海外進出先での従業員ロイヤリティを考える-7人のフィリピン料理人の事例

 アジア各国に工場を進出し、従業員はなんとか集めたものの早期退職者が相次ぎ、操業を継続するのに苦労している企業が数多く存在します。現地工場で従業員の退職率を低く保ち、しかも現地採用者によって事業が発展できたらどんなに嬉しい事でしょう。
 今回は製造業ではありませんが、フィリピンで成功した経営者の事例を紹介します。現地従業員の組織へのロイヤリティについて、考えさせられます。

 

 マニラにドレミ(仮名)という日本食レストランがあります。営業開始以来、20年以上経ちますが、いまでもこのお店は盛況です。この日本人の経営者から聞いた実話です。

 開業してしばらくの間、佐藤(仮名)社長自らが厨房に入り、7人のフィリピン人を手取り足取りで、調理の指導をしていました。その努力が実り、ドレミはマニラでも1、2位を争う日本食レストランへと成長します。ところが数年後のある日、このうちの1人が若くして病気で帰らぬ人となるのです。

 佐藤社長は、彼を創業当時から苦労を共にした仲間と捉えていました。そこで彼への感謝の気持ちも込めて、彼亡き後も彼の奥さんへサラリーを毎月払うことにしました。これは今でも続いています。「ほかの従業員へは内緒だよ」と話していましたが、おそらく他の従業員達へは知れ渡っていることでしょう。

 ドレミは、それほど高額なサラリーを従業員へ支給していません。従業員がその気になれば転職先は少なくありません。今やマニラには日本食レストランが増え、ドレミよりも高額なサラリーを払うから、とヘッドハンティングもあるでしょう。しかし開業当時からの6人の従業員は今でも...

ドレミの厨房に入っています。

 近年佐藤社長は、現地人向けの味付けで価格も抑えた日本食レストランチェーンを全国展開するまでにビジネスを拡大していますが、その中核となっているのが、この6人の現地人スタッフです。

 彼らの「ここにいれば、自分に何かあってもきっと家族を守ってくれる」との思いが、組織への強い忠誠心(ロイヤリティ)へと繋がっているのです。

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