なぜ日本人は先端プロジェクトの全体最適化が苦手なのか 〜プロジェクトの成功と失敗を具体的に対比した3つの事例研究〜
どうすれば,先端プロジェクトにおいて,コストパフォーマンスを最大化できるのか。
事例を通し,その具体的な方法やメリットを解説します!
セミナー趣旨
これまでに無い先端プロジェクトでは,開発しようとする機能と性能・開発費用・開発期間といった要求要件の間に,トレードオフ関係(あちらを立てればこちらが立たなくなるといった相反関係)が常に生じます。
そこで,欧米諸国では,コストパフォーマンス(費用対効果)を最大化するために,プロジェクトマネージャのトップダウンにより,トレードオフ関係の全体最適化を図るプロジェクト運営を行うのが通例です。他方,我が国では,「組織対応」と称するプロジェクト運営を行うのが通例であり,この場合のプロジェクトマネージャの役割は,トップダウンにより全体最適化を図ることではなく,プロジェクトに関係する各組織の「まとめ役」,つまり,コーディネーターに過ぎなくなります。
しかし,このような「組織対応」では,関係する組織ごとのボトムアップによる部分最適化を図ることしかできず,全体最適化は覚束なくなります。
そこで,本セミナーでは,詳しくご紹介する3つの事例研究を通じて,「組織対応」によるプロジェクト運営の大きなデメリットを明らかにするとともに,プロジェクトマネージャのトップダウンにより全体最適化を図るプロジェクト運営について,具体的な取り組み方や大きなメリットを分かりやすく説明します。
受講対象・レベル
- 官公庁や企業で,新規の整備事業や開発プロジェクトを何としても成功させたいと考えている方
- 官公庁や企業で,これまでの「組織対応」によるプロジェクトマネジメントのあり方に疑問を感じている方
- 官公庁や企業で,新規の整備事業や開発プロジェクトを的確にマネジメントする手法について,詳しく知りたい方
- 官公庁や企業で,新規の整備事業や開発プロジェクトについて,組織としての意志統一を図っていきたいと考えている方
- 官公庁や企業で,新規の整備事業や開発プロジェクトの進め方について上司を説得したいと考えている方
- トップダウンで全体最適化を図る欧米流のプロジェクトマネジメント手法について,詳しく知りたい方
- 技術コンサルタント会社で,官公庁や企業に対して欧米流のプロジェクトマネジメント手法についてコンサルティングしたいと考えている方
- 自治体や建設コンサルタント会社で,インフラメンテナンスの包括的民間委託での性能発注に最適な要求水準書の作成方法について知りたい方
- 自治体や建設コンサルタント会社で,公募型プロポーザルによる整備事業に最適な要求水準書の作成方法について知りたい方
- 自治体への発注者支援業務に取り組むCM会社で,業務の対象となる公共事業の全体を的確にマネジメントする手法について研究している方
セミナープログラム
- 1.【事例研究その1】
零戦の大成功と後継機「烈風」の大失敗
- 零戦は,20世紀の世界地図を塗り替えた純国産の工業製品
- 旧日本海軍の軍用機開発方法は,仕様発注方式と性能発注方式の2種類
- 零戦が成功した秘訣
- 零戦の後継機「烈風」の開発に旧日本海軍は大失敗
- 零戦の成功と後継機「烈風」の失敗が残した教訓
- 2.【事例研究その2】
仕様発注方式で失敗・破綻し,性能発注方式で復活・成功した新国立競技場整備事業
- 2015年7月17日,新国立競技場整備計画が白紙撤回
- 白紙撤回された新国立競技場整備計画,工事費試算額の推移
- 新国立競技場整備計画が破綻した原因
- 性能発注方式で復活・成功した新国立競技場整備事業
- 新国立競技場整備事業の失敗・破綻と復活・成功からの教訓
- 3.【事例研究その3】
X線天文衛星「ひとみ」の大失敗と小惑星探査機「初代はやぶさ」の大成功
- X線天文衛星「ひとみ」は,国際協力ミッション
- 「ひとみ」は,打ち上げに成功した1ヶ月後にバラバラに分解
- 「ひとみ」がバラバラに分解した原因は,ソフトウェアのバグとデータの誤入力
- 「ひとみ」の姿勢測定系の機能設定に大きな問題
- 大成功した小惑星探査機 「初代はやぶさ」
- 「初代はやぶさ」と「ひとみ」の対比からの教訓
- 4.全体最適化はプロジェクトを成功させる必須要件
- プロジェクトの成功事例と失敗事例を対比した3つの事例研究からの総まとめ
- 全体最適化の成否はプロジェクトの成否に直結
- 「プロ中のプロ」がトップマネジメントしなければ,仕様発注方式での全体最適化は困難
- 性能発注方式では,受注者に委ねるべき設計に立ち入った場合の全体最適化は困難
- 5.トップダウン型プロジェクトマネージャの具体的な養成法
- 「組織対応」によるマネジメントでは先端プロジェクトの全体最適化が困難
- トップダウンによるマネジメントで先端プロジェクトを全体最適化
- プロジェクトマネジメントを「組織対応」からトップダウンに変えていく方法
- トップダウン型プロジェクトマネージャに求められる役割と資質
- トップダウン型プロジェクトマネージャの本領を発揮させる性能発注方式の取り組み方
- ◎ 質疑応答
セミナー講師
澤田 雅之 氏
澤田雅之技術士事務所 所長
技術士(電気電子部門)
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1978年に京都大学(院)工学研究科修士課程を修了し、警察庁に入庁。警察大学校警察情報通信研究センター所長を退職後に技術士資格(電気電子部門)を取得して、2015年に技術士事務所を開業。
35年間にわたって勤務した警察では、東京、兵庫、大阪、宮崎、茨城、宮城、福岡、愛知、神奈川の各都府県において、警察情報通信施設の整備・維持管理・運営の業務に従事した。この際、警察情報通信施設が地震や津波、山火事などの脅威に晒された事例や、自動車衝突による破損や侵入による損壊などを被った事例を、否応なく幾度も経験した。それゆえ、被害発生防止に向けた事前対応のプロセスであるリスクマネジメントと、実際に被害が発生した際に、被害の拡大防止と早期回復を図る事後対応のプロセスであるダメージコントロールについて、実務を通じた多くの知見を蓄積することができた。そこで、技術士事務所開業後は、このような知見を体系化することにより、講演等を通じてノウハウを発信している。
また、2015年の首相官邸ドローン落下事件を契機として、カウンタードローンに関する調査研究を開始。伊勢志摩G7サミット、大阪G20サミット、ラグビーW杯、東京オリンピック等に向けて、警察庁、警視庁、海上保安庁、経済産業省、関係府県警察本部等でカウンタードローンについて講演。2018年以降は空の産業革命に向けたドローンの利活用にも調査研究の対象を拡大し、これまでに多数の執筆や講演を実施。
また、警察庁では、各種の警察情報通信システムの新規開発プロジェクトに携わった。管区警察局県情報通信部長として勤務した宮崎、茨城、宮城、福岡、愛知、神奈川の各県警察では、1996年に「宮崎県警察本部ヘリコプターTVシステム整備事業」を、我が国では戦後初となる性能発注方式(全体最適化に効果的な方式)によるプロジェクト運営で成功させたことを皮切りに、警察情報通信システム整備事業の全てを性能発注方式によるプロジェクト運営で完遂した。
技術士事務所開業後は、今日に至るまで、我が国における先端プロジェクトの成功事例と失敗事例を対比してその要因を探る研究に取り組むとともに、プロジェクトの全体最適化に効果的な性能発注方式の啓蒙と普及をライフワークとして取り組む。そして、これまでの取り組みで得られた知見を集大成した書籍【「性能発注方式」発注書制作活用実践法】を執筆し、2022年9月に(株)新技術開発センターから出版。この書籍は、プロジェクトの全体最適化手法や性能発注方式について、真正面から取り扱った我が国唯一の書籍である。
セミナー受講料
25,000円(消費税込)※テキスト代を含みます。