クリーン化担当の皆さまへ、そして管理、監督者の皆様へ

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 クリーンルームクリーン化担当の皆さんは、孤立していませんか。私もそういう時期があったのをふと思い出し、また、いまだにそのような声を聞きますので、今回のテーマにしました。
 
 クリーン化活動には、特効薬はなく、即効性のある妙案もありません。地味ですが、地道にコツコツやることの積み重ねが成果に繋がる活動です。派手さがない上に、一朝一夕には成果が得られないので、進んでやりたいという人は少ないかもしれません。
 
 反面、上司からは成果出しを急ぐよう要求されることが多いのではないでしょうか。これではそればかりに縛られ、じっくり現場を見ることが出来ません。こういう立場の方が案外多いのではないかと推測しています。それでも諦めず、手を抜かず、毎日現場に入り、良く観察することを継続しましょう。いきなりホームランやヒットが生まれるわけではありません。忍耐強く継続することで、現場の状態が維持され、かつ、向上している、つまり基盤強化に繋がっているのです。小さなことの積み重ねの継続がやがて大きな成果になります。それを信じて続けましょう。
 

1.クリーン化 4原則 + 監視

 現場を観察する時は、クリーン化4原則の視点で不具合がないかを確認していると思いますが、それに加え定期的な監視が重要です。こんな事例があります。
 
 昔、ある大手半導体メーカーで、狙った目標歩留まりにはもう少しだが、どうしても届かない。技術者が製品の解析や様々な分析をするなど考えられることはすべてやった。でも、届きそうで届かないという状況がしばらく続いたそうです。部内の目が技術的視点に傾いていたのです。
 
 結局その部門長が、今のレベル以上は無理だ。一旦、この目標を追い求めるのはやめよう。そしてみんなで掃除をしようと号令をかけたそうです。『ものづくりの基本は現場にあり』ということが頭を過っての行動だったようです。
 
 そして手抜きなく、隅々をその部門長も一緒になって、掃除したところ、暫くして不思議なことに、目標歩留まりを達成できたそうです。そこで、現場管理の基本が出来ていなかった。やはり基本を疎かにしてはいけないと改めて学んだとのことです。ベースがしっかり押さえられていなかった例です。
 

2.私の事例

 私の若い頃の経験ですが、ラインのクリーン化担当の時、年度初めに上司から歩留まりの目標値を設定するよう指示されたことがありました。その時、周囲からはそんな無理な数字を出すな、などと厳しい声がありました。ところが、別な部署にいたクリーン化の恩師ともいうべき人が水面下で支援をしてくれました。
 
 この人は、『 日々発見、日々喜び 』という言葉を残しました。この意味は、どんなに綺麗に管理しているクリーンルームであっても、毎日巡回すると新しい発見がある。すると自分の見る目が日々高くなった。自分のレベルがさらに上がったという喜びを感じるという意味です。
 
 毎日現場を這いずり回っていた私には、良く理解できる言葉でした。しかし、ある時この言葉には裏があるということに気づきました。つまり、日々劣化していてそれを日々の巡回で発見しているということです。言い換えると、“どんなに新しいクリーンルームや設備でも稼働したその日から劣化が始まる”ということです。これに気が付かせてくれる言葉でした。
 
 それ以来、私は現場を見る時、基本はクリーン化4原則視点、加えて監視ということを意識して見ています。日々新鮮に観察することに心がけました。昨日まではこうだったっけ?と。周囲からは冷たい視線で見られることもあるでしょうが、地味に、地道に、信念を持って基礎を大切にし、現場を見続けてきました。
 
 この年度の終わり頃、目標達成が出来ました。飛び上がるほどの感激とともに、クリーン化への地道な取り組みの重要性を再認識しました。こういう担当の方は、現場には沢山の発見や感動があることを知っています。精神的にこういう領域に入っていくと、周囲に振り回されずに、自分に正直に活動ができると思います。
 

3.管理、監督者の皆様へ

 管理、監督者は兎角、成果出しを急ぎすぎる傾向になります。その方が、更に上層部への報告がし易いこともあるでしょう。そうすると、昨日種を蒔いたのだから今日は芽が出て、明日は実がなって収穫できるだろうというような勢いで成果を求めたりします。
 
 でも、その過程にある草取りや水やり、余...
 クリーンルームクリーン化担当の皆さんは、孤立していませんか。私もそういう時期があったのをふと思い出し、また、いまだにそのような声を聞きますので、今回のテーマにしました。
 
 クリーン化活動には、特効薬はなく、即効性のある妙案もありません。地味ですが、地道にコツコツやることの積み重ねが成果に繋がる活動です。派手さがない上に、一朝一夕には成果が得られないので、進んでやりたいという人は少ないかもしれません。
 
 反面、上司からは成果出しを急ぐよう要求されることが多いのではないでしょうか。これではそればかりに縛られ、じっくり現場を見ることが出来ません。こういう立場の方が案外多いのではないかと推測しています。それでも諦めず、手を抜かず、毎日現場に入り、良く観察することを継続しましょう。いきなりホームランやヒットが生まれるわけではありません。忍耐強く継続することで、現場の状態が維持され、かつ、向上している、つまり基盤強化に繋がっているのです。小さなことの積み重ねの継続がやがて大きな成果になります。それを信じて続けましょう。
 

1.クリーン化 4原則 + 監視

 現場を観察する時は、クリーン化4原則の視点で不具合がないかを確認していると思いますが、それに加え定期的な監視が重要です。こんな事例があります。
 
 昔、ある大手半導体メーカーで、狙った目標歩留まりにはもう少しだが、どうしても届かない。技術者が製品の解析や様々な分析をするなど考えられることはすべてやった。でも、届きそうで届かないという状況がしばらく続いたそうです。部内の目が技術的視点に傾いていたのです。
 
 結局その部門長が、今のレベル以上は無理だ。一旦、この目標を追い求めるのはやめよう。そしてみんなで掃除をしようと号令をかけたそうです。『ものづくりの基本は現場にあり』ということが頭を過っての行動だったようです。
 
 そして手抜きなく、隅々をその部門長も一緒になって、掃除したところ、暫くして不思議なことに、目標歩留まりを達成できたそうです。そこで、現場管理の基本が出来ていなかった。やはり基本を疎かにしてはいけないと改めて学んだとのことです。ベースがしっかり押さえられていなかった例です。
 

2.私の事例

 私の若い頃の経験ですが、ラインのクリーン化担当の時、年度初めに上司から歩留まりの目標値を設定するよう指示されたことがありました。その時、周囲からはそんな無理な数字を出すな、などと厳しい声がありました。ところが、別な部署にいたクリーン化の恩師ともいうべき人が水面下で支援をしてくれました。
 
 この人は、『 日々発見、日々喜び 』という言葉を残しました。この意味は、どんなに綺麗に管理しているクリーンルームであっても、毎日巡回すると新しい発見がある。すると自分の見る目が日々高くなった。自分のレベルがさらに上がったという喜びを感じるという意味です。
 
 毎日現場を這いずり回っていた私には、良く理解できる言葉でした。しかし、ある時この言葉には裏があるということに気づきました。つまり、日々劣化していてそれを日々の巡回で発見しているということです。言い換えると、“どんなに新しいクリーンルームや設備でも稼働したその日から劣化が始まる”ということです。これに気が付かせてくれる言葉でした。
 
 それ以来、私は現場を見る時、基本はクリーン化4原則視点、加えて監視ということを意識して見ています。日々新鮮に観察することに心がけました。昨日まではこうだったっけ?と。周囲からは冷たい視線で見られることもあるでしょうが、地味に、地道に、信念を持って基礎を大切にし、現場を見続けてきました。
 
 この年度の終わり頃、目標達成が出来ました。飛び上がるほどの感激とともに、クリーン化への地道な取り組みの重要性を再認識しました。こういう担当の方は、現場には沢山の発見や感動があることを知っています。精神的にこういう領域に入っていくと、周囲に振り回されずに、自分に正直に活動ができると思います。
 

3.管理、監督者の皆様へ

 管理、監督者は兎角、成果出しを急ぎすぎる傾向になります。その方が、更に上層部への報告がし易いこともあるでしょう。そうすると、昨日種を蒔いたのだから今日は芽が出て、明日は実がなって収穫できるだろうというような勢いで成果を求めたりします。
 
 でも、その過程にある草取りや水やり、余計な芽欠きなど日々手を加え育てる、地味な努力を見逃しているんですね。これでは良いものは収穫できません。成果を追求するよりは、まず現場に足を運びましょう。灯台元暗しではいけませんね。そして、クリーン化担当や小集団活動を支援していただきたいと思います。
 
 成果を求めすぎると、一過性の、表面だけの活動になります。すると成果が出やすいことを選んで取り組むようになります。ある意味で要領の良い人だけが評価され、コツコツ努力する人の活動は報われないことになります。真の人財育成にはつながりません。
 

4.クリーン化担当の方へ

 クリーン化担当の方は、孤立することもあると思いますが、やり遂げる強い気持ちを持ちましょう。若い人たちも背中を見ています。皆さんの思いや行動を手本にするのか、逃げて行くのかです。また、管理、監督者の皆さんも長い目で、良い人財育成をお願いいたします。
 
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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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