TRIZ(発明問題解決の理論)の紹介 (その3)

 前回のその2に続いて解説します。TRIZのエッセンスは何か、 この質問は、われわれがTRIZを学ぶために最も基本的で重要なものです。TRIZには、多数の重要な原理や方法があります。
     例えば、

1、40の発明の原理
2、76の発明の標準解
3、技術システムの進化のトレンド
4、アルトシューラーの矛盾マトリックス
5、ARIZ (発明問題解決のアルゴリズム) など
 しかしながら、これらのどれ一つをとっても、TRIZの真髄のエッセンスとみなすにはあまりにも膨大です。TRIZのエッセンスは、このようなハンドブック的知識のレベルにあるのではなくもっと深い思想のレベルにあります。TRIZのエッセンスを抽出するためには、われわれはまずTRIZの全体構造を理解しなければなりません。
 

TRIZ = 方法論 + 知識ベース、です。
TRIZにはつぎの三つの側面があります。
 

• 方法論 (a):  技術を見る新しい見方
• 方法論 (b):  問題解決の思考方法
• 知識ベース:  方法論(a)を実装する事例集
 この見方では、TRIZのエッセンスを方法論(a) と方法論(b) との中から見つけるべきことが明瞭です。図1に掲げるのが、TRIZのエッセンスを50語で表現したものです。 
    図1.TRIZのエッセンス(50語表現)   
 
   上記のような理解を得たのは、主としてサラマトフのTRIZ教科書を勉強した結果です。上記の簡潔な表現を最初に示したのは、TRIZCON2001の国際会議での発表[3] のスライドとしてです。では、この50語による表現を、以下に説明します。
 
  まず最初に、TRIZは一つの「認識」です。言い換えると 技術についての一つの「新しい見方」 (上記の方法論(a)) と言明しています。この認識をもつことにより つまり、技術をこの観点から見ることによって、われわれは非常に大きな視野を持つ位置に達することができ、その視野は技術だけでなく、科学や社会やわれわれの生活などすべてに及びます。
 
  その最も重要な認識は、「技術システムが進化する」という認識です。われわれは技術を 主として技術システムとして見ます。いかなるシステムも、いくつかの構成要素 (下位システム) とそれらの関係とから構成され、それ自身がその上位システムの一つの下位システムと見なすことができます。すべての技術システムが進化し、歴史の中で変化・発展します。この進化は巨大な潮流を形成し、個々の発明を包含しつつ飲み込んでしまう。進化はさまざまなフェーズでさまざまな様子で現れ、例えば、誕生、拡張、統合、縮約などがあります。
 
 技術システムの進化は 「理想性の増大に向かって」います。この認識は進化の主法則と呼ばれ、理想性は サラマトフ [2]によれば「主機能/(質量+エネルギー+サイズ)」と定義されますが、ときには「有用機能/(コスト+有害機能)」と定義されることもあります。これらの定義は本性として定性的なものです。ここの主たる認識はさまざまな形の進化を理想性の増大の方向への動きとして普遍的にみることができ、この認識が、将来の技術システムを予測し開発するときのわれわれの基礎を形成します。
 
  進化が起こるのは「矛盾の克服」だけによります。さまざまの矛盾は最初、需要と供給 (現行の技術性能)との間のギャップとして顕れます。それらの矛盾は、障害・障壁として認識され、しばらくの間はなんらかの妥協が行われますが、やがてブレークスルーの発明によって克服されます。これらの諸発明が技術システムの進化におけるミクロのステップを形成します。
 
  矛盾の克服が達成されるのは、リソースの最小限の導入によります。リソース (物質、エネルギー、サイズなど) を安易に追加導入すると、しばしばシステムを複雑化し、矛盾を解決しません。リソースの導入をなしでするか最小限でしたときにだけ矛盾が克服できるというのが、TRIZの認識です。これは理想性の増大の法則とよく対応しています。
 
  上記に述べた認識を基礎にして、TRIZは「創造的に問題を解決するための」一つの方法論 (一つの思考方法) を提供しようとします。これが、TRIZを開発し学ぶ、主要な目的です。問題解決は諸矛盾を克服するのに最も必要とされ、そのような矛盾に対しては 解決策も解決する方法も予め知られていないので、われわれはそれらを創造的に解決せざるをえません。
 
  創造的な問題解決のために「TRIZは弁証法的な思考を薦める」。TRIZはわれわれに、最も一般的な意味で考える方法を提供し、さまざまの特定の方法や、ヒューリスティクスや、トリックなどを超えて、TRIZは新しい思考の方法をわれわれに示します。それは、サラマトフ[2] によれば、哲学的な用語を使って「弁証法的思考」と呼んで、この思考方法の主要な特徴を、以下のフレーズで説明します。
 
  第一に、「問題をシステムとして理解する」。問題の対象を (技術的) システムとみなすべきで、システムに対しては、TRIZは上記の認識に述べたように、深い洞察を与えています。われわれはまた、問題自体も階層的な問題システムを形成していることを理解すべきで、この理解をすれば、問題に対しても、そしてその可能な解決策に対しても、われわれは複眼的でかつ進化する観点をもつことができます。
 
  第二に、「理想の解決策を最初にイメージする」。これはもちろん、技術システムが理想性の増大に向かって進化するというTRIZの認識に基礎を置いています。進化の方向をわれわれは知っているのだから、われわれは解決策のイメージをまず...

考えるべきで、理想的解決策をまずイメージして、それから、それを達成するための方法を見つけることを試みます。例えば、理想解から現在のシステムへと一歩一歩戻ってくる。これは従来の思考の方法、すなわち、現在のシステムからスタートして試行錯誤により考えるのとは対照的にその逆方向の思考過程をわれわれに薦めます。
 
  第三に、「矛盾を解決する」。弁証法論理は哲学においてしばしば「一つの命題とその反対命題との間の矛盾を総合命題を導入して解決する」ものであると言われますが、それを実現するための実際のプロセスについてはよく説明されてきませんでした。その中で、TRIZは、技術的問題における矛盾を解決するための具体的なガイドラインを (特に ARIZの形で) 示すのに成功しました。そのプロセスの中心は(問題を再定式化して) 物理的矛盾 (システムの一つの側面に対して正方向と逆方向の要求が同時に存在する状況) を導出し、それを分離原理によって解決するものです。物理的矛盾が一旦導かれるとこの解決技法は驚くばかりに強力で、ブレークスルーの解決策を見つけることができます。
 
  TRIZにおける弁証法的な思考方法の三つの特徴が、技術システムについてのTRIZの認識と非常によく対応していることに注意すべきです。
  

出典:「TRIZホームページ」2001年(TRIZのエッセンス、50語による表現)より

 

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