なぜベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理するのか~ 設計品質を劇的に変えるマインドマップ思考法 ~

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ベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理する、設計品質とマインドマップ思考法

 

◆なぜベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理するのか~ 設計品質を劇的に変えるマインドマップ思考法 ~

機械設計を始めたばかりの頃、多くの人はこう考えます。 「まず図面を描こう」「まずCADを開こう」、もちろん間違いではありません。しかし、経験を積んだ設計者ほど、いきなり図面には向かいません。まず考えるのです。

  • 何を実現したいのか。
  • 何が問題なのか。
  • どんな条件があるのか。
  • どんなリスクがあるのか。

 

つまり、設計を始める前に頭の中を整理しています。実はここに、若手とベテランの大きな差があります。そして、その思考整理に非常に有効な道具が「マインドマップ」です。今回は、設計者の思考法という視点から、マインドマップの活用方法について解説したいと思います。

 

【目次】

    1. 設計とは「答え探し」ではない

    学生時代の勉強は答えが決まっています。数学には正解があります。物理にも正解があります。しかし設計には正解がありません。例えば、以下のような条件はすべて重要です。

    • 軽くする
    • 強くする
    • 安くする
    • 作りやすくする
    • メンテナンスしやすくする

     

    ところが、これらを同時に満足させることは難しい場合があります。「軽くすると強度が下がる」「強くすると重くなる」「コストを下げると性能が下がる」など、設計者は常にトレードオフの中で判断しています。つまり設計とは、「唯一の正解を探す仕事」ではなく、「最適解を見つける仕事」なのです。だからこそ、考えを整理する力が必要になります。

     

    2. 若手設計者が陥りやすい失敗

    若手設計者によく見られるのが、「思いついた案をすぐ図面にしてしまう」ことです。私自身も若い頃によくやりました。ところが図面を書き始めると、「あれ?」となります。実際に私が若い頃、搬送装置の駆動部を設計した際のことです。モーター容量だけを見て選定を進め、「これで大丈夫だろう」と思っていました。ところが詳細設計に入ると、今度は減速機が想定スペースに収まりません。さらにカバーとの干渉も見つかりました。結局、レイアウトをほぼやり直すことになりました。今振り返れば、モーターだけを見ていて、周辺条件を整理できていなかったのです。とこ...

    ベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理する、設計品質とマインドマップ思考法

     

    ◆なぜベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理するのか~ 設計品質を劇的に変えるマインドマップ思考法 ~

    機械設計を始めたばかりの頃、多くの人はこう考えます。 「まず図面を描こう」「まずCADを開こう」、もちろん間違いではありません。しかし、経験を積んだ設計者ほど、いきなり図面には向かいません。まず考えるのです。

    • 何を実現したいのか。
    • 何が問題なのか。
    • どんな条件があるのか。
    • どんなリスクがあるのか。

     

    つまり、設計を始める前に頭の中を整理しています。実はここに、若手とベテランの大きな差があります。そして、その思考整理に非常に有効な道具が「マインドマップ」です。今回は、設計者の思考法という視点から、マインドマップの活用方法について解説したいと思います。

     

    【目次】

      1. 設計とは「答え探し」ではない

      学生時代の勉強は答えが決まっています。数学には正解があります。物理にも正解があります。しかし設計には正解がありません。例えば、以下のような条件はすべて重要です。

      • 軽くする
      • 強くする
      • 安くする
      • 作りやすくする
      • メンテナンスしやすくする

       

      ところが、これらを同時に満足させることは難しい場合があります。「軽くすると強度が下がる」「強くすると重くなる」「コストを下げると性能が下がる」など、設計者は常にトレードオフの中で判断しています。つまり設計とは、「唯一の正解を探す仕事」ではなく、「最適解を見つける仕事」なのです。だからこそ、考えを整理する力が必要になります。

       

      2. 若手設計者が陥りやすい失敗

      若手設計者によく見られるのが、「思いついた案をすぐ図面にしてしまう」ことです。私自身も若い頃によくやりました。ところが図面を書き始めると、「あれ?」となります。実際に私が若い頃、搬送装置の駆動部を設計した際のことです。モーター容量だけを見て選定を進め、「これで大丈夫だろう」と思っていました。ところが詳細設計に入ると、今度は減速機が想定スペースに収まりません。さらにカバーとの干渉も見つかりました。結局、レイアウトをほぼやり直すことになりました。今振り返れば、モーターだけを見ていて、周辺条件を整理できていなかったのです。ところが若手時代は、そのことになかなか気付けません。

      • モーターが入らない
      • 配線スペースがない
      • 組立できない
      • 工具が入らない

       

      気付けば最初からやり直しです。なぜこうなるのでしょうか。理由は単純です。考える前に描いてしまったからです。設計の失敗の多くは、計算ミスではなく「思考整理不足」から発生します。

       

      3. ベテラン設計者は頭の中で何をしているのか

      ベテラン設計者の頭の中をのぞくと、実は複数のことを同時に考えています。例えば搬送装置を設計するとします。すると、以下のような要素が一斉に頭の中へ浮かびます。

      • 搬送能力 / サイクルタイム / 強度
      • モーター容量 / コスト / 保守性
      • 安全性 / 製作期間 / 据付条件

       

      さらに、「将来能力アップするかもしれない」「現場は油が多いな」「フォークリフトが通るな」「新人がメンテするかもしれない」といった現場情報も加わります。

       

      つまり設計者は、点ではなく面で考えているのです。

       

      実はベテラン設計者は経験の蓄積によって、頭の中に巨大なマインドマップを持っています。過去の失敗や成功事例が無数に結び付いているため、図を書かなくても自然に関連事項が思い浮かぶのです。一方、若手設計者はまだ経験が少ないため、その思考のつながりを意識的に作る必要があります。その助けになるのがマインドマップです。

       

      ベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理する、設計品質とマインドマップ思考法

       

      4. マインドマップとは何か

      マインドマップは、イギリスの教育者トニー・ブザンによって提唱された思考整理法です。中央にテーマを書き、そこから枝を伸ばして関連事項を書き出していきます。例えば中央に「搬送装置設計」と書きます。そこから、機能・コスト・安全・保守・製作・据付などの枝を伸ばします。さらに「安全」から、挟まれ防止・非常停止・カバー・インターロックなどを展開します。すると、頭の中にあった情報が一枚の紙に整理されます。重要なのは、図をきれいに描くことではありません。関連する情報を漏れなく洗い出すことです。

       

      ベテラン設計者は図面より先に頭の中を整理する、設計品質とマインドマップ思考法

      図.搬送装置設計のマインドマップ例

       

      5. なぜ設計と相性が良いのか

      設計業務では、多くの条件を同時に考えなければなりません。性能だけ見れば良いわけではありません。安全だけ見れば良いわけでもありません。コストだけでもありません。品質、保守性、製造性、納期など、あらゆる条件が関係します。マインドマップを使うと、それらを一度に見渡せるようになります。また、新しい発想が生まれやすくなるという効果もあります。

       

      例えば保守性を考えていたとき、「点検窓を追加した方が良いかもしれない」というアイデアが出ることがあります。さらに、「その窓を利用してセンサ交換も簡単にできるのではないか」という発想につながることもあります。

       

      設計とは単なる計算作業ではありません。発想と判断の連続です。その発想を広げるためにも、マインドマップは非常に有効なのです。

       

      6. AI時代だからこそ重要になる

      最近はAIを活用して設計業務を行う場面も増えてきました。図面作成支援、強度解析、仕様書作成など、さまざまな業務でAIが使われ始めています。しかしAIが得意なのは、与えられた条件の中で答えを出すことです。

      • 何を考えるべきか
      • 何を検討すべきか
      • どこにリスクがあるのか

       

      それを決めるのは人間です。設計の本質は思考にあります。だからこそ、AI時代になればなるほど「考える力」の重要性は高まっていくでしょう。マインドマップは、その考える力を鍛える優れた訓練方法でもあります。

       

      まとめ ~ 設計の差は「考える深さ」から生まれる ~

      若手設計者はつい図面やCADに意識が向きがちです。しかし本当に大切なのは、その前の思考整理です。マインドマップは単なるメモではありません。設計者の頭の中を見える化する道具です。複雑な条件を整理し、抜け漏れを防ぎ、新しい発想を生み出します。ベテラン設計者が経験によって身につけている思考法を、若手でも再現できるのがマインドマップの大きな魅力です。CADは設計者の手を助けてくれます。しかし、何を描くべきかを決めるのは設計者の頭です。設計の差は、図面を描く速さではなく、考える深さから生まれるのです。

       

      次に新しい設計テーマを担当するときは、いきなりCADを開くのではなく、一枚の紙の中央にテーマを書いてみてください。そこから伸びる一本の枝が、思いもよらない気付きや設計改善につながるかもしれません。設計とは図面を描く仕事ではありません。考える仕事です。 そして、その「考える力」を鍛える最も簡単な方法の一つが、マインドマップなのです。

       

      今日描く一枚のマインドマップが、明日の手戻りを減らし、1年後には設計品質の大きな差となって現れるかもしれません。

       

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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