波力発電とは

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波力発電とは

 

海には発電に利用できる海洋エネルギーが存在していますが、風によって引き起こされる波浪を利用する発電方法の波力発電は、現在開発途上にあります。

 

オイルショックをきっかけに1970年代、太陽光・風力などと並ぶ代替可能エネルギーとしての波力発電が注目されました。一方、近年、国内での波力発電研究はあまり行われなくなっていますが、2016年、波力発電の施設が岩手県久慈市の沖合に設置されました。現在は、三井造船・三菱重工が、ブラッシュアップした新しい発電装置の開発事業を行っています。

 

今回は、このような背景を踏まえて、波力発電の概要を解説します。

 

1.波力発電とは

 

波は海上の風によって起きる海面の上下運動です。この上下運動で生まれるエネルギーでタービンを回して電力に変換するのが波力発電の原理です。波力発電装置の種類は、海底に設置するもの、海上に設置するものなどさまざまです。

 

現在はいずれも実証試験段階ですが、ここでは2種類の波力発電装置を紹介します。まず波力発電「オイスター」は、波力発電機(海底10~16mに固定)が、波力を捉えるフラップによってピストンを作動させ、陸上の発電設備に高圧水を流して発電機によって発電します。将来は1基2MWの「オイスター」20基が並ぶ波力発電地帯が計画されています。

 

次は、波力発電「Pelamis」です。これは、へびの形の可動式波力発電装置で、4本の円筒形のシリンダがちょうつがいでつながり、海上面に浮かびます。波力でシリンダの角度が変化して、ちょうつがいのヒンジが曲がり、これを油圧にして発電機を作動させます。波力の強度に耐えて、過酷な条件下で年90%の稼働をしていますので、実用化が近いのではないでしょうか。

 

2. 波力発電のメリット・デメリット

 

最初にジャイロタイプの波力発電のメリットですが、これ以外の波力発電は、複雑な機構や空気を利用して波力を発電機回転へと変換させているので、発電施設が過大になってしまいます。一方ジャイロタイプは、浮きに設置した高速で回る円盤が波に揺られて傾き、それを元に戻そうとする回転運動で発電するため、施設が小規模で済みます。単位面積当たりの発電量で考えると、風力発電のおよそ500%、太陽光のおよそ2000~3000%です。

 

次は、波力発電全体に当てはまるメリットですが、天候の影響を受けにくいことです。太陽光や風力の発電量は天候に左右されます。波力発電は、常時安定して電気を生み出すことが可能です。それは波が全くないことはないからです。

 

波力発電のデメリット・課題ですが、建設費、メンテナンス費が大きく、海洋生物への影響などが考えられます。次にデメリットを3点述べます。

 

【漁業との関係】

波力発電所に適している場所は、海流が盛んに流れる場所で漁場として最適な所でもあります。このため発電所の設置を強行すると、漁場・漁業に悪影響を与えることになります。

 

【安全面】

近海や防波堤に波力発電所を設置することになりますので、津波・台風が発生して、継続的に大きな波力を受けても、破損・崩壊しない強度が必要です。

 

【コスト面】

大きな波力を受け、塩害のリスクがありますので、維持費用が高く、建設時にも発電装置設置の労力・コストが他の再生可能エネルギー施設に比較して高額になります。

 

3.波力発電、本格導入に向けて

 

四方を海に囲まれた日本では、波力は有効な自然エネルギーになり得るだけでなく、地域にとっても独立電源の確保という視点から注目される分野です。波力発電の技術開発が進んでも、波力エネルギー分布のデータ収集はこれからといった状況です。前述のようにコストを始め、台風などへの対策や漁業との関係など、調査と課題解決が必要な項目は多岐に渡ります。

 

4.波力発電のまとめ

 

海には発電に利用できるエネルギーが存在していますが、風によって引き起こされる波の力を利用する波力発電は、現在開発途上にあります。

 

波は、海上の風によって起きる海面の上下運動です。この上下運動で生まれるエネルギーでタービンを回して電力に変換するのが波力発電の原理です。波力発電装置の種類は、海底に設置す...

波力発電とは

 

海には発電に利用できる海洋エネルギーが存在していますが、風によって引き起こされる波浪を利用する発電方法の波力発電は、現在開発途上にあります。

 

オイルショックをきっかけに1970年代、太陽光・風力などと並ぶ代替可能エネルギーとしての波力発電が注目されました。一方、近年、国内での波力発電研究はあまり行われなくなっていますが、2016年、波力発電の施設が岩手県久慈市の沖合に設置されました。現在は、三井造船・三菱重工が、ブラッシュアップした新しい発電装置の開発事業を行っています。

 

今回は、このような背景を踏まえて、波力発電の概要を解説します。

 

1.波力発電とは

 

波は海上の風によって起きる海面の上下運動です。この上下運動で生まれるエネルギーでタービンを回して電力に変換するのが波力発電の原理です。波力発電装置の種類は、海底に設置するもの、海上に設置するものなどさまざまです。

 

現在はいずれも実証試験段階ですが、ここでは2種類の波力発電装置を紹介します。まず波力発電「オイスター」は、波力発電機(海底10~16mに固定)が、波力を捉えるフラップによってピストンを作動させ、陸上の発電設備に高圧水を流して発電機によって発電します。将来は1基2MWの「オイスター」20基が並ぶ波力発電地帯が計画されています。

 

次は、波力発電「Pelamis」です。これは、へびの形の可動式波力発電装置で、4本の円筒形のシリンダがちょうつがいでつながり、海上面に浮かびます。波力でシリンダの角度が変化して、ちょうつがいのヒンジが曲がり、これを油圧にして発電機を作動させます。波力の強度に耐えて、過酷な条件下で年90%の稼働をしていますので、実用化が近いのではないでしょうか。

 

2. 波力発電のメリット・デメリット

 

最初にジャイロタイプの波力発電のメリットですが、これ以外の波力発電は、複雑な機構や空気を利用して波力を発電機回転へと変換させているので、発電施設が過大になってしまいます。一方ジャイロタイプは、浮きに設置した高速で回る円盤が波に揺られて傾き、それを元に戻そうとする回転運動で発電するため、施設が小規模で済みます。単位面積当たりの発電量で考えると、風力発電のおよそ500%、太陽光のおよそ2000~3000%です。

 

次は、波力発電全体に当てはまるメリットですが、天候の影響を受けにくいことです。太陽光や風力の発電量は天候に左右されます。波力発電は、常時安定して電気を生み出すことが可能です。それは波が全くないことはないからです。

 

波力発電のデメリット・課題ですが、建設費、メンテナンス費が大きく、海洋生物への影響などが考えられます。次にデメリットを3点述べます。

 

【漁業との関係】

波力発電所に適している場所は、海流が盛んに流れる場所で漁場として最適な所でもあります。このため発電所の設置を強行すると、漁場・漁業に悪影響を与えることになります。

 

【安全面】

近海や防波堤に波力発電所を設置することになりますので、津波・台風が発生して、継続的に大きな波力を受けても、破損・崩壊しない強度が必要です。

 

【コスト面】

大きな波力を受け、塩害のリスクがありますので、維持費用が高く、建設時にも発電装置設置の労力・コストが他の再生可能エネルギー施設に比較して高額になります。

 

3.波力発電、本格導入に向けて

 

四方を海に囲まれた日本では、波力は有効な自然エネルギーになり得るだけでなく、地域にとっても独立電源の確保という視点から注目される分野です。波力発電の技術開発が進んでも、波力エネルギー分布のデータ収集はこれからといった状況です。前述のようにコストを始め、台風などへの対策や漁業との関係など、調査と課題解決が必要な項目は多岐に渡ります。

 

4.波力発電のまとめ

 

海には発電に利用できるエネルギーが存在していますが、風によって引き起こされる波の力を利用する波力発電は、現在開発途上にあります。

 

波は、海上の風によって起きる海面の上下運動です。この上下運動で生まれるエネルギーでタービンを回して電力に変換するのが波力発電の原理です。波力発電装置の種類は、海底に設置するもの、海上に設置するものなどさまざまです。

 

波力発電全体に当てはまるメリットですが、天候の影響を受けにくいことです。太陽光や風力の発電量は天候に左右されます。波力発電は、常時安定して電気を生み出すことが可能です。それは、波が全くないことはないからです。

 

波力発電のデメリット・課題ですが、建設費、メンテナンス費が大きく、海洋生物への影響などが考えられます。

 

四方を海に囲まれた日本では、波力は有効な自然エネルギーになり得るだけでなく、地域で独立した電源が確保できるという視点からも注目される分野ですが、コストを始め、台風などへの対策や漁業との関係など、調査と課題解決が必要な項目は多岐に渡ります。

 

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

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