クリーン化活動、3つのポイント 第2回 クリーン化について(その5)

 

 前回のクリーン化について(その4)クリーン化活動、3つのポイント 第1回に続いて解説します。

◆ クリーン化活動、3つのポイント(その2)

 私のクリーン化における25年の現場経験から活動に取り組むためには、3つのポイントがあると考えています。今回は前回に引き続き、3つ目のポイントを解説します。

 

3、クリーン化はすべてのベース

 

 

 上図の4つの項目はクリーン化と強い関係があります。

(1) 安全確保とクリーン化との関係

 ある半導体製造の前工程(クリーンルーム工程)で、作業者がウエハーの入ったカセット(専用容器)を両手で掴(つか)み工場の中央通路を運んでいました。その作業者が途中で中央通路から外れ、設備の間の狭い通路に入って行きました。理由は、その奥に顕微鏡があり、外観検査をする目的でした。その時、通路両側の設備から出ている電源コード、信号関係の配線、真空、圧空、窒素などの配管、チューブ類に足を引っかけて転んでしまったのです。カセットには大口径のウエハーが25枚入っています。カセットも非常に重かったので片手では持てません。

 この作業者は、前工程の最終まで完成したウエハーの単価を知っていたので、放り出すことができず、製品を持ったまま転び、顔を打って怪我(けが)を負ってしまいました。何とか製品は不良品にすることなく、守ったということです。ここまでは「床を這(は)っている配線、配管類に躓(つまづ)いたことで転倒し、顔を打った」という労働災害です。

 これをクリーン化側の視点からみると配線、配管などが床を這っているため清掃しづらく、ゴミ溜まりになってしまうことから、段々と清掃しなくなるわけです。

 それを見た別の作業者が配線、配管類を束ねて持ち上げておけば、コード類の下も清掃しやすくなる上、狭い通路は通行止めにすることで、このような事故も防げると私は思ったのです。早速、結束バンドで束ねる作業に入ったのですが、その上にもコード類が走っていて、自分が考えたように結束バンドで束ねてありました。その結束バンドの尻尾が自分の方に向かっていて、点にしか見えない、つまり視角に入らず目を突いたという事故が発生したのです。これも労働災害です。

 結束バンドは、一度縛ると解いて再使用することができないタイプが多いようです。従って、もう尻尾は不要なので切ってしまいましょうということです。

 この事例はセミナーの中でも紹介しています。休憩時間に「同様の事故があった」と言ってくる人もいました。同様の話を数件聞いているので、潜在的にはもっと沢山あると思います。

 私がそのことを知っていて、過去いろいろな企業の現場指導で、結束バンドの尻尾が切られてないものを見掛け、指摘すると「あなたはクリーン化の指導に来たのでしょう。どうして安全のことまで言うんですか?」と言われることがあります。安全はすべてに優先します。気が付いても指摘せず、目の前で事故が起きたら、どんなに悔やむことでしょう。不安全なことは、気づいた人がその場で指摘し、事故、災害を未然に防いでほしいのです。

 

(2) 利益確保とクリーン化の関係

 この項目は単純です。ゴミ、汚れを原因とした不良品を作らないということです。工程中で不良が発生したり、廃棄物が出ると、その分利益が減るということになります。お客様への納期が守れず、納入...

数も不足すると、追加で補填(ほてん)するためQ(品質)C(コスト)D(納期)いずれにも影響が出ます。

 これがあまりにも多いと、利益を圧迫する。或(ある)いは赤字になります。不良、廃棄されたものも、その工程までの原料、電気、ガス、薬品、検査作業など細かくみていくと、様々なロスが生じています。じわりじわりと侵食するように利益が削られていくのです。「クリーン化活動が経営に直結する」といわれる理由の一つです。

 ゴミ、異物が原因で廃棄されるとしたら、それらを工程中でどのように排除していくかが、クリーン化活動における不可欠要素になります。安定生産とクリーン化の関係、人財育成とクリーン化の関係については、次回に解説します。

 

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