事業戦略の成否を左右するS字カーブ(ライフサイクル)

 研究者、技術者といえども、マーケティング力の強化、すなわち潜在ニーズをいかに先取りするかが今後の生き残りの条件であることを、これまでも述べてきました。その中でも、マーケティングコンセプトである「ターゲット」、「ニーズ」、「独自能力(差別化能力)」を、現場の課題を実施する上で重要な判断基準であることも強調してきました。しかし、環境が激変している時代には、基本的なマーケティングコンセプトだけでは十分ではありません。物の判断基準も考慮しなければ立ち行かなくなっています。

 もう少し、戦略的な思考の切り口でまとめると、図1のような事業戦略の判断基準(4C+3S)の考え方に行き着くと思います。4Cとは、「環境(Context)」、「顧客(Customer)」、「自社(Company)」、「競合(Competition)」の英語の頭文字を意味します。3Sとは、「選択」、「集中」、「差別化」の日本語の頭文字で表現しています。特にこれからの事業戦略の判断は、従来からの3Cに加えて、第4のC(環境)の重要性が増しています。ここで、注意しなければいけないことは、差別化要因を自社の都合で決めてはいけないということです。差別化要因を判定するのは、あくまでもお客様なのです。

 

図1 事業戦略の4Cと3S

 ところで環境というと、温暖化や資源などの地球環境問題をイメージしている方が多いのではないでしょうか。実はもう一つの重要な意味がそこに隠されています。図2のように、事業の進化トレンド(時間)を横軸に、出来栄えまたは効率(理想性)を縦軸にとり、そのシステムを関数としてプロットするとき、明確なS字型の進化を描きます。このS字型カーブの輪郭は、しばしば違った表現で記述されているようです。一般的には、4つのレベルを示す傾向にあるとされています。「導入期」、「成長期」、「成熟期」そして「衰退期」です。S字カーブは1つではなく、次から次へとS字カーブが現れ、進化していくのです。商品のライフサイクルと同じように、あるパターンに沿って進化していくのです。技術進化のトレンドの方向性を把握することで、自分が開発している技術が現在はどの段階にあり、今後はどうなるか予測も可能となるはずです。それをヒントとして、さらに新しい発明に結びつけることもできます。まだ、現在は不可能な技術であっても、ブレークスルーによって、実現する可能性も高くなるわけです。 

 図2の右側に示したように、S字カーブの曲線の位置によって、研究・技術者たちの目標が変化していることに気がつきます。つまり、導入期にはあまり細部にこだわらず、商品や技術などを導入することに一生懸命になります。成長期に入ると、「性能最大化」に焦点が...

移ります。成熟期になるにつれて、「効率最大化」、「信頼性最大化」と変化していき、衰退期には「コストの最小化」が最大の課題となるわけです。そこに至ると、いままでの商品や技術のブレークスルーが求められます。新たなS字カーブを創出するための研究開発を並行して実行することが生き残りの条件となります。例えば、家電メーカーは、液晶テレビ、白物家電などからのブレークスルー新商品を模索して苦しんでいます。それに対して、富士フイルムは、写真事業から医療・化粧品事業への劇的転換を図ったことは良い事例であると思います。

図2 進化のS字カーブ

◆関連解説『TRIZとは』

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