自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その119)

 

前回は、「整理するフレームワークで整理・構造化した知識の中で焦点を当てる重要部分を切り取る」の議論の中で「顧客だけでなく社会に目を向ける」と「社会に目を向けることで新な市場を創出する」に言及しました。今回はこの部分についてもう少し深く考えてみたいと思います。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

 

1.社会は様々な収益機会を提供してくれる

近年SDGsという言葉が、様々な場で使われるようになりました。SDGsがこのように頻繁に使われるようになったのは、地球温暖化の脅威など社会問題が大きくなる状況において、それら脅威は企業や人間が目先の収益や利益のことのみを考えてきたという反省がなされるようになったからです。

 

確かに地球の温暖化や古くは日本における水俣病などは、企業や人間の利己的な活動がもたらしたものです。しかし、よくよく考えてみると、逆にSDGsという概念が促すように、企業が広く社会全般に目を向けると、直接的にすぐにも利益の源泉となる対価を支払ってくれる目の前の顧客だけでなく、むしろ収益機会が増えるということがあります。

 

すなわち、広く社会を構成する様々なステークホルダーに広く目を向けることで、新しい市場を創出することができるということです。

 

社会問題が解決されることで、社会に対する追加的な新しい価値が生み出されます。その新しく創出された価値に対して、社会が成熟しより合理的な思考や活動をするようになり、また社会が地球温暖化をはじめとする拡大する脅威に直面し、社会が、そしてそれが転じて生まれた新しい顧客が、対価を払うようになってきているということがあります。

 

2.社会はpainの尽きぬ泉

グローバルな規模で広く社会に目を向けると、社会は大小様々な未解決のpainにあふれています。地球温暖化、人権侵害、人口の高齢化、難民問題、人種差別、新型コロナをはじめとする感染症・・・・。加えて、今後とも人間や企業の営みの中で、新しい大小様々なpainが次々に生まれてくることは間違いありません。

 

もちろん全てのpainが現状の環境や技術で解決できる訳ではありませんので、すぐ価値が創出され、それが収益になるということではありません。しかし、社会には上でも述べたように大小様々な未解決なpainが存在し、また次々にpainが生まれます。

 

その中には、既存の技術・科学やその延長上での技術・科学や既存の環境下においても工夫次第で解決、もしくは完全な解決に至らなくても軽減することが可能なpainは、相当数あるはずです。

 

3.広く社会に目を向け、pain解決の時間軸を長く持つことで価値創出機会が各段に拡大する

以上から広く社会に目を向けpainを探し、加えてそのpain解決のための活動を長期の視点で行うことで、自社にとって収益の源泉となる社会への価値提供機会が各段に拡大するということです。

 

さらには、通常他の企業(潜在を...

含む競合企業)はそのような視点を持っていない可能性は大きく、また仮にそのような視点を持っている競合企業が存在しても、価値創出の対象となるpainの数は膨大ですので競争になりません。

 

その結果、競合企業間で価格競争が起こらないことから、高い価格でその価値を提供することができるようになります。つまり、企業は社会に広く目を向けることで、新しい価値の創出機会の獲得と高い価格で販売できるという二重の効果から、大きな収益を実現することができるようになるのです。

 

次回に続きます。

 

 

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