モチベーション向上の取組とは

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SCM 

1. モチベーション向上: マズローの定義に学ぶ

 物流現場は人による作業に頼るところが大きい傾向にあります。ということは従業員のモチベーションが生産性や品質にも表れる特性を持つともいえます。各社この点について悩まれているのではないでしょうか。モノの扱いには慣れていても、人のマネジメントが苦手という物流管理監督者は大勢います。そこで従業員のモチベーション向上について少し考えてみたいと思います。皆さんだったらどのような状態であればモチベーションは向上しますでしょうか。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、マズローは欲求について以下の通り定義しています。
 
 第一階層は「生理的欲求」です。これは、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)のことを指します。第一階層の欲求がある程度満たされると次の階層「安全欲求」を求めるようになります。ここでは危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれます。第三階層は「社会的欲求(帰属欲求)」です。つまり、人は集団に属したり、仲間が欲しくなったりするようになります。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなると言われます。
 
 「社会的欲求」の次に芽生える欲求は、第四階層である「尊厳欲求(承認欲求)」です。この欲求は他者から認められたい、尊敬されたいという内容です。そして最後の欲求が「自己実現欲求」です。これは、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいといった内容です。いかがでしょうか。このマズローの欲求5段階説は有名ですし、内容を見るとなるほどと納得するものでもあります。では、これを参考にしながら物流現場のモチベーション向上について考えてみましょう。特に第四階層と第五階層は重要です。
 
 誰しも他人から認められたい、尊敬されたいと考えるものです。そこで、職場の中にこのような状況が発生する環境を作ってみてはいかがかと思います。モチベーションが向上するとともに、それが会社利益に直接的・間接的につながることが理想です。ではそのために何をすれば良いでしょうか。
 

2. モチベーション向上: 表彰と権限委譲

 従業員の仕事の結果が評価される仕組みはどうでしょう。出来高は会社として管理しなければならない項目です。そうであるならば出来高を管理しつつ、目標よりも上回った場合にそれが皆にわかるとともに、評価につながるしかけはあってもよいかもしれません。ほぼ標準時間通りにできる人が少なければ、それができている人が誰かわかるように現場の管理ボードに掲示します。先月の現場での「チャンピオン」を決めて表彰する手もあると思います。
 
 似たような活動で「改善提案件数」が挙げられます。筆者も見たことがありますが、提案件数が多い人やその効果が大きい人について「改善王」として評価している会社がありました。まずはこの程度のことから始めてはいかがでしょうか。決して難しいことではありませ。明日からでも始められると思います。
 
 小集団活動もよい取り組みではないでしょうか。QCサークルと言って、グループで問題解決に当たらせる手法があります。これは会社の実益にもつながる優れものアイテムです。誤出荷を行ってしまった職場で、それを撲滅する活動に取り組んだとします。そして結果が明らかに良くなっていれば、そのグループを表彰します。グループ員のモチベーションが上がることは確実だと思います。ではもう一段上がった仕掛けについて考えてみましょう。それは「権限移譲」です。日本では多数の階層を経ないと物事が決まらない傾向にあります。これは決して効率的ではありません。
 
 筆者もかつて数百円のものを購入する際にも承認を求められたことがあります。これくらいの金額まで管理職の承認を求める会社のあり方には疑問を持ったことがあります。たとえば少額の購入行為に関してはグループ長レベルに権限移譲し、彼ら、彼女らに任せる方法があります。任せられればそこに責任が発生します。そして仕事を任せられているという気持ちも同時に発生するのです。ですから仕事の過程でできるだけ従業員に権限を与えることです。責任も発生しますので、それも同様に負ってもらうのです。
 

3. モチベーション向上: リーダーの立場にさせる

 人は任せられると意欲がわくものです。ですから「権限移譲」は効果があります。会社がどこまで従業員に権限移譲できるかどうかがポイントになります。少額の購入品などは権限委譲してもよい例です。他には何が考えられますでしょうか。例えばパート社員の評価が挙げられます。一般的に倉庫にはセンター長という管理職がおり、その人が配下のパート社員の評価を実施しています。しかし、ここでセンター長の下にいるチームリーダーが評価をするということはいかがでしょうか。一番パート社員のことを見ている人はチームリーダーです。そうだとすればその人が評価することは合理的だと思います。もちろん人事評価は大変重要な業務ですから、評価スキルを身につけさせることは必要です。
 
 重要業務であればあるほどそれを任せられた側は責任感を感じ、人によ...
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1. モチベーション向上: マズローの定義に学ぶ

 物流現場は人による作業に頼るところが大きい傾向にあります。ということは従業員のモチベーションが生産性や品質にも表れる特性を持つともいえます。各社この点について悩まれているのではないでしょうか。モノの扱いには慣れていても、人のマネジメントが苦手という物流管理監督者は大勢います。そこで従業員のモチベーション向上について少し考えてみたいと思います。皆さんだったらどのような状態であればモチベーションは向上しますでしょうか。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、マズローは欲求について以下の通り定義しています。
 
 第一階層は「生理的欲求」です。これは、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)のことを指します。第一階層の欲求がある程度満たされると次の階層「安全欲求」を求めるようになります。ここでは危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれます。第三階層は「社会的欲求(帰属欲求)」です。つまり、人は集団に属したり、仲間が欲しくなったりするようになります。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなると言われます。
 
 「社会的欲求」の次に芽生える欲求は、第四階層である「尊厳欲求(承認欲求)」です。この欲求は他者から認められたい、尊敬されたいという内容です。そして最後の欲求が「自己実現欲求」です。これは、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいといった内容です。いかがでしょうか。このマズローの欲求5段階説は有名ですし、内容を見るとなるほどと納得するものでもあります。では、これを参考にしながら物流現場のモチベーション向上について考えてみましょう。特に第四階層と第五階層は重要です。
 
 誰しも他人から認められたい、尊敬されたいと考えるものです。そこで、職場の中にこのような状況が発生する環境を作ってみてはいかがかと思います。モチベーションが向上するとともに、それが会社利益に直接的・間接的につながることが理想です。ではそのために何をすれば良いでしょうか。
 

2. モチベーション向上: 表彰と権限委譲

 従業員の仕事の結果が評価される仕組みはどうでしょう。出来高は会社として管理しなければならない項目です。そうであるならば出来高を管理しつつ、目標よりも上回った場合にそれが皆にわかるとともに、評価につながるしかけはあってもよいかもしれません。ほぼ標準時間通りにできる人が少なければ、それができている人が誰かわかるように現場の管理ボードに掲示します。先月の現場での「チャンピオン」を決めて表彰する手もあると思います。
 
 似たような活動で「改善提案件数」が挙げられます。筆者も見たことがありますが、提案件数が多い人やその効果が大きい人について「改善王」として評価している会社がありました。まずはこの程度のことから始めてはいかがでしょうか。決して難しいことではありませ。明日からでも始められると思います。
 
 小集団活動もよい取り組みではないでしょうか。QCサークルと言って、グループで問題解決に当たらせる手法があります。これは会社の実益にもつながる優れものアイテムです。誤出荷を行ってしまった職場で、それを撲滅する活動に取り組んだとします。そして結果が明らかに良くなっていれば、そのグループを表彰します。グループ員のモチベーションが上がることは確実だと思います。ではもう一段上がった仕掛けについて考えてみましょう。それは「権限移譲」です。日本では多数の階層を経ないと物事が決まらない傾向にあります。これは決して効率的ではありません。
 
 筆者もかつて数百円のものを購入する際にも承認を求められたことがあります。これくらいの金額まで管理職の承認を求める会社のあり方には疑問を持ったことがあります。たとえば少額の購入行為に関してはグループ長レベルに権限移譲し、彼ら、彼女らに任せる方法があります。任せられればそこに責任が発生します。そして仕事を任せられているという気持ちも同時に発生するのです。ですから仕事の過程でできるだけ従業員に権限を与えることです。責任も発生しますので、それも同様に負ってもらうのです。
 

3. モチベーション向上: リーダーの立場にさせる

 人は任せられると意欲がわくものです。ですから「権限移譲」は効果があります。会社がどこまで従業員に権限移譲できるかどうかがポイントになります。少額の購入品などは権限委譲してもよい例です。他には何が考えられますでしょうか。例えばパート社員の評価が挙げられます。一般的に倉庫にはセンター長という管理職がおり、その人が配下のパート社員の評価を実施しています。しかし、ここでセンター長の下にいるチームリーダーが評価をするということはいかがでしょうか。一番パート社員のことを見ている人はチームリーダーです。そうだとすればその人が評価することは合理的だと思います。もちろん人事評価は大変重要な業務ですから、評価スキルを身につけさせることは必要です。
 
 重要業務であればあるほどそれを任せられた側は責任感を感じ、人によってモチベーション向上につながると思われます。特に従業員が女性の場合、モチベーション向上のためにはいろいろと手段はあると思います。たとえばチームリーダーに優先的に昇進させるという方法です。優先的にと書きましたが、今の男性社会である物流現場が異常だと考えた方がよいのかもしれません。今でも男性を優先的に昇進させているのではないでしょうか。パートリーダーというポジションを作ることも良いでしょう。パートさんのチームを作り、そこに一人リーダーを付けるということです。
 
 チームリーダーにしろパートリーダーにしろ人の上に立つということは責任感が生じるとともに、権限を委譲されたことによるモチベーション向上につながるでしょう。もしかしたら給料が上がればモチベーションが上がるという人もいるかもしれません。これは少々注意が必要です。本来仕事に見合った給与になっていないのであれば検討の余地はあるかもしれません。しかし単純に今の給与に不満を持っている人もいます。仕事の割に過分な給与となる場合はその意見は取り入れる必要はありません。モチベーション向上とは別の課題になります。
 
 いかがでしょうか。モチベーション向上はちょっとした工夫で可能となります。固定観念にとらわれずに取り組むことが重要です。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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