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QUESTION 質問No.73

開発テーマが増えすぎて経営を圧迫

設計・開発 技術マネジメント | 投稿日時:
創立40年社員200人の中企業でデバイス売上が収益の大半です。
20年に渡るロングセラー製品があるために、何とか黒字を確保しており、輸出比率が50%のため、最近の円安では助かっています。

この主力製品についてはブランド力があるため、主要な取引先である5社を初めとして多くの企業から、派生技術に関する共同開発案件が持ち込まれ、開発テーマが年々増えています。

主力製品はライフサイクル的に衰退期にあたるため、これらの開発テーマから新たな柱を生み出す必要があり、投資を惜しんではいけないのですが、なかなか中止できるテーマがないため、財務に大きな影響を及ぼすようになってきました。
テーマを中止した場合の担当技術者のモチベーションや処遇も頭の痛いところです。

そこで以下の点に関してアドバイス頂ければありがたいです。
(1)新規開発にかける費用の目安
(2)増えすぎたテーマを絞り込む時の考え方と選定方法
(3)中止テーマ担当技術者に対する注意点


   [これは事務局が考えた架空の(しかしありがちな)質問です]


ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

(1)新規開発にかける費用の目安
 研究開発にどの程度の経営資源を投入するかは、企業経営者の事業経営に対する考え方
(成長重視か安全重視か)、企業(または事業)年齢、業種等によって区々であり、一律に
述べることはできませんが、研究開発費の売上高比率は、全産業ベースおよび中小企業の場
合について、国の調査結果が報告されており、これが一つの目安になると思います。
 例えば、日本の全企業について、2005~2009年度の5年間を調査したデータでは、
研究開発費の売上高比率の全産業の平均値は3.4%、製造業では4.3%、電気機械の場合は
5.0%、情報通信が7.1%、医薬品が15.1%、光学機械器具等では7.8%となっています。
これに対し、中小企業について、同じ期間を調査したデータでは、製造企業全体で1.6%、
化学工業は2.3%、精密機械器具は2.9%、電気機械器具は2.9%、一般機械器具で1.3%とな
っており、全企業ベースに比べて全般的に低い数値になっています。
 ただし、ここに示された研究開発費は、研究費トータル(基礎的なものから、品質改良、
コストダウン、新商品開発等の全てを含む)であり、その中における新規開発の比率につい
ては具体的な数値がなく、全く不明です。

(2)増えすぎたテーマを絞り込む時の考え方と選定方法
 開発テーマを絞り込む場合にはまず、開発テーマを下記のような性格によって分類することが大切です。
  A.現事業の延長線上の開発(同一製品の品質・性能向上、コストダウン等)
  B.現事業の周辺事業の開発(同一製品の周辺用途への展開)
  C.現事業の周辺事業の開発(現事業への周辺製品の展開)
  D.周辺事業への周辺製品への展開
  現事業は衰退期にあるとのことですので、Aのテーマに経営資源を投入しても、例え事業の延命は図れたとしても成長や高い利益率を望むことはできません。したがって、B、C等の周辺ビジネス、さらにDのような新規ビジネスを目指した開発テーマにも一定の経営資源を投入することが事業の成長、利益率の向上にとって不可欠です。A、B、C、Dに投じる経営資源の割合をどの程度にするのかを事業戦略の立場から予め、設定しておくことが大事です。
 開発テーマの絞り込みを行う場合には、開発テーマをA、B、C、Dの区分で分類した上で、各区分内の開発テーマの優先順位付けを行い、もしある区分に分類されたテーマを全て実施するとその区分に割り当てられた開発費をオーバーしてしまうのであれば、開発費の枠の中に納まるように優先順位の低い開発テーマをカットすることになります。
 開発テーマの優先順位付けは下記のような観点を総合的に判断して実施します。
   1.市場評価
      ・製品を投入する市場は十分な規模と成長性を有しているか。
      ・製品は対象とする顧客に受け入れられるか。
   2.技術評価
      ・その製品は技術的に実現可能か。
      ・その製品は安定に、必要な品質レベル、コストレベルで生産することができ
       るか。
   3.競合他社評価
      ・その製品は競合他社の製品に対して品質、コストにおいてより優れていると
       言えるか。
      ・その製品は競合他社の特許に抵触せず、かつ競合他社を排除できる知的財産
       権に守られているか。
   4.事業・財務評価
      ・顧客が受容できる価格を設定した時、期待する利益が得られるか。
   5.事業に対する貢献度
      ・事業に対する貢献度がどの程度の大きさか(売上高、利益等)。
 絞り込みは、開発テーマの推進に際しても、適宜進めていくことが必要です。そのための手法としてステージゲートシステムが米国で開発され、今や世界の多くの企業で実践されています。
 ステージゲートシステムでは開発の初期段階から事業化までの過程を、調査、ビジネスプランの策定、開発、テストと検証、市場投入等のいくつかのステージに区分し、ステップワイズに開発を進める手法です。
  一般に、開発ステージが上がるにつれて、経営資源の必要投入量が増えることになりますので、次のステージに進む場合にはゲートと言われるチェックポイントで審査を行い、次のステージに進んでいいか、同じステージでさらに検討を進めるべきか、あるいはその段階で開発を中止すべきか、を判断します。この時に使用される判断基準は、上記の1~5をステージ毎にアレンジしたものとなります。
ゲートにおけるチェックに際しては、常に開発テーマ全体を見渡し、A、B、C、D間の経営資源配布割合の見直し、過去に中止の判断をしたテーマの再評価等を行って、より適切な戦略展開ができるように心がけることが大事です。

(3)中止テーマ担当技術者に対する注意点
 上述の「開発テーマの絞り込みの考え方」について、日ごろから十分に開発技術者に説明し、理解して頂いておくことが大切です。その上で、テーマを中止する場合には、上記の考え方に基づいて適切な判断が行われるように務め、あるテーマが中止と判断された場合には、責任者が担当技術者と十分な話し合いを行い、担当技術者に結論を理解してもらうことが必要です。
その際、仮に担当技術者の努力不足が中止の判断の主な原因であるとすれば、その点について、担当技術者にしっかりと指摘を行うことが担当技術者の今後の成長を図る上で大事です。一方、担当技術者本人に起因しない事項が中止判断の大きな理由であったのであれば、そのことを担当技術者に説明し、さらには、事情が変化すれば、再びチャレンジの機会があるかも知れないことを説明しておくことが大事です。
 なお、担当していたテーマが中止になった技術者については、他のテーマへのチャレンジを促し、速やかに新たな課題に挑戦できるよう環境条件を整えていくことが、担当者本人にとっても、企業にとっても大切なことです。
 このような配慮をしっかり実施すれば、担当技術者のモチベーションの低下を最小限度に悔い止めることができるでしょう。




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

 新製品開発、キャリアカウンセリング、補助金の審査経験などから、簡潔にアドバイスします。多くのシステムが進化するとき、システムの「良さ」の尺度を時間の関数としてプロットすると、S字型カーブを描くと言われています。製品ライフサイクル的には、導入期、成長期、成熟期、衰退期に分けられます。御社の主力製品は、この衰退期にあたるため、「コストの最小化」が最大の課題ではないでしょうか。もしかすると、企業規模から推察して、開発資金の捻出が厳しくなってしまう企業も多いようです。そこで、資金的余裕がどれくらいあるのか、人的リソースのどれくらいが該当するのか、現段階では不明ですが、御社のケースによりベターと考えられる判断基準でアドバイスしたいと思います。

 具体例を交えた個別の留意点は次のようになります。
(1) 新規開発にかける費用の目安
 開発費用は、業種やテーマによって変動するため、金額ベースでは一概にいくらとは言えるものではありません。例えば、数百件程度の補助金審査経験から、御社の規模の投資費用を推測すると、1000万円~1億円位の幅が考えられます。ただ、経営指標の比率で考えれば妥当な線は出ます。財務的には、経営を圧迫させないことが重要です。一般的には、キャッシュフローの許す範囲がベストとされています。つまり、純利益+減価償却費の範囲内となります。もし、自社技術が不足するときには、地域公設機関や大学の技術を活用すること、資金不足の場合には、公的補助金を活用することがよりベターな選択肢となります。例えば、平成25年度から創設された「ものづくり補助金(1000万円・補助率2/3)」は約40%が採択されるハードルの低いものです。さらに、付加価値の高いテーマに適したものであれば、高度化事業で総額約1億円、NEDOで総額5億円まで補助されます。

(2) 増えすぎたテーマを絞り込む時の考え方と選定方法
 具体的手順は、まず、自社技術をS(強み)W(弱み)O(機会)T(脅威)分析し、何をしたいかを明確化することを薦めます。もし、新製品開発テーマの抽出が不足している場合には、TRIZ等の創造性開発手法等も活用します。例えば、次のように2段階でテーマを絞り込めば論理的に判断できると思います。

A: 多数の新製品(新事業)候補を数テーマまで絞り込む場合
 市場の魅力度と自社の強みの2つの切り口の各比較項目を5段階レベルでスコア付けして総合評価する方法があります。具体的には、市場の魅力度には、市場サイズ、成長性、収益性、対競合性などが入ります。自社の強みには、技術力、設備、販売チャネル、新規性、波及効果などが入ります。

B: 数テーマの新製品(新事業)候補を最終案まで絞り込む場合
 現段階では、KT(ケプナー・トリゴー)法の決定分析(DA)がよりベターな方法とされています。まず、何を目標にどんな条件で目標を達成しようとしているかを明確化させることが重要です。比較条件をMUSTとWANT条件で区別し、さらに目標値の重み(ウェイト)付けを行い、競争に勝てる案を選択します。評価項目として、技術的QCD項目、マーケティングの4P(製品、価格、チャネル、プロモーション)、対環境性、メンテナンス性、サービス性、安全性などから、10項目程度比較項目を絞り込みます。各比較項目には、重み(ウェイト)を設定し、各々のスコアを掛け合わせます。それらを合計しスコア合計と、そこからリスク分析などと併せて最終案を決定します。なお、KT法に関しては、筆者が「ものづくり.COM」上に詳細な記事を掲載していますので参照してください。

(3) 中止テーマ担当技術者に対する注意点
 開発テーマが中止となった多くの研究・技術者のカウンセリングを実施してきた経験から言えば、当事者たちには、非常に深刻な出来事なのです。中には、うつ病などの症状を誘発してしまうこともリスクマネジメントとして考えておく必要があります。これにより、現実問題として、異動、職種転換、転職などいくつかの選択肢が発生してきます。御社ぐらいの規模なら、できるだけ外部機関と連携して、カウンセリングを実施すべきと考えます。自分がどうしたいのか(どうなりたいのか)、何ができるのか(強みは何か)、何が課題や障害なのかなどを傾聴します。できるだけ自主的判断を促すことがポイントとなります。


 回答者:ぷろえんじにあ代表 粕谷茂







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