人はタイミングよく誉めよ -3つの例を添えて-

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 私はクリーン化指導で多くの現場に立ち会ってきましたが、どんな業種、職種でも、人財育成はその会社、企業にとっては非常に大切なことです。故に日本では、昔からこの“人を育てる”ことを大切にする文化、風土がありました。今回はこの人材育成の中で、“誉めて育てる”ということについて、私が感じていること、考えていることを述べてみます。

 旧労働省が指導した“仕事の教え方”については、山本五十六元帥の“やって見せ、言って聞かせて、させて見せて、誉めてやらねば人は動かじ”という言葉が基本になっています。ここでは“誉める”という言葉が最後に出てきます。これは、仕事をはじめて覚える人が対象であり、また、仕事を教える前に、覚えたい気持ちにさせるとか、気持ちを楽にさせる(緊張感を和らげる)という事前準備がされているので、“聞く耳”はすでに持ち合わせています。ここでの“誉める”には、覚えてもらおうとする作業の習熟度を高める狙いがあります。

 これとは話が変わりますが、一般に“部下は誉めて育てよ”と良く言われます。いろいろな会社、企業を訪問した折りに、管理職の方と人財育成について話をしても、「現場の監督者には、日頃から自分の部下を誉めて育てなさいと指導しています」との返事が返ってきます。しかし、その言葉だけが伝言ゲームのように一人歩きし、具体的にどう誉めれば良いかが指導されていないケースも多々あるようです。私は、部下を誉めるポイントは2つあると考えています。一つは、タイミングよく誉める。もう一つは、誉める順番があるということです。

 

《タイミング良く誉める》

 これは、良いことをやっていると気づいたら、すぐその場で誉めてやるということです。

(1)私の過去の失敗例

 昔、半導体の現場にいた時、良いことをやっているオペレータに気づいたことがありました。そこで誉めようと思ったのですが、その場は思い留まって、後で誉めることにしました。(やるべきことを後回しにしてしまったということです) ところがその後忙しく飛び歩いているうちにそのことを忘れてしまいました。暫くして、手が空いた時にふっと思い出し、誉めてやろうと思ったところ、そのオペレータは勤務時間が終わり帰宅してしまいました。この時は運が悪く、交代勤務の最終日、これから3日、4日しないと出勤してこないということになってしまいました。数日経って、「先日あなたは良いことをやっていましたね」、と誉めても、本人も忘れてしまっているのできょとんとしていました。やはり、その場で、すぐ誉めるということが大切ですね。

(2)パチンコ屋の例

 昔の若い人達は、パチンコ屋に良く通うという人が多かったです。これには2つの原因があると感じました。一つは、先輩が儲かった時の話しかしないので、いつも儲かっているように思い込む。もう一つは、一生懸命努力すると、“チン、ジャラジャラ”と誉めてくれること。 後述の例は、努力の結果、その場で直ぐ誉めてくれるということになります。これは毎回あるわけではありませんが、前に誉めてもらったことが頭の中に残っていて、もしかするとまた誉めてくれるかも知れないと思い、ついついまた足が向いてしまうという人間の心理をうまく活用しているわけです。 会社で誉めてもらうことはほとんどないが、こんなことで誉められて段々深入りしてしまう。 これは、...

 私はクリーン化指導で多くの現場に立ち会ってきましたが、どんな業種、職種でも、人財育成はその会社、企業にとっては非常に大切なことです。故に日本では、昔からこの“人を育てる”ことを大切にする文化、風土がありました。今回はこの人材育成の中で、“誉めて育てる”ということについて、私が感じていること、考えていることを述べてみます。

 旧労働省が指導した“仕事の教え方”については、山本五十六元帥の“やって見せ、言って聞かせて、させて見せて、誉めてやらねば人は動かじ”という言葉が基本になっています。ここでは“誉める”という言葉が最後に出てきます。これは、仕事をはじめて覚える人が対象であり、また、仕事を教える前に、覚えたい気持ちにさせるとか、気持ちを楽にさせる(緊張感を和らげる)という事前準備がされているので、“聞く耳”はすでに持ち合わせています。ここでの“誉める”には、覚えてもらおうとする作業の習熟度を高める狙いがあります。

 これとは話が変わりますが、一般に“部下は誉めて育てよ”と良く言われます。いろいろな会社、企業を訪問した折りに、管理職の方と人財育成について話をしても、「現場の監督者には、日頃から自分の部下を誉めて育てなさいと指導しています」との返事が返ってきます。しかし、その言葉だけが伝言ゲームのように一人歩きし、具体的にどう誉めれば良いかが指導されていないケースも多々あるようです。私は、部下を誉めるポイントは2つあると考えています。一つは、タイミングよく誉める。もう一つは、誉める順番があるということです。

 

《タイミング良く誉める》

 これは、良いことをやっていると気づいたら、すぐその場で誉めてやるということです。

(1)私の過去の失敗例

 昔、半導体の現場にいた時、良いことをやっているオペレータに気づいたことがありました。そこで誉めようと思ったのですが、その場は思い留まって、後で誉めることにしました。(やるべきことを後回しにしてしまったということです) ところがその後忙しく飛び歩いているうちにそのことを忘れてしまいました。暫くして、手が空いた時にふっと思い出し、誉めてやろうと思ったところ、そのオペレータは勤務時間が終わり帰宅してしまいました。この時は運が悪く、交代勤務の最終日、これから3日、4日しないと出勤してこないということになってしまいました。数日経って、「先日あなたは良いことをやっていましたね」、と誉めても、本人も忘れてしまっているのできょとんとしていました。やはり、その場で、すぐ誉めるということが大切ですね。

(2)パチンコ屋の例

 昔の若い人達は、パチンコ屋に良く通うという人が多かったです。これには2つの原因があると感じました。一つは、先輩が儲かった時の話しかしないので、いつも儲かっているように思い込む。もう一つは、一生懸命努力すると、“チン、ジャラジャラ”と誉めてくれること。 後述の例は、努力の結果、その場で直ぐ誉めてくれるということになります。これは毎回あるわけではありませんが、前に誉めてもらったことが頭の中に残っていて、もしかするとまた誉めてくれるかも知れないと思い、ついついまた足が向いてしまうという人間の心理をうまく活用しているわけです。 会社で誉めてもらうことはほとんどないが、こんなことで誉められて段々深入りしてしまう。 これは、心理学的にも解明されていると言う話を聞いたことがあります。

(3)陸上競技の例

 私は、陸上競技を少々やります。時々大会にも出かけます。一生懸命競技をして、その結果入賞するとその場で表彰してくれます。 一生懸命努力して、時には倒れるかと思うほど苦しんだり頑張ったりした後、その場で表彰してくれる、誉めてくれるのですから、これには感動します。やったーという気持ちになります。

 それがもし1週間も2週間も経ってから、メダルや賞状が送られてきたらどうでしょうか。気持ちはもう現実に戻っていますし、な~んだ入賞してたのか、程度で終わってしまいます。そこには感動がありません。すぐに誉めることの大切さ、それは感動を与えることなんですね。

 もう一つのポイント“誉める順番を考える”については、次回にお話いたします。

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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