サプライチェーンマネジメントのプッシュとプル

 サプライチェーンマネジメントのプッシュ型とは、需要をあらかじめ見込んでいつ・どれだけ・誰に・売れるかの実需が発生する前に製品・仕掛り在庫を用意して、実際の需要が発生すると在庫を割り当て手配するものです。
 一方でプル型では供給業務を実需の発生、又はその時点の近くまで引き伸ばして資材の手配(支払い)と実需にともなう販売(入金)までのリードタイムを短縮します。
 回転寿司店においては、折詰寿司弁当から、回転寿司、カウンターでのオーダーまで、製造と実需の時間差によるプッシュ型からプル型まで下図のようにバラエテイに富んだSCMのサンプルが存在しています。

図 サプライチェーンの各種モデル


 サプライチェーンマネジメントといえばプル型が代表的と考えられがちですが、パソコンや自転車、コンピュータのような受注をベースに組み立てる方式にも、実は資材調達のリードタイムの長いパーツやボトルネックになるオペレーションにはプッシュ型の見込み生産のパーツバッファーを組合せています。

 住宅や飛行機などの受注生産型の製品でも、プッシュ型で手配するパーツの供給業務と、実需によって起動するプル型のオペレーションが共存しています。構成部品の調達とサプライ業務の特性によって、最適な形態を構築する必要があるのです。

 サプライチェーンの全体目標と資材やサプライ業務オペレーションの制約によって最適形態を判断する訳ですが、制約と考えたのに実は制約とはならない場合もあります。重要なことは従来の先入観念を一度クリアして、可能性を多くの代替案で追求する姿勢です。例えば調達先が長年のき合いがあって変更できないとか、部品メーカーが強くて調達リードタイムは絶対短縮出来ないとか、熟練の必要な工程だから担当者は限られておりそれ以上加工能力が上げられないとか。最初から言い訳する前にしつこく可能性を追求することが必要です。

 サプライヤーを巻き込んで改善活動するときには、長いスパンで両社の利益になる目標を設定することで従来制約と考えていたことがそうでなくなることもあるものです。

 プッシュ型とプル型SCMの多くの技を磨くには、在庫バッファーの場所と量そして安全なオペレーションがポイントです。ダッシュとブレーキが自在になれば車間距離が無くても安全に運転できるように、オペレーションの速度制御が良ければ在庫が殆どなくてもモノ不足を避ける事が出来ます。サプライチェ...

ーン上では需要変動特性とオペレーションの速度制御の能力でサプライチェーンの管理を設計することです。

 お刺身の鮮度確保にはリードタイム短縮が王道ですが、「毎朝魚市場に小口の仕入をする」「漁船での瞬間冷凍」「活き魚の仕入を水槽で在庫する」など代替案を多数つくります。水槽のスペースを制約とするかしないかも要検討事項です。また目的が仕入を安くすることか、鮮度で売上をあげることか、すなわちコストかスループットか、評価する指標によっても設計が変わってくる点に注意しましょう。

◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』

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