調達購買部門を「コスト部門」で終わらせないための経営戦略~戦略部門への進化が企業の成長を左右する~ 

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調達購買部門を「コスト部門」で終わらせないための経営戦略~戦略部門への進化が企業の成長を左右する~ 

【目次】

    多くの日本企業において、調達購買部門は「見積を取って発注するだけのコストセンター」という認識に留まりがちです。しかし、原材料費の高騰やサプライチェーンの複雑化が進む現代、調達の巧拙は企業の利益とリスクに直結し、経営力そのものを左右します。今回は、調達購買部門が単なるコスト部門の役割を超え、いかにして企業の成長を担う「戦略部門」へと進化すべきか、その具体的な道筋と重要性を解説します。

     

    1. 調達購買部門のプレゼンスが低い現状 

    多くの日系企業では、依然として調達購買部門の存在感が薄いようです。「見積を取って発注するだけ」「コストを抑えることが仕事」という認識が根強く、社内でも「支出を管理 するコスト部門」として扱われているケースが少なくありませ。その結果、現場では次のような姿が見られます。

     

    •  関係部門からの見積依頼をそのまま処理 
    •  決まったサプライヤーへの見積・発注の繰り返し
    •  納期調整や品質トラブルの対応に追われ、改善に時間を割けない 


    こうした状況では、調達購買部門は「誰でもできる仕事」に見えてしまい、スキルが評価されにくいのです。 しかし本来、調達購買業務は企業の利益に直結する「戦略業務」であり、設計・生産・営業のいずれとも 密接に関わる経営中枢機能のひとつです。 

     

    2. 外資企業に見る「戦略調達」の考え方 

    一方で、外資系企業では古くから、調達購買部門を企業収益に貢献する戦略部門として明確に位置づけているケースが多いのです。 


    組織構造としても「ソーシング(調達戦略)」と「パーチェシング(購買実務)」の役割を明確に分け、担当者が単なるオペレーションに終始しない...

    調達購買部門を「コスト部門」で終わらせないための経営戦略~戦略部門への進化が企業の成長を左右する~ 

    【目次】

      多くの日本企業において、調達購買部門は「見積を取って発注するだけのコストセンター」という認識に留まりがちです。しかし、原材料費の高騰やサプライチェーンの複雑化が進む現代、調達の巧拙は企業の利益とリスクに直結し、経営力そのものを左右します。今回は、調達購買部門が単なるコスト部門の役割を超え、いかにして企業の成長を担う「戦略部門」へと進化すべきか、その具体的な道筋と重要性を解説します。

       

      1. 調達購買部門のプレゼンスが低い現状 

      多くの日系企業では、依然として調達購買部門の存在感が薄いようです。「見積を取って発注するだけ」「コストを抑えることが仕事」という認識が根強く、社内でも「支出を管理 するコスト部門」として扱われているケースが少なくありませ。その結果、現場では次のような姿が見られます。

       

      •  関係部門からの見積依頼をそのまま処理 
      •  決まったサプライヤーへの見積・発注の繰り返し
      •  納期調整や品質トラブルの対応に追われ、改善に時間を割けない 


      こうした状況では、調達購買部門は「誰でもできる仕事」に見えてしまい、スキルが評価されにくいのです。 しかし本来、調達購買業務は企業の利益に直結する「戦略業務」であり、設計・生産・営業のいずれとも 密接に関わる経営中枢機能のひとつです。 

       

      2. 外資企業に見る「戦略調達」の考え方 

      一方で、外資系企業では古くから、調達購買部門を企業収益に貢献する戦略部門として明確に位置づけているケースが多いのです。 


      組織構造としても「ソーシング(調達戦略)」と「パーチェシング(購買実務)」の役割を明確に分け、担当者が単なるオペレーションに終始しないよう設計されています。 


      たとえばソーシング担当者は、サプライヤー選定や市場分析、原材料価格の変動要因のモニタリングなどを担い、購買条件の最適化を進めます。 一方、パーチェシング担当者は発注管理や納期フォローなど、実行段階の効率化を担います。 


      こうした役割分担により、少数精鋭ながらも無駄のない体制が構築されています。 また、調達部門が「コスト削減」だけでなく「利益最大化」や「リスク回避」を担う重要ポジションであることが、社内外で明確に認識されています。

       

      3. インフレ時代に問われる「調達の経営力」

      原材料費や物流コストが上昇し続ける現在、企業にとって「調達力=経営力」と言っても過言ではありません。 どれだけ優れた製品を開発しても、製造に必要となる部材を適正なコストで安定調達できなければ利益は確保できず、価格転嫁にも限界があります。 


      このような環境下で、調達購買部門を単なるコストセンターとして扱い続ける企業と、戦略部門として育成していく企業とでは、今後の競争力に大きな差が生じるでしょう。 たとえば、次のような取り組みが求められます。

       

      •  市場データや為替動向を踏まえた調達戦略の立案 
      •  設計・開発段階からのコスト設計(Design to Cost) 
      •  サプライチェーンリスクを可視化し、調達先の多様化を図る 
      •  サプライヤーとのパートナーシップ強化による共創型のコスト改善 


      これらを主体的に推進できるのは、まさに調達購買部門です。 

       

      4. 中小企業における「専任不在」の課題 

      現実には中小企業では専任の調達担当者が存在しないケースも多いのではないでしょうか? 設計、営業、総務など他部門の社員が兼務しており、調達購買業務は片手間になっていることも珍しくありません。

       

      このような状況では、戦略的な調達プロセスを構築するどころか、属人的な対応が常態化してしまいます。 サプライヤーとの関係も固定化しやすく、コスト改善や品質向上のチャンスを逃してしまうのです。

       

      5. アウトソースによる「調達改革」の第一歩 

      こうした現状から中小企業こそ、まずは外部の専門家に調達購買業務をアウトソースするという選択肢を検討すべきです。たとえば、外部パートナーが次のような支援を行うことで、短期間で大きな改善効果を得ることができます。

       

      •  現状プロセスの可視化と課題抽出 
      •  適正在庫や発注フローの設計 
      •  調達戦略やコスト管理指標(KPI)の導入 
      •  費用対効果のモニタリング 


      そのうえで、実際にどの程度のコスト削減・納期短縮・業務効率化が実現できたかを評価し、 将来的に専任の調達購買部門を設けるかどうかを判断すればよい。始めから社内で人材を採用・育成するよりも、調達購買業務をアウトソースして仕組みを整えることが重要です。 

       

      6. 調達購買部門が経営を支える未来へ 

      調達購買は、単なるコスト削減のための部門ではありません。 経営視点を持ち、リスクを最小化しながら、利益を最大化するための戦略的パートナーです。 今後、企業がサステナビリティやグローバル競争に対応していくためには、調達購買部門の機能強化が 不可欠です。プレゼンスの低い裏方の部門から、経営を支える中核部門へ、その変革の第一歩は、「調達をコストではなく戦略と捉える」意識改革から始めましょう。

       

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      この記事の著者

      栗田 彩人

      製造業の購買・調達・業務プロセス改革を「現場視点」で支援し、成果が定着する仕組みづくりを実践指導します。

      製造業の購買・調達・業務プロセス改革を「現場視点」で支援し、成果が定着する仕組みづくりを実践指導します。


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