クリーン化活動を定着させよう(その4)

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 このテーマは4回に分けて連載しています。今回が最終回です。尚、最下部に、連載記事へのリンクを貼りますので、是非、通読して下さい。
 

1.TOPダウンとボトムアップの融合

 クリーン化クリーン化とは、基本を大切にして地道にコツコツと活動を継続して欲しいのです。継続することで自社、自工場のクリーン化活動として、オリジナルなノウハウが蓄積されます。他社の真似事では自社の思いがなく継続は難しいでしょう。オリジナルというのは、国民性や県民性、その土地の風土、会社の方針など様々な要因から、独特のカラーが出て来るということです。こういうものを構築していくには、単に少数のクリーン化担当や作業者だけでは到底成しえません。経営層の旗振り、そして管理監督者が理解して支援するからこそできるのです。
 
 どうしても上層部が本気にならないと上手く行きません。号令だけでなく、自ら現場に入ってやってみることで、従業員との距離も近づき、様々な情報が得られます。加えて、5Sや三現主義の観点で現場を見れば、自社の強み弱みが把握できるでしょう。そして基盤強化のためにやるべきことが見えてくると思います。
 
 現場で従業員と一緒に不具合を見つけたり共感することで、経営層と現場が一体化し、指示、命令もうまく伝わり従業員の生の声も聴くことが出来ます。つまりTOPダウンとボトムアップの融合です。
 

2.真似事ではできない

 大手企業では改善活動が活発です。現場レベルでは小さな改善が積み重ねられています。日々の改善を継続することで現場の基盤や体質が強化されてきました。生産性の向上面では、1秒、いや0.5秒をどうするかというレベルの改善の積み重ねが地道にされています。小さなことも大切に積み重ねているのです。
 
 トヨタの例では改善に関する本も出版されています。私が最初に思ったのは、“自社のノウハウを公開してしまってよいのか”という心配でした。しかし色々な会社を指導訪問すると、トヨタの改善の本も買って読みましたと言う話も良く聞きます。しかし読んだだけで終わるのです。そしてその時から評論家になってしまう場合もあります。その中の良いと思うことをすぐやらせてみたり、口だけで指導しようとする評論家です。
 
 本当に良いと思ったらまず自分がやってみて、また継続してみてその本当の良さが理解できれば、言葉でも十分伝わる力があると思います。でも本気でやってみるということまでには至らないのです。出版した本でノウハウを公開しても恐らく真似ができないだろうとの推測があるからノウハウを公開してしまっているのでしょう。
 
 これは会社内の風土や人財育成の継続の中から生まれてきたことです。その背景がないのに真似だけしても長続きしないということです。自分たちがやっているオリジナルなものは自社や自分の現場の思いの入った活動ですから長続きするんです。
 
 私も定年後は時間があるので、自宅でのんびりTVを見ることがあります。こんな生活ですから運動不足になってしまいます。TV体操も見ることがありますが、それを見て運動したような気がしてしまいます。そして自分がやってみたわけではないのに、家族にこんなことをするといいんだよなどと受け売りをしています。TVを見て、なるほどと思って、それだけで良いことだと思い込むんです。単に受け売りですから、聞いた家族もうんうんというだけでその言葉にも重さを感じないのです。これに似ています。自分たちで作り上げていく過程での体験や経験、苦労したことには形だけでなく、思いや心も存在します。
 

3.心の大切さ

 ここからは、心の部分を大切にしている方の一例を紹介します。羽田空港は“世界一綺麗な空港”として某TV局で放送されましたが、中国瀋陽出身の方が主人公です。その方の清掃とその過程で悟ったこと、心の大切さについて紹介されていました。以下は箇条書きで断片的ですが、心に触れる部分があります。 番組では世界一綺麗な羽田空港、そこには日本一の清掃員がいる。日本ビルクリーニング選手権でも優勝、という紹介から始まっています。その人の言葉です。
 
・自分でやってみたからこその哲学があると悟った。
・清掃はきりが無い。最後はハートで磨き上げる。簡単には妥協しないということです。
・うがい場所は使わなくても汚れる。うがいの汚れだけでなく、空気中の埃や人の脂などが自然に付着する。それに対応したクリーニングをする必要がある。
・綺麗になればそれで良いのか自問する。傷がついていたら仕方ない。そこにまた汚れが付着するからだ。
・自らも“清掃の職人であれ”と言い聞かせながら磨き上げる。
・目に見えない部分こそ清掃をすることが大切である。
・ただやれば良いのではなく、心配りが大切。
・優しさで清掃し、心を込めれば色々なことに気が付く。
・世界一綺麗な空港ターミナルにするには(自分の役割は)清掃を極めること。もっと心を込めなさい。 この指導をしてくれた上司から一度も誉めてもらったことはない。認められたことはない。日本ビル選 手権で優勝した時に、「優勝することは分かっていたよ」と言うのがたった一度誉め...
 このテーマは4回に分けて連載しています。今回が最終回です。尚、最下部に、連載記事へのリンクを貼りますので、是非、通読して下さい。
 

1.TOPダウンとボトムアップの融合

 クリーン化クリーン化とは、基本を大切にして地道にコツコツと活動を継続して欲しいのです。継続することで自社、自工場のクリーン化活動として、オリジナルなノウハウが蓄積されます。他社の真似事では自社の思いがなく継続は難しいでしょう。オリジナルというのは、国民性や県民性、その土地の風土、会社の方針など様々な要因から、独特のカラーが出て来るということです。こういうものを構築していくには、単に少数のクリーン化担当や作業者だけでは到底成しえません。経営層の旗振り、そして管理監督者が理解して支援するからこそできるのです。
 
 どうしても上層部が本気にならないと上手く行きません。号令だけでなく、自ら現場に入ってやってみることで、従業員との距離も近づき、様々な情報が得られます。加えて、5Sや三現主義の観点で現場を見れば、自社の強み弱みが把握できるでしょう。そして基盤強化のためにやるべきことが見えてくると思います。
 
 現場で従業員と一緒に不具合を見つけたり共感することで、経営層と現場が一体化し、指示、命令もうまく伝わり従業員の生の声も聴くことが出来ます。つまりTOPダウンとボトムアップの融合です。
 

2.真似事ではできない

 大手企業では改善活動が活発です。現場レベルでは小さな改善が積み重ねられています。日々の改善を継続することで現場の基盤や体質が強化されてきました。生産性の向上面では、1秒、いや0.5秒をどうするかというレベルの改善の積み重ねが地道にされています。小さなことも大切に積み重ねているのです。
 
 トヨタの例では改善に関する本も出版されています。私が最初に思ったのは、“自社のノウハウを公開してしまってよいのか”という心配でした。しかし色々な会社を指導訪問すると、トヨタの改善の本も買って読みましたと言う話も良く聞きます。しかし読んだだけで終わるのです。そしてその時から評論家になってしまう場合もあります。その中の良いと思うことをすぐやらせてみたり、口だけで指導しようとする評論家です。
 
 本当に良いと思ったらまず自分がやってみて、また継続してみてその本当の良さが理解できれば、言葉でも十分伝わる力があると思います。でも本気でやってみるということまでには至らないのです。出版した本でノウハウを公開しても恐らく真似ができないだろうとの推測があるからノウハウを公開してしまっているのでしょう。
 
 これは会社内の風土や人財育成の継続の中から生まれてきたことです。その背景がないのに真似だけしても長続きしないということです。自分たちがやっているオリジナルなものは自社や自分の現場の思いの入った活動ですから長続きするんです。
 
 私も定年後は時間があるので、自宅でのんびりTVを見ることがあります。こんな生活ですから運動不足になってしまいます。TV体操も見ることがありますが、それを見て運動したような気がしてしまいます。そして自分がやってみたわけではないのに、家族にこんなことをするといいんだよなどと受け売りをしています。TVを見て、なるほどと思って、それだけで良いことだと思い込むんです。単に受け売りですから、聞いた家族もうんうんというだけでその言葉にも重さを感じないのです。これに似ています。自分たちで作り上げていく過程での体験や経験、苦労したことには形だけでなく、思いや心も存在します。
 

3.心の大切さ

 ここからは、心の部分を大切にしている方の一例を紹介します。羽田空港は“世界一綺麗な空港”として某TV局で放送されましたが、中国瀋陽出身の方が主人公です。その方の清掃とその過程で悟ったこと、心の大切さについて紹介されていました。以下は箇条書きで断片的ですが、心に触れる部分があります。 番組では世界一綺麗な羽田空港、そこには日本一の清掃員がいる。日本ビルクリーニング選手権でも優勝、という紹介から始まっています。その人の言葉です。
 
・自分でやってみたからこその哲学があると悟った。
・清掃はきりが無い。最後はハートで磨き上げる。簡単には妥協しないということです。
・うがい場所は使わなくても汚れる。うがいの汚れだけでなく、空気中の埃や人の脂などが自然に付着する。それに対応したクリーニングをする必要がある。
・綺麗になればそれで良いのか自問する。傷がついていたら仕方ない。そこにまた汚れが付着するからだ。
・自らも“清掃の職人であれ”と言い聞かせながら磨き上げる。
・目に見えない部分こそ清掃をすることが大切である。
・ただやれば良いのではなく、心配りが大切。
・優しさで清掃し、心を込めれば色々なことに気が付く。
・世界一綺麗な空港ターミナルにするには(自分の役割は)清掃を極めること。もっと心を込めなさい。 この指導をしてくれた上司から一度も誉めてもらったことはない。認められたことはない。日本ビル選 手権で優勝した時に、「優勝することは分かっていたよ」と言うのがたった一度誉められたこと。
・指導者の言葉、それを受け入れる心に余裕が無いと良い仕事(清掃)は出来ない。技術だけでなく、その場を思いやるやり方。
・心を込めて清掃すると、利用者からも、喜んでもらえる。清掃こそ私の居場所である。
・現場は自分の家と思って清掃する。
・誰がやったかではなく、自分が誇りを持ってやる。それでいい。
・プロフェッショナルとは、目標を持って、日々行動し、評価する。
 
 たかが掃除とひとことで言ってしまうとそれで終わりですが、そこにはやったからこその哲学や心の存在を感じます。私はこの番組を見た時、はっとしました。中国にも長く指導に行っていましたが、中国はゴミを捨てる文化、そこで育った方が、日本人よりも日本人らしさを感じます。おそらく世界一の清掃員でしょう。私たちが忘れていたものを気づかせてくれるようで心打たれました。掃除は3Kの一つとも言われ、兎角上から目線で見てしまいますが、自分の心を磨いたり、心が豊かになることなのです。
 
 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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