製品・技術規格とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. 製品・技術規格とは

製品規格は、製品がどのような基準を満たす必要があるかを定めたものです。例えば、製品の寸法、材質、耐久性、安全性などが製品規格に含まれます。製品規格を満たすことで、製品の品質が保証され、消費者や企業が安心して製品を利用できるようになります。

一方、技術規格は、製品の製造や開発において必要な技術や手順を定めたものです。例えば、製品の製造方法、検査手順、品質管理などが技術規格に含まれます。技術規格を遵守することで、製品の生産プロセスが効率的に行われ、製品の品質が一貫して高いレベルで維持されることが期待されます。

製品規格と技術規格は、製品や技術の信頼性や安全性を確保するために重要な役割を果たしています。両方を適切に遵守することで、製品や技術の品質向上や市場競争力の強化につながることが期待されます。

2.製品・技術規格に対する安全規格と安全認証

安全規格とは、製品の安全性について定められた最低限の基準です。自動車の運転に例えると、安全規格は交通ルール、安全認証は運転免許です。運転免許を取得するには、交通ルールを知っている必要があります。しかし、交通ルールをいくら厳密に守っても、交通事故を完全に防ぐことはできません。

3. 自動車向け製品・技術規格

2011年11月に正式発行された自動車向け機能安全規格ISO 26262は、これにより国内自動車メーカー各社はこのツールへの対応を本格化させました。自動車部品の故障率が高かった欧米では機能安全(部品が壊れても安全性を維持する)の考え方が浸透しています。とりわけ、安全性確保は誤操作時までの考え方で、ブレーキとアクセルが同時に踏まれた場合は、ブレーキ優先で動作させるというようなことも規定されています。業界は、自動運転を最優先で取り組んでいますが、実現にはAI技術と法令対応が必要で、この取り組みは世界規模の製品・技術規格です。今の自動車はブレーキのコントロール、エンジンは電子制御で行われています。機能安全の国際規格ISO 26262に基づく認証は、人命にかかわるものなので必須です。

4. 製品・技術規格がもたらす経済的・社会的インパクト

製品・技術規格は、単に製品の品質や安全性を保証する「基準」に留まらず、より広範な経済的・社会的なインパクトを生み出しています。規格が存在することで、企業は安心してサプライチェーンを構築できます。例えば、ある電子部品の寸法や性能が国際規格で定められていれば、日本のメーカーは遠く離れた国のサプライヤーからその部品を調達し、自社の製品に組み込むことができます。これは、部品の互換性が保証されているからです。この互換性と相互運用性の確保こそが、グローバルな市場形成の土台となっています。規格がなければ、企業は取引のたびに個別の仕様確認や品質検査に膨大なコストと時間を費やすことになり、自由な貿易は停滞してしまうでしょう。

また、規格は技術革新(イノベーション)の加速装置としても機能します。一見、規格は技術を固定化するものに思えますが、実は違います。ある技術が規格として確立されると、その技術が「共通の基盤」となり、誰もがその基盤の上で、さらに高度な技術や新たなアプリケーションの開発に集中できるようになります。たとえば、Wi-Fiの通信規格が確立されたことで、企業は「どうやって通信を確立するか」という基礎部分ではなく「どうやって通信速度を上げるか」「どうやってセキュリティを強化するか」といった付加価値の部分に開発リソースを集中させられるようになりました。規格は、技術開発の「足場」を提供し、無用な重複投資を防ぎながら、競争をより高次元な革新へと誘導する役割を担っています。

5. グローバル化時代における国際規格の役割と戦略的な取り組み

技術の進化と経済のグローバル化に伴い、各国・地域独自の規格(ローカル規格)の限界が顕在化し、国際規格の重要性が飛躍的に高まっています。国際規格、特にISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)によって策定されるものは、世界共通の「技術の公用語」として機能します。これは、国際的な市場への参入障壁を下げ、製品やサービスが国境を越えてスムーズに流通することを可能にします。

企業や国にとって、国際規格の策定プロセスへの参加は、極めて戦略的な行動です。自国・自社の技術が国際規格として採用されることは、その技術が世界のデファクトスタンダード(事実上の標準)となることを意味します。これにより、技術を保有する国や企業は、市場での優位性を確立できるだけでなく、関連する特許やノウハウを通じて国際競争力を大きく高めることができます。このため、近年では、各国政府が主体となり、AI、量子技術、環境技術などの最先端分野において、自国の技術を国際規格として提案・推進する動きが活発化しています。規格策定は、もはや単なる技術的な議論ではなく、国家間の経済安全保障や技術覇権をかけた「ソフトパワー」の競争の場となっているのです。

6. 未来の技術と製品・技術規格の進化

今後、AI、IoT(モノのインターネット)、そしてサイバーフィジカルシステム(CPS)といった技術が社会のあらゆる側面に浸透するにつれて、製品・技術規格はさらに進化が求められます。特に重要なのは、物理的なモノの品質だけでなく、データとソフトウェアに関する規格です。

自動運転車が良い例です。このシステムの安全性は、車の部品だけでなく、センサーが収集するデータの信頼性、AIがそのデータを処理するアルゴリズムの検証可能性、そして車と外部システムとの通信セキュリティによって左右されます。未来の規格は、これらの「非物理的」な要素を網羅し、システムの全体像としての安全性(システム・オブ・システムズ)を保証するものへと変わっていくでしょう。また、技術の進化速度があまりにも速いため、規格策定プロセス自体も、より柔軟で迅速な対応が可能なものへと変革しつつあります。

規格は、技術の進化を支え、その恩恵を広く社会にもたらすための共通言語であり、未来を形作るための設計図とも言えます。これからも、社会の進展に合わせて規格は生まれ変わり、私たちの生活を豊かに、そして安全なものにしていく重要な役割を担い続けるでしょう。


 


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