COP21 パリ協定: 新環境経営 (その49)

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 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。その44からCOP21パリ協定ついて紹介しています。今回は温室ガス「ゼロ」実現のための長期的視点についてです。
 

1. 温室ガス「ゼロ」実現のためにはイノベーションが必要

 パリ協定には「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する」と明記されました。人為的な吸収の大きな柱の一つとされているのが、火力発電所や製鉄所から出る二酸化炭素を回収して地下に埋める技術「CCS」。CCSと、大気中の二酸化炭素を吸収しながら育った植物を燃料にしたバイオマス発電を組み合わせて「バイオCCS」にすれば、排出を差し引き「マイナス」にできると期待されますが実現は簡単ではありません。
 
 バイオCCSなど二酸化炭素除去技術の影響を分析した国際共同研究の成果発表もありました。これには英アバディーン大や日本の国立環境研究所などの科学者約40人が参加されているようです。結論は「重大な制約があり、実施可能な規模は限定的になる可能性が高い」でした。
 

2. 人工光合成プロジェクト

 10年計画で進める人工光合成プロジェクトでは3つの研究開発分野があります。1つは光触媒による水素と酸素の製造です。2つ目は水素と酸素が混ざり合った状態のガスから水素だけを回収する分離膜の開発です。3つ目が水素と二酸化炭素を使って化学品の原料になるオレフィンを製造するものです。
  
 人工光合成の一連のプロセスを確立できると、火力発電所と組み合わせて二酸化炭素排出量の削減につなげることができます。火力発電に伴って発生する二酸化炭素を分離・回収して、化学品やバイオ燃料の原料を製造する取り組みが進んでいます。火力発電の比率が大きい日本では、温暖化対策のために二酸化炭素を回収して利用できるメリットは大きいでしょう。
 

3. イノベーションには多様な意味がある

 日本政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」には、バイオCCSのような技術が「革新的技術」として盛り込まれるようです。一方、アメリカは、クリーンエネルギーのコスト...
CSR 
 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。その44からCOP21パリ協定ついて紹介しています。今回は温室ガス「ゼロ」実現のための長期的視点についてです。
 

1. 温室ガス「ゼロ」実現のためにはイノベーションが必要

 パリ協定には「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する」と明記されました。人為的な吸収の大きな柱の一つとされているのが、火力発電所や製鉄所から出る二酸化炭素を回収して地下に埋める技術「CCS」。CCSと、大気中の二酸化炭素を吸収しながら育った植物を燃料にしたバイオマス発電を組み合わせて「バイオCCS」にすれば、排出を差し引き「マイナス」にできると期待されますが実現は簡単ではありません。
 
 バイオCCSなど二酸化炭素除去技術の影響を分析した国際共同研究の成果発表もありました。これには英アバディーン大や日本の国立環境研究所などの科学者約40人が参加されているようです。結論は「重大な制約があり、実施可能な規模は限定的になる可能性が高い」でした。
 

2. 人工光合成プロジェクト

 10年計画で進める人工光合成プロジェクトでは3つの研究開発分野があります。1つは光触媒による水素と酸素の製造です。2つ目は水素と酸素が混ざり合った状態のガスから水素だけを回収する分離膜の開発です。3つ目が水素と二酸化炭素を使って化学品の原料になるオレフィンを製造するものです。
  
 人工光合成の一連のプロセスを確立できると、火力発電所と組み合わせて二酸化炭素排出量の削減につなげることができます。火力発電に伴って発生する二酸化炭素を分離・回収して、化学品やバイオ燃料の原料を製造する取り組みが進んでいます。火力発電の比率が大きい日本では、温暖化対策のために二酸化炭素を回収して利用できるメリットは大きいでしょう。
 

3. イノベーションには多様な意味がある

 日本政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」には、バイオCCSのような技術が「革新的技術」として盛り込まれるようです。一方、アメリカは、クリーンエネルギーのコストを今後も引き下げていくために、イノベーション(技術革新)と資金が必要の立場でした。
 
 イノベーションを、まだ存在しない新技術の開発と位置づける日本と、今ある技術のコストダウンや普及を含める米国の違いがあります。日本学術会議の大西隆会長は、環境省の会合で「工学系などが新技術を開発することと捉えがちだが、イノベーションには多様な意味がある」と指摘。技術を社会のニーズと結びつけながら普及させる政策など、文系的なイノベーションも重要です。
 
 次回は、パリ協定で実現する未来についてを解説します。
  

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この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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