
自治体で性能発注方式を的確かつ簡便に実践する方法
様々な問題を抱える公共工事を抜本的に改革する,性能発注方式のやり方をいちから学ぶ!
これからの日本の公共工事には,グローバルスタンダードな性能発注方式(設計と施工を一括して発注する方式)が不可欠です。性能発注方式の誤解を解き,具体的な実践方法を解説します!
セミナー趣旨
自治体では,資材価格の上昇による公共工事の入札不成立が相次いでいます。また,自治体では,未補修のままの老朽インフラが増加の一途を辿っています。
我が国の公共工事の発注は,我が国独自の仕様発注方式(設計と施工を分離して発注する方式であり,施工発注時の予定価格は,工事仕様書に基づく緻密な積算により策定)が専ら用いられていますが,仕様発注方式の手直しや改善では前記の問題を解決することは困難です。そこで,仕様発注方式に起因する諸問題の抜本的な解決に向けて,グローバルスタンダードな性能発注方式(設計と施工を一括して発注する方式であり,発注時の予定価格は,要求要件を示した要求水準書に基づく業者見積もりの徴収・査定により策定)の活用が期待されるところです。
ところが,我が国の自治体では,性能発注方式に対する偏見,例えば,「性能発注方式に対応できる技術力が地域内小規模業者には無い」,「業者見積もりの査定による予定価格は適正性が確認できない」,「性能発注方式では業者見積もりの負担が大きいため,参加業者が極めて少なくなる」,「設計施工を丸投げしてしまうと,受発注者間の責任の所在が曖昧になる」,「性能発注方式では発注者によるチェック機能が働きにくく,発注者が負うべきコストや品質に対する責任が果たせなくなる」,などといった勘違いが蔓延しているのです。
しかし,性能発注方式は仕様発注方式に起因する諸問題全てを解決できるパワーを秘めていますので,性能発注方式を的確に用いれば,発注側と受注側のいずれもWin-Winの関係となるのです。
そこで,本セミナーでは,性能発注方式についての講師の豊富な実践経験,つまり,警察での数百件の各種工事を全て性能発注方式で効果的かつ効率的に実施し,この中で4回にわたる会計検査院実地検査でいずれも「適正に経理されている」旨の講評を頂いた経験に基づいて,性能発注方式の合理的なやり方や予定価格の適切な立て方,要求水準書の具体的な作り方などを分かりやすく説明します。講師の実践経験から,性能発注方式は案ずるより産むが易し,と言えます。
受講対象・レベル
- 自治体で公共工事の発注業務に携わっている方
- 自治体の公共工事の発注業務に関心のある方
- 自治体で公共工事の監査業務に携わっている方
- 自治体の公共工事の監査業務に関心のある方
- 自治体の公共工事に対するコンサルタント業務に携わっている方
- 自治体の公共工事に対するコンサルタント業務に関心のある方
- 自治体の公共工事の設計業務や施工業務を請け負ったことがある方
- 自治体の公共工事の設計業務や施工業務の請負に関心のある方
- グローバルスタンダードな性能発注方式の正しい取組み方や考え方を修得したい方
※受講に当たっての特段の予備知識は必要ありません。
セミナープログラム
- 性能発注方式と要求水準書
- 性能発注方式とは?
- 要求水準書とは?
- 戦後の日本人のDNAに組み込まれてしまった仕様発注方式
- 我が国では戦後,性能発注方式が廃れて仕様発注方式一辺倒になった歴史的経緯
- 戦前は官庁直営方式
- 戦後に確立した仕様発注方式
- 官民の技術力が逆転した今日における仕様発注方式の問題点
- 仕様発注方式の特徴とデメリット
- 性能発注方式の特徴とメリット
- 自治体が性能発注方式に抱いている偏見や勘違い
- 性能発注方式に対応できる技術力が,地域内小規模業者には無い?
- 性能発注方式での業者見積もりの査定による予定価格の策定方法は,適正性が確認できない?
- 性能発注方式では業者見積もりの負担が大きいため,参加業者が極めて少なくなる?
- 設計施工を丸投げしてしまうと,受発注者間の責任の所在が曖昧になる?
- 性能発注方式では発注者によるチェック機能が働きにくく,発注者が負うべきコストや品質に対する責任が果たせなくなる?
- 我が国では戦後,性能発注方式が廃れて仕様発注方式一辺倒になった歴史的経緯
- 自治体が性能発注方式で建設工事を的確に行うプロセス
- 発注者側の意志統一を図るための整備計画書(A4版で数枚程度)を作成
- 受注者側が設計と施工を行う上で必要十分となる要求要件を記載した要求水準書を作成
- 書面決裁で選定した複数の業者に、要求水準書を添付した文書で見積もりを依頼
- 徴収した業者見積もりの査定により予定価格を策定して、入札を公告
- 総合評価方式で落札者を決定する場合には、性能要件ごとの相対比較で点数付けを行う。
- 受注者は施工に先立ち、承認図書を作成して設計内容や工程等について発注者の承認を得る。
- 監督員による監督と検査員による竣工検査は、要求水準書と承認図書に基づいて行う。
- 【事例研究1】 新国立競技場整備事業〜仕様発注方式で失敗・破綻,性能発注方式で復活・成功
- 仕様発注方式で破綻した新国立競技場整備計画〜白紙撤回されるまでの工事費試算額の推移
- 新国立競技場整備計画が破綻した原因
- 仕様発注方式の大きなデメリットが露呈
- スペック・工事費・工期の全体最適化に失敗〜なぜ,全体最適化できなかったのか?
- 切札としたECI方式でも部分最適化を追求〜ECI方式で工区を分割した目的と弊害
- 性能発注方式で蘇った新国立競技場整備事業
- 復活・成功の鍵は,改正品確法に規定された性能発注方式
- 発注側では,全国のモデルとなる理想的な要求水準書を外部委託せずに短期間で作成
- 受注側では,総括代理人によるトップダウンでスペック・工事費・工期を全体最適化
- 新国立競技場整備事業成功の歴史的意義
- 【事例研究2】 仕様発注方式による自治体等での大失敗事例と性能発注方式による解決策
- 横浜市が仕様発注した橋は低すぎて観光船の通航に支障
- 大阪府が仕様発注した地下調節池整備に伴う地盤沈下で大阪地裁が大阪府に賠償命令,施工業者は免責
- 大阪市水道局が仕様発注した配水管工事の9割強が不適切施工
- 千葉県企業局の積算ミスで受注者との契約を解除して入札をやり直し
- 東京都が積算ミスの自己責任を転嫁して受注者に理不尽な減額要請
- 仕様発注した外環道大深度地下トンネル工事で調布市内陥没事故が発生
- 【事例研究3】 民営化を主眼とする公共事業で1者応札が頻発
- 全国の自治体の清掃工場整備運営事業〜その約4割が1者応札
- 「競争原理が働かない要求水準書」がモデルとして全国に流通
- 新潟県見附市が作成した「理想的な要求水準書」
- 見附市が作成した要求水準書の際立った特徴
- 見附市が「理想的な要求水準書」を作成できた経緯
- 「理想的な要求水準書」に基づく予定価格の策定方法とその根拠となる規定
- 要求水準書に基づく予定価格の具体的な策定方法
- 会計法とその施行令に当たる「予算決算及び会計令」における規定
- 地方自治法とその政令である地方自治法施行令における規定
- 改正品確法における規定
- 7. 性能発注方式の具体的な実践方法
- 戦後の我が国初となる性能発注方式で完遂した宮崎県警察本部ヘリコプターTVシステム整備事業
- 性能発注方式は合理的で誰でもできることを実証
- 前例のない性能発注方式で取り組むことになった経緯
- 戦後の我が国初となった性能発注方式の合理性とその波及効果〜4回の会計検査院実地検査でいずれも「適正に経理されている」旨の講評
- 整備計画書作成上のキーポイント
- 「現状の課題」の捉え方と書き方
- 「課題解決方策の概要」の捉え方と書き方
- 「課題解決により期待される効果」の捉え方と書き方
- 要求水準書作成上のキーポイント
- 発注者が実現を求める要求要件を、要求水準書に漏れなくリストアップ
- 受注者が設計と施工を行う上で必要十分な情報を、要求水準書で受注者に提供
- 発注ミスを防ぐため、要求水準書記載内容の再確認を行う上での着眼点
- 戦後の我が国初となる性能発注方式で完遂した宮崎県警察本部ヘリコプターTVシステム整備事業
◎ 質疑応答
セミナー講師
澤田雅之 氏
澤田雅之技術士事務所 所長
技術士(電気電子部門)
1953年生。1978年に京都大学(院)工学研究科修士課程を修了し,警察情報通信部門の技官として警察庁に入庁。2013年に警察大学校警察情報通信研究センター所長を退職。2015年に技術士資格(電気電子部門)を取得して,澤田雅之技術士事務所を開業。
警察では,1996年当時の九州管区警察局宮崎県情報通信部長として,「宮崎県警察本部ヘリコプターTVシステム新規整備事業」を,我が国では戦後初となる「性能発注方式」で完遂。この時に得た知見に基づき,その後に情報通信部長として勤務した茨城,宮城,福岡,愛知,神奈川の各県では,建築・土木工事を含む数百件の警察情報通信システム整備事業の全てを「性能発注方式」で完遂。
技術士事務所開業後は,警察での「性能発注方式」の実践と成功で得た知見を社会に幅広く還元していくため,国土交通省,地方自治体,民間団体等で数多の講演を実施。
また,数十年来のライフワークである「性能発注方式」を集大成した書籍【「性能発注方式」発注書制作活用実践法】が,2022年9月に(株)新技術開発センターから出版された。
セミナー受講料
43,000円(消費税込)※テキスト代を含みます。
受講料
43,000円(税込)/人