堆積させない クリーンルームの4原則 (その3)

 前回は、クリーンルーム4原則の2番目を解説しました。今回は、クリーンルーム4原則の3番目として、”堆積させない”について説明します。

 

1.清掃しやすいレイアウトにする

 クリーンルームの有無に限らず、ものづくりの現場では清掃は大切です。ところが、レイアウトが悪く清掃がし難いと、段々清掃をしなくなってしまいます。例えば、床にコードが這わしてあるだけでも、清掃し難く、ゴミ溜まりになります。足を引っ掛け、転倒すると怪我にも繋がりますし、仮にそれでプラグが抜けると設備停止にもなります。

 清掃は点検なりとも言い、清掃することでこのような色々な不具合や安全上の問題を発見できることがあります。清掃しなくなるとそういった発見が出来なくなり、逆に事故、災害の発生率が高くなります。レイアウトは、清掃し易さの他、作業の効率、ものの動かしやすさなども含め、総合的に検討しましょう。

 

2.製品等はクリーンブース内に保管する

 製品や部品は、例えクリーンルーム内であっても、クリーンブース内に保管するようにします。特に清浄度のレベルが低いところでは、大気中にゴミ、埃が多く、中には落下するものもあります。これらが、製品や部品に付着、堆積します。

 クリーンブースの中は、ブース上部から清浄度の高い風が吹き出すので、ゴミ、埃が寄って来ません。従って、製品や部品にも付着、堆積し難いのです。

 

3.カバーをつけて保管や運搬をする

 製品は、クリーンブース内に保管する以外に、カバーをつけて保管する、あるいは専用のストッカー内に保管すると言う方法もあります。また、クリーンルーム内であってもゴミや埃が付着、堆積するので、運搬はカバーをつけたいものです。

 長時間放置したものに懐中電灯で斜めから光を当てて見ると、ゴミ、埃の堆積が確認できるはずです。

   

4.配線は束ねて持ち上げる

 清掃し易いレイアウトというところでも説明しましたが、配線類が床に這っていると、清掃し難いだけでなく、そこがゴミ溜まりになってしまいますので、図1のように、束ねて持ち上げるようにしたいものです。

 図1.邪魔な配線  

5.床にものを置かない

 床付近は相当汚れています。清浄度の高いクリーンルームは、天井全面にフィルターが取り付けてあり、床全面に穴が開いていて、天井から床に気流が向かい、層流式あるいは一方向流と言われます。この場合、床の汚れはかなり少ないのですが、皆無ではありません。

 一方清浄度が低いクリーンルームは、乱流式と呼ばれるタイプが多く、ここでは気流が乱れますし、床付近はかなりのゴミ、埃が堆積しています。従って、人の歩行や台車などの通過でゴミ、埃が舞い上がります。

 床に製品や部品、計測器類などが置かれていると、舞い上がったゴミ、埃が付着しますので、床にはものを置かないのが基本です。また、天井付近も室内の熱等で上昇気流が発生し、それに伴い軽いゴミや埃が舞い上がります。床に沈降、堆積していたものでも、人や台車の通過で巻き上げたものがそのまま上昇気流に乗ることがあります。

 天井付近に滞留しているうちは良いのですが、停電や長期休暇等で工場が長時間停止した場合、室温が下がるので、上昇気流が無くなり落ちて来ます。

 製品などをブース下に保管すると言うのは、それらを防ぐのが目的です。

 この点について良い経験をしました。ある会社に呼ばれ、クリーン化診断をしていた時のことです。ちょうど部品等が入荷して来たのですが、それをロッカーに保管する為、一旦床に置き、ロッカーの扉を開けてから、保管していました。

 そこで、「床付近は非常に汚れています。天井付近も汚れています。床にはものを置かないようにしましょう。試しに天井から床まで30㎝間隔位でパーティクルを測定してみて下さい」と言って、その日は帰って来ました。すると翌朝その会社から電話があり、またメールでデータも届きました。

「昨日指導いただいたパーティクルを直ぐに測定してみたところ、製品を扱う高さでは、全く問題ありませんでしたが、天井付近や床付近では、工場停止水準でした。今後は入荷したものや製品を床に置かないようにルール化します」という内容でした。

 話だけで終わらせず、実際に...

やって見てその凄さ、価値を感じていただいた例です。

  

6.必要な物でも最小限にする

 現場で必要な物でも、ゴミがそれらに付着して持ち込まれたり、室内で発生したりしますので、持ち込みは極力少なくすることが大切です。この点をオペレータの感覚任せでは、持ち込み量にバラツキが生じます。一日分持ち込んだり1週間分持ち込む人など様々だと思います。

 会社、工場によっては、ルール化したり、置き場所に決められた数しか置けないように工夫しているところもありました。

  

7.ゴミの付着しにくい気流形状にする

 ゴミは気流に乗って移動したり、容器等がプラスチックの場合帯電しているものが多いので、その静電気によって付着します。

 ゴミが製品などに近寄らないように気流を観測し、気流の流れを改善します。気流は見えないので気を緩めがちですが、改善後も気流観測の糸(絹糸)等で良く観察しましょう。

◆関連解説『環境マネジメント』

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