ISOマネジメントシステムで継続的に改善するには

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 ISO 9001やISO 14001等ISO マネジメントシステム規格は、本来「改善ツール」として活用されるべきものです。これらは、「要求事項を満たし、組織が立てた目標を達成するためのしくみ」であり、所謂「PDCAサイクル」を回すことで、組織を「継続的に改善」させなければなりません。
 
 この「PDCAサイクル」を回すために、「P(Plan)」では、目標の設定や達成するための対策と実施計画を策定しますが、その「目標」や「対策」が明確で、実施した「結果」がどうだったかを分析できるものになっている必要があり、そのためには「指標」などの結果を測る「モノサシ」をどのようにするかということが重要となります。次に「D(Do)」で目標を達成するための対策を実施し、「C(Check)」で実施した結果がどうだったか、設定した目標と結果の差異についての原因分析を行います。そして、その分析結果を「A(Action)」として「マネジメントレビュー」へインプットします。「マネジメントレビュー」では、実施した結果や、分析結果を基に、次の目標設定や改善への具体的な対策といったアクションアイテムなどを次の「P(Plan)」として落とし込んでいきます。
 
 例えば、目標を「不良率の前年度比30%減」とし、結果が目標に対して未達だった場合、不良内容の傾向をパレート図などで「見える化」し、その内容を分析します。そこから見えてくる重点的に対策しなければならない課題(例、人的ミスによる不良等)について、対策と実施計画(例、作業者の教育、訓練計画等)を策定(「P」)し、対策を実施(「D」)します。そして、実施した結果について、分析及びその対策の有効性を確認(「C」)し(例、実際に人的ミスによる不良が減っているか等)、その内容をマネジメントレビューや品質会議などにフィードバック(「A」)します。そして、目標の見直しや、新たな対策と実施計画を策定し、次のサイクルへと繋げていきます。このようにして、図1のように「PDCA」で改善のサイクルを回し続けることが「継続的改善」となり、上昇するスパイラルとなっていきます。
 
        pdca11
図1.「PDCAサイクル」による継続的改善のスパイラル
 
 もし、対策を実施した結果が目標を上回る結果だったという場合でも、なぜ達成できたのか、その対策の良かった点は何か、ということを分析することも重要となります。
 
 そういった成功事例を分析し、フィードバックすることで、より改善スピードを早め、他の類似した課題に対しても展開することができます。「PDCAサイクル」を回し「継続的改善」を図るためには、担当者やスタッフの力量を上げていくことが必要です。しかし、それだけではなく、方針や目標、体制作りに対する経営者の意識や関与、支援が重要となります。特に、先日改訂された「ISO 9001:2015」、「ISO 14001:2015」では、トップマネジメント(経営者)の「リーダーシップ及びコミットメント」として、従来の方針や目標等へのコミットメントだ...
 ISO 9001やISO 14001等ISO マネジメントシステム規格は、本来「改善ツール」として活用されるべきものです。これらは、「要求事項を満たし、組織が立てた目標を達成するためのしくみ」であり、所謂「PDCAサイクル」を回すことで、組織を「継続的に改善」させなければなりません。
 
 この「PDCAサイクル」を回すために、「P(Plan)」では、目標の設定や達成するための対策と実施計画を策定しますが、その「目標」や「対策」が明確で、実施した「結果」がどうだったかを分析できるものになっている必要があり、そのためには「指標」などの結果を測る「モノサシ」をどのようにするかということが重要となります。次に「D(Do)」で目標を達成するための対策を実施し、「C(Check)」で実施した結果がどうだったか、設定した目標と結果の差異についての原因分析を行います。そして、その分析結果を「A(Action)」として「マネジメントレビュー」へインプットします。「マネジメントレビュー」では、実施した結果や、分析結果を基に、次の目標設定や改善への具体的な対策といったアクションアイテムなどを次の「P(Plan)」として落とし込んでいきます。
 
 例えば、目標を「不良率の前年度比30%減」とし、結果が目標に対して未達だった場合、不良内容の傾向をパレート図などで「見える化」し、その内容を分析します。そこから見えてくる重点的に対策しなければならない課題(例、人的ミスによる不良等)について、対策と実施計画(例、作業者の教育、訓練計画等)を策定(「P」)し、対策を実施(「D」)します。そして、実施した結果について、分析及びその対策の有効性を確認(「C」)し(例、実際に人的ミスによる不良が減っているか等)、その内容をマネジメントレビューや品質会議などにフィードバック(「A」)します。そして、目標の見直しや、新たな対策と実施計画を策定し、次のサイクルへと繋げていきます。このようにして、図1のように「PDCA」で改善のサイクルを回し続けることが「継続的改善」となり、上昇するスパイラルとなっていきます。
 
        pdca11
図1.「PDCAサイクル」による継続的改善のスパイラル
 
 もし、対策を実施した結果が目標を上回る結果だったという場合でも、なぜ達成できたのか、その対策の良かった点は何か、ということを分析することも重要となります。
 
 そういった成功事例を分析し、フィードバックすることで、より改善スピードを早め、他の類似した課題に対しても展開することができます。「PDCAサイクル」を回し「継続的改善」を図るためには、担当者やスタッフの力量を上げていくことが必要です。しかし、それだけではなく、方針や目標、体制作りに対する経営者の意識や関与、支援が重要となります。特に、先日改訂された「ISO 9001:2015」、「ISO 14001:2015」では、トップマネジメント(経営者)の「リーダーシップ及びコミットメント」として、従来の方針や目標等へのコミットメントだけでなく、「人々の積極参加」や「各管理層がリーダーシップを発揮」できるように支援すること等、新たな要求事項が加わり、経営者がよりマネジメントシステムへ関与することを求められています。
 
 そして、そのようにして構築したマネジメントシステムの「PDCAサイクル」が機能しているかをチェックしなければなりません。
 
 そのためには、「内部監査」や「定期審査」、「更新審査」を活用し、「PDCAサイクル」を第三者の目でチェックしてもらうことや、その際に出た指摘を各層へフィードバックすることで、より効果的なPDCAサイクルを回すことができるのです。
 
   この文書は、 2015年10月15日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。 

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この記事の著者

伊藤 良太

ISO、IATFなどマネジメントシステムの構築・改善及びヒューマンエラー防止・対策のコンサルタント

ISO、IATFなどマネジメントシステムの構築・改善及びヒューマンエラー防止・対策のコンサルタント


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