが、現実はいかがでしょうか?
 
 ・モノがあふれ、置き場に困っている。
 ・通路にもモノがあふれ、工場、事務所が雑然としている。
 ・部品や工具、書類、資料、データがすぐに見つからず、探しまわる。
 ・長期の保管品、滞留品が多く、ムダなスペースをとっている。
 ・職場で何かの取り決めしても、いつの間にか“なし崩し”になってしまう。
 
 5S活動に取り組んだ企業も、いつの間にか元に戻ったということをよく聞きます。5Sは企業にとって、古くて新しい課題なのです。
  

1.5S活動の進め方のポイント

 5Sの内で、先ず3S(整理・整頓・清掃)を実施することです。3Sは、実際に手を使い、体を動かし、繰り返さないと出来ません。2S(清潔・躾は)は3Sを維持することです。
 
(1)整理は、『要るモノと要らないモノを区分し、要らないものを処分する』ことです。モノ、情報を、①必要、②不急、③不要の3つに分けます。
① 必要なモノ(常時使用するモノ)のみを、仕事する場所に置く。必要なモノは、その基準を決めま
  す。(例:1か月以内に、又1週間以内に使うモノ等)
② 不急なモノ(例:上記基準を超えるもの)は別の場所に移す。この一時的な置き場を設けることが
  5S成功条件の一つです。
③ 不要なモノは、廃棄、リサイクル等、会社から放出する。
 
 整理をすると、②と③で2~3割のモノ、情報が、自分の職場から無くなり、職場は広くなります。その結果仕事がやり易く、ムダな運搬等が減り、モノの置き場のスペースが創出され、狭い、置き場がないなどの不満は解消されます。
 
(2)清掃は“掃除のこと。職場をゴミや汚れのない状態にする”です。
 始業時、終業前の10~15分を清掃の時間に充てて、定例化します。雑然とした汚い工場では、事故、クレームが多く、従業員のモラールも低く、当然顧客の評価もよくありません。清掃を徹底することにより、隅、奥などの不要なモノ、滞留したモノ等、又設備の不具合も早期に見つかります。これを“清掃は点検なり”といいます。又、一仕事一片づけの習慣付けも大切です。
 
(3)整頓は“必要なモノ、情報が、必要な時に誰にでも即座に見つかるようにすることです。
  『見つけやすく、取り出し易く、戻し易く』モノの表示、置き場、在庫の基準等を決めていくことです。整頓は、仕事の効率化や生産性向上に直結する活動です。整頓により、モノを探す時間、ムダな運搬などの工数が大幅に減ります。製品、部品、消耗品、文房具等の在庫も減り、外払い金額が減ります。
 
(4)清潔は“ゴミや汚れのない状態を保つ”ことです。
  整理、整頓、清掃の3Sを維持することで、清潔状態にすることです。
 
(5)躾は“決められたことを守る”ことです。
  大部分の企業では決めごとが不十分で、守る以前の課題があります。そのために置き場表示、台車の戻す場所、区画線、危険表示など表示、定位置化、マニュアル化等の整頓に関して、決め事作っていくことが必要です。
 

2.5S活動展開のポイント(成功条件)  

(1)トップの取組み姿勢(意思)
 5S活動にはトップの参画が必須で、その成否はトップが握っています。従業員に5Sの意識が定着するまでには、数年かかります。その間、継続するという強い意志が必要です。活動が中断するのは、トップの責任です。5Sの中で最も重要な整理で、モノの要・不急・不要の判断が必要ですが、それらの最終判断もトップです。5Sを軽く考え、活動の担当者を新人、若い人等を指名しているケースがありますが、彼らが不要と思っても処分することはできません。その場合、整理が出来ない、すなわち5Sが成就しないことになります。
 
(2)活動の定期化と工数投資
 5Sは、仕事として定時内で行いましょう。トヨタでも、5Sは仕事そのものです。トップによっては、「時間を作ってやりなさい」と言う人もいます。これでは誰もやりません。活動時間は月間で5~10時間取り、定例化することです。1年後10~20%の生産性はアップするはずです。その時間(投資)をかけなければ、職場は変わりません。従業員の工数投資なくして成長なしです。
 
(3)全員参加による取組み
 職場の問題・課題を全員で共有化し、改善に取り組む。“三...
 5S5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、改善の基本中の基本ですが、ではなぜ5Sが続かないのでしょうか。それは5Sの進め方の基本、活動展開の基本に問題があるからです。それらのポイントについて解説します。
 
 企業の成長、発展のためには、改善と人材育成が必要条件です。改善の基本中の基本は5Sで、殆どの企業は5Sの必要性は認識しており、工場、オフィスには“整理・整頓”のポスター等が壁に貼られているのですが、現実はいかがでしょうか?
 
 ・モノがあふれ、置き場に困っている。
 ・通路にもモノがあふれ、工場、事務所が雑然としている。
 ・部品や工具、書類、資料、データがすぐに見つからず、探しまわる。
 ・長期の保管品、滞留品が多く、ムダなスペースをとっている。
 ・職場で何かの取り決めしても、いつの間にか“なし崩し”になってしまう。
 
 5S活動に取り組んだ企業も、いつの間にか元に戻ったということをよく聞きます。5Sは企業にとって、古くて新しい課題なのです。
  

1.5S活動の進め方のポイント

 5Sの内で、先ず3S(整理・整頓・清掃)を実施することです。3Sは、実際に手を使い、体を動かし、繰り返さないと出来ません。2S(清潔・躾は)は3Sを維持することです。
 
(1)整理は、『要るモノと要らないモノを区分し、要らないものを処分する』ことです。モノ、情報を、①必要、②不急、③不要の3つに分けます。
① 必要なモノ(常時使用するモノ)のみを、仕事する場所に置く。必要なモノは、その基準を決めま
  す。(例:1か月以内に、又1週間以内に使うモノ等)
② 不急なモノ(例:上記基準を超えるもの)は別の場所に移す。この一時的な置き場を設けることが
  5S成功条件の一つです。
③ 不要なモノは、廃棄、リサイクル等、会社から放出する。
 
 整理をすると、②と③で2~3割のモノ、情報が、自分の職場から無くなり、職場は広くなります。その結果仕事がやり易く、ムダな運搬等が減り、モノの置き場のスペースが創出され、狭い、置き場がないなどの不満は解消されます。
 
(2)清掃は“掃除のこと。職場をゴミや汚れのない状態にする”です。
 始業時、終業前の10~15分を清掃の時間に充てて、定例化します。雑然とした汚い工場では、事故、クレームが多く、従業員のモラールも低く、当然顧客の評価もよくありません。清掃を徹底することにより、隅、奥などの不要なモノ、滞留したモノ等、又設備の不具合も早期に見つかります。これを“清掃は点検なり”といいます。又、一仕事一片づけの習慣付けも大切です。
 
(3)整頓は“必要なモノ、情報が、必要な時に誰にでも即座に見つかるようにすることです。
  『見つけやすく、取り出し易く、戻し易く』モノの表示、置き場、在庫の基準等を決めていくことです。整頓は、仕事の効率化や生産性向上に直結する活動です。整頓により、モノを探す時間、ムダな運搬などの工数が大幅に減ります。製品、部品、消耗品、文房具等の在庫も減り、外払い金額が減ります。
 
(4)清潔は“ゴミや汚れのない状態を保つ”ことです。
  整理、整頓、清掃の3Sを維持することで、清潔状態にすることです。
 
(5)躾は“決められたことを守る”ことです。
  大部分の企業では決めごとが不十分で、守る以前の課題があります。そのために置き場表示、台車の戻す場所、区画線、危険表示など表示、定位置化、マニュアル化等の整頓に関して、決め事作っていくことが必要です。
 

2.5S活動展開のポイント(成功条件)  

(1)トップの取組み姿勢(意思)
 5S活動にはトップの参画が必須で、その成否はトップが握っています。従業員に5Sの意識が定着するまでには、数年かかります。その間、継続するという強い意志が必要です。活動が中断するのは、トップの責任です。5Sの中で最も重要な整理で、モノの要・不急・不要の判断が必要ですが、それらの最終判断もトップです。5Sを軽く考え、活動の担当者を新人、若い人等を指名しているケースがありますが、彼らが不要と思っても処分することはできません。その場合、整理が出来ない、すなわち5Sが成就しないことになります。
 
(2)活動の定期化と工数投資
 5Sは、仕事として定時内で行いましょう。トヨタでも、5Sは仕事そのものです。トップによっては、「時間を作ってやりなさい」と言う人もいます。これでは誰もやりません。活動時間は月間で5~10時間取り、定例化することです。1年後10~20%の生産性はアップするはずです。その時間(投資)をかけなければ、職場は変わりません。従業員の工数投資なくして成長なしです。
 
(3)全員参加による取組み
 職場の問題・課題を全員で共有化し、改善に取り組む。“三人寄れば文殊の知恵”と言いますが、モノの処分、モノの移動、レイアウトの見直し、全員の取り組みで職場が変われば、達成感がでます。さらに従業員の一体感も高まります。
 
(4)5S活動事務局の設置
 5S活動を効果的に進めるために、事務局(的な役割)が必要です。調整、アドバイス、進捗のフォロー等の役割を、トップ直結の専従者を設けることが、5Sを前進させる大きな力となります。
 
(5)仕事の進め方の基本 P-D-C-A(管理サイクル)
 仕事の進め方の基本であるPlan―Do―Check-Actionで、5Sの問題・課題を列挙し(顕在化)計画を立てて(例:5S計画&進捗表)、チェック、フォローを5Sの活動時間で実行していきましょう。そのサイクルを続けていると、自分達が会社を変えていると実感し、モラルアップにつながります。
 

3.5Sの進め方の基本、まとめ

 5Sの進め方の基本・活動展開の基本、それらのポイントについて解説しました。最後に、何事にも定石(基礎・基本・原理・原則)があります。定石を知らなければ上達しません。又、効果も出ません。基礎・基本を押さえた活動の展開に参考になればと思います。
 

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この記事の著者

落海 武

現場が変われば利益が上がる! 50社近くの製造業で、成果を挙げた現場改革のノウハウを伝えます。

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