体感 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その160)

 

 

これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきました。今回は6つ目の感覚としての「体感」について考えてみたいと思います。

 

1. 6つ目の感覚としての体感

我々は確かに五感を通じて、周辺の状況を察知したり、さまざまな情報を収集・蓄積し、五感を使ってコミュニケーションをしたり、さらにはイノベーションを生み出すということをしていきました。しかし、それは五感だけで行ってきたことでしょうか?

 

たとえば、ピアノを弾くという行為を例にとって考えてみたいと思います。ピアノを弾くには、譜面を視覚を使って見ながら、指の触覚で鍵盤の感覚を感じ、その結果としての音を聴覚で聴き、自分の指の動きを感じながら指の動きを調整するということをします。

 

この活動から言えること、指の動きを感じながら、指の動きを調整するという、五感とは異なる感覚を活用していること。五感で感じたことを統合化し、体全体の感覚で認識をしていること。つまり、人間は、五感では言い表せられない感覚を活用しているということです。それは、世の中で体感と呼ばれる感覚です。

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その159)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

(1)ハードル選手の子供の頃の経験

先日あるNHKの番組の中で、その参加者の一人である、ハードルの為末選手が、ハードル走ではハードル間の歩数を調整する能力が極めて重要で、その面で高い能力を持つ人は、子供のころに、海や川の岩場などで、水に落ちないように走る遊びの経験をしている人だと述べていました。岩場でうまく走るには、足の裏の感覚(触覚)も大事ですが、それは一部に過ぎなく、自分の筋肉の動きや体全体の緊張の感覚を捉え、そしてその結果、身体全体の筋肉をバランス良く使うことが求められます。

 

(2)第六感ではない明確な感覚

世の中には第六感という言葉があります。その意味は、普通は五感を超えた超感覚的な直観的能力というものです。またその存在は科学的には証明されていません。しかし、ここで議論している6つ目の感覚と言ってもよいと思われる体感は明らかに、日々の生活の中で人間は活用しています。

 

すでに、19世紀に英国の神経生物学者でノーベル医学・生理学賞の受賞者であるC.S.シェリントンが固有受容覚(proprioceptive sense)という言葉を利用して、この体感の存在をあきらかにしました。

 

2. 体感とイノベーション

ここで、体感とイノベーションの関係を整理したいと思います。

 

(1)センサーとして

我々は、五感から得られた情報を独立して感じているのではなく、また上述の体全体で感じる感覚を含め、複数の感覚を統合して体感として理解していることが多いように思えます。

 

(2)思考の道具として

そして、それら体感の蓄積から思考をし、イノベーションを含む...

アウトプット、たとえばハードル間では、どのようなステップで走るのが最適か、などを体感として想定している。

 

(3)アクチュエーターとして

そして個別の感覚を含め、体全体を使って、実際にアウトプットをする。そしてその結果を、上で述べたセンサーを使って、フィードバックを得る。そしてその繰り返しで、なんらかの活動・思考を行う。

 

次回もの体感の解説を続けます。

 

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