モーダルシフトとは

更新日

投稿日

◆ 環境にやさしいモーダルシフトへの転換


1. 日本のCO2削減は最重要課題

 モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。[1]

 地球温暖化などの気候変動を抑えるため2015年のパリ協定で「世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標が採択されました。気温上昇を抑えるため、日本は2030年までに温室効果ガス排出26%削減(2013年度比)という目標が決定しており、現在8.4%削減(環境省 2017年温室効果ガス排出量)しています。順調に見えますが、日本の二酸化炭素排出量は世界で5番目に多く、SDGsの目標13「気候変動に具体的対策を」でも日本は「最重要課題」という評価を受けておりさらなる改善が求められています。[2]

 一方で、2017年度における日本の二酸化炭素排出量(11億9,000万㌧)のうち、運輸部門からの排出量(2億1,300万㌧)は17.9%を占めています。自動車全体では運輸部門の86.2%(日本全体の15.4%)、うち、貨物自動車が運輸部門の36.5%(日本全体の6.5%)を排出しています。[3]

 ・鉄道91%、船舶84%の削減が期待

 この貨物用自動車のうちトラック(営業用貨物車)の2016年度の数値として1㌧の貨物を1km運ぶ(=1㌧キロ)際に排出されるCO2の量は240gとされています。対して、同じく2016年度の数値として鉄道は21g(約1/11)、船舶は39g(約1/6)といわれていることからトラックよりも大幅に二酸化炭素の排出量が少ないことが分かります。そのため、輸送方法を変えることで鉄道利用の場合91%、船舶利用の場合84%のCO2排出量を削減が期待できます。したがって、地球温暖化対策としてモーダルシフトは有効であるといえます。

2. 注目される業務軽減や効率化

 また、モーダルシフトによる業務の軽減や効率化についても注目されています。例えばモーダルシフトを行わない場合、倉庫間や集配拠点間の輸送など、幹線輸送となる部分について数百kmの距離を運転するため、出発した拠点に戻ってくるまで数日かかってしまう場合があります。他方、モーダルシフトを行えば最寄りの転換拠点となる箇所まで、もしくは最寄りの転換拠点からの運転だけで済むため、効率的な業務を行うことができ、近年の労働力不足の解消や長時間運転など“働き方改革”という観点からも期待できます。[1]

 ・コスト高や災害時遅延への懸念も

 しかしながら、デメリットが存在することも確かです。モーダルシフトの鉄道を利用する際の課題として小口の輸送に適していないことや、急な出荷量の増減に対応できないこと、トラックに比べて輸送コストが高いことなどが挙げられています。また、2015年に国が荷主に行った調査では、事故や災害時に鉄道が不通となる「輸送障害」に対する懸念や不安が明らかになりました。鉄道の輸送障害は、1995年~2014年に20年間に阪神・淡路大震災や台風で線路が不通になるなど延べ11件発生し、一度発生すると長期化することが多く、このような点が鉄道へのモーダルシフトの導入を阻む要因になっているといえます。[4]

 また、船舶による海上モーダルシフトの課題としては、距離によってはトラックで運んだ方が安価で、海上輸送はダイヤの縛りなど時間がかかることなどが指摘され、これらが導入への障害となっているといわれています。[5]

 これらのメリットとデメリットをよく理解し、課題解決に向けた取り組みがさらに進むことで導入の促進が図られることを期待します。

[参考文献]
[1] 国土交通省ホームページ htt...

◆ 環境にやさしいモーダルシフトへの転換


1. 日本のCO2削減は最重要課題

 モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。[1]

 地球温暖化などの気候変動を抑えるため2015年のパリ協定で「世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標が採択されました。気温上昇を抑えるため、日本は2030年までに温室効果ガス排出26%削減(2013年度比)という目標が決定しており、現在8.4%削減(環境省 2017年温室効果ガス排出量)しています。順調に見えますが、日本の二酸化炭素排出量は世界で5番目に多く、SDGsの目標13「気候変動に具体的対策を」でも日本は「最重要課題」という評価を受けておりさらなる改善が求められています。[2]

 一方で、2017年度における日本の二酸化炭素排出量(11億9,000万㌧)のうち、運輸部門からの排出量(2億1,300万㌧)は17.9%を占めています。自動車全体では運輸部門の86.2%(日本全体の15.4%)、うち、貨物自動車が運輸部門の36.5%(日本全体の6.5%)を排出しています。[3]

 ・鉄道91%、船舶84%の削減が期待

 この貨物用自動車のうちトラック(営業用貨物車)の2016年度の数値として1㌧の貨物を1km運ぶ(=1㌧キロ)際に排出されるCO2の量は240gとされています。対して、同じく2016年度の数値として鉄道は21g(約1/11)、船舶は39g(約1/6)といわれていることからトラックよりも大幅に二酸化炭素の排出量が少ないことが分かります。そのため、輸送方法を変えることで鉄道利用の場合91%、船舶利用の場合84%のCO2排出量を削減が期待できます。したがって、地球温暖化対策としてモーダルシフトは有効であるといえます。

2. 注目される業務軽減や効率化

 また、モーダルシフトによる業務の軽減や効率化についても注目されています。例えばモーダルシフトを行わない場合、倉庫間や集配拠点間の輸送など、幹線輸送となる部分について数百kmの距離を運転するため、出発した拠点に戻ってくるまで数日かかってしまう場合があります。他方、モーダルシフトを行えば最寄りの転換拠点となる箇所まで、もしくは最寄りの転換拠点からの運転だけで済むため、効率的な業務を行うことができ、近年の労働力不足の解消や長時間運転など“働き方改革”という観点からも期待できます。[1]

 ・コスト高や災害時遅延への懸念も

 しかしながら、デメリットが存在することも確かです。モーダルシフトの鉄道を利用する際の課題として小口の輸送に適していないことや、急な出荷量の増減に対応できないこと、トラックに比べて輸送コストが高いことなどが挙げられています。また、2015年に国が荷主に行った調査では、事故や災害時に鉄道が不通となる「輸送障害」に対する懸念や不安が明らかになりました。鉄道の輸送障害は、1995年~2014年に20年間に阪神・淡路大震災や台風で線路が不通になるなど延べ11件発生し、一度発生すると長期化することが多く、このような点が鉄道へのモーダルシフトの導入を阻む要因になっているといえます。[4]

 また、船舶による海上モーダルシフトの課題としては、距離によってはトラックで運んだ方が安価で、海上輸送はダイヤの縛りなど時間がかかることなどが指摘され、これらが導入への障害となっているといわれています。[5]

 これらのメリットとデメリットをよく理解し、課題解決に向けた取り組みがさらに進むことで導入の促進が図られることを期待します。

[参考文献]
[1] 国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html ダウンロード日2020.4.3
[2] 日本気象協会ホームページ https://www.jwa.or.jp/news/2019/12/8833/ ダウンロード日2020.4.1
[3] 国土交通省ホームページ https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html ダウンロード日2020.4.12
[4] 乗りものニュース https://trafficnews.jp/post/45823/2 ダウンロード日2020.4.12
[5] 物流ウィークリー https://weekly-net.co.jp/news/21284/ ダウンロード日2020.4.12

   続きを読むには・・・


この記事の著者

中谷 明浩

「食品技術のリエゾンマン」をモットーに、食用油脂、特に使用方法のお悩み、食品工場の技術課題を解決へとお導き致します。研究開発、ビジネス、戦略立案に役立つ特許情報のご提供とアドバイスを致します。

「食品技術のリエゾンマン」をモットーに、食用油脂、特に使用方法のお悩み、食品工場の技術課題を解決へとお導き致します。研究開発、ビジネス、戦略立案に役立つ特...


「モーダルシフト」の活用事例

もっと見る
グローバルロジスティクスとは、海上輸送コストを考える

【目次】 1. フルコンテナにするための工夫 最近では海外が大きな市場になって日本の製造業はこぞって海外進出しています。従来は海外...

【目次】 1. フルコンテナにするための工夫 最近では海外が大きな市場になって日本の製造業はこぞって海外進出しています。従来は海外...


【ものづくりの現場から】海からのゼロエミッションチャレンジ(EV船販売)

図1、EV船(ロボティックボート)自動着岸イメージ [同社資料より]   【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点...

図1、EV船(ロボティックボート)自動着岸イメージ [同社資料より]   【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点...