クリーン化教育を通じた人財育成(その2)

更新日

投稿日

 前回に続き、クリーン化教育の経験に基づく私の人材育成に関する考えと事例をお話します。

 

7.人材(財)育成

 さて正しくは、そして一般的には人材育成と表現することが多いと思いますが、私は人財と表現するようにしています。 人を材料扱いしているうちは育たない。材料はいくら育てても材料です。しかし財産は上手に育てると大きくなります。またいい加減な育て方をすると減ってしまったり効果が出なかったりします。そんなことを思いながら、人財育成と表現し、真剣に対峙しています。

 

8.品質は人の質

 品質は人の質と言われますように、人の質が製品の質を左右します。 このことはどの会社でも良く分かっているので、良い人財を採用しようとしますし、入社してからも、さらにその能力を高めようと、様々な教育があるわけです。

 ただし、その沢山の教育がとりあえず消化するだけになっていないでしょうか。生きた教育の場にしたいものです。 “お客様を意識したものづくり”には心が入ります。ですから、品質は人の質、人の質は心の質と言う連鎖が生じます。心まで育てるような人づくりをしたいものです。この部分は、また別途お話しします。

 見逃してしまいそうな、小さな、でもとても素晴らしいOJTの例を2つ紹介します。

 

9.インドネシアの工場のOJT

 インドネシアのある工場に現場診断に行った時の社長の話です。彼は、国内の工場在籍時代にクリーン化を一生懸命やったメンバーでした。 赴任した時に、工場に沢山のゴミがあることに気付いたとのこと。その日から彼はビニール袋を持って黙々とゴミを拾い歩いたそうです。すると現地の管理職が集まってきて何をしているのかとビニール袋を覗き込む。そこで「こんなゴミが落ちていてはいけないんだよ」と言いながらまた黙々と拾って歩く。 それを継続していると、今度はオペレータが集まってくる。そうすると又ゴミを見せながら同じことを言う。すると社長がやっているのだからと段々ゴミを拾う人が増えてくる、と言う話でした。

 現場の総責任者がやっていれば無視するわけには行かず、全員が拾う習慣を身につける。裏を返せば、TOPが背中を見せて部下を育てるというOJTの事例です。

 

10. シンガポールの工場のOJT

 シンガポールの工場でクリーン化診断をした時のことです。 赴任者がついてくれるはずでしたが、急な会議が入り立会いができなくなり、代わりに現地の日本語ができる管理職を付けてくれました。この時1台の設備を診断して発塵個所を指摘し、なぜ発塵するのか、なぜゴミがあってはいけないのかを説明しました。 彼に、次はどの設備を見ればいいかと聞くと、2台目の設備を指示しました。私はその設備のところに行き、診断をはじめましたが当の本人が来ません。どうしたのかと振り返ると、彼の所に周囲のオペレータがパッと集まり、...

 前回に続き、クリーン化教育の経験に基づく私の人材育成に関する考えと事例をお話します。

 

7.人材(財)育成

 さて正しくは、そして一般的には人材育成と表現することが多いと思いますが、私は人財と表現するようにしています。 人を材料扱いしているうちは育たない。材料はいくら育てても材料です。しかし財産は上手に育てると大きくなります。またいい加減な育て方をすると減ってしまったり効果が出なかったりします。そんなことを思いながら、人財育成と表現し、真剣に対峙しています。

 

8.品質は人の質

 品質は人の質と言われますように、人の質が製品の質を左右します。 このことはどの会社でも良く分かっているので、良い人財を採用しようとしますし、入社してからも、さらにその能力を高めようと、様々な教育があるわけです。

 ただし、その沢山の教育がとりあえず消化するだけになっていないでしょうか。生きた教育の場にしたいものです。 “お客様を意識したものづくり”には心が入ります。ですから、品質は人の質、人の質は心の質と言う連鎖が生じます。心まで育てるような人づくりをしたいものです。この部分は、また別途お話しします。

 見逃してしまいそうな、小さな、でもとても素晴らしいOJTの例を2つ紹介します。

 

9.インドネシアの工場のOJT

 インドネシアのある工場に現場診断に行った時の社長の話です。彼は、国内の工場在籍時代にクリーン化を一生懸命やったメンバーでした。 赴任した時に、工場に沢山のゴミがあることに気付いたとのこと。その日から彼はビニール袋を持って黙々とゴミを拾い歩いたそうです。すると現地の管理職が集まってきて何をしているのかとビニール袋を覗き込む。そこで「こんなゴミが落ちていてはいけないんだよ」と言いながらまた黙々と拾って歩く。 それを継続していると、今度はオペレータが集まってくる。そうすると又ゴミを見せながら同じことを言う。すると社長がやっているのだからと段々ゴミを拾う人が増えてくる、と言う話でした。

 現場の総責任者がやっていれば無視するわけには行かず、全員が拾う習慣を身につける。裏を返せば、TOPが背中を見せて部下を育てるというOJTの事例です。

 

10. シンガポールの工場のOJT

 シンガポールの工場でクリーン化診断をした時のことです。 赴任者がついてくれるはずでしたが、急な会議が入り立会いができなくなり、代わりに現地の日本語ができる管理職を付けてくれました。この時1台の設備を診断して発塵個所を指摘し、なぜ発塵するのか、なぜゴミがあってはいけないのかを説明しました。 彼に、次はどの設備を見ればいいかと聞くと、2台目の設備を指示しました。私はその設備のところに行き、診断をはじめましたが当の本人が来ません。どうしたのかと振り返ると、彼の所に周囲のオペレータがパッと集まり、今指導を受けたのはここの発塵だ。これはなぜいけないかとその場でOJTをしていました。

 この方が状態も変化しないうちに指導でき、現場診断報告会など後から情報だけが伝わってくるより新鮮で生きた教育だと思ったのです。私が彼に説明している時に、周りのオペレータがこちらの様子をうかがっていたのはそういうことでした。小さな、見逃しそうな光景でしたが、私もそれを見てハッとしました。地味な指導ですが、誰がこのように指導、育成したのでしょうか。その時、私もこういった指導、育成をしたいものだとつくづく思ったものです。

◆関連解説『環境マネジメント』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め...


「クリーン化技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
海外事情:現場診断 クリーン化について(その86)

    【この連載の前回へのリンク】 前回、海外の人財育成について紹介してきました。今回は、海外の現場診断について紹介します。 ...

    【この連載の前回へのリンク】 前回、海外の人財育成について紹介してきました。今回は、海外の現場診断について紹介します。 ...


クリーン化4原則-1 クリーン化について(その26)

     連載のその16で『クリーン化4原則+監視』を述べました。今回から、図1のクリーン化4原則について個別に解説します。  ...

     連載のその16で『クリーン化4原則+監視』を述べました。今回から、図1のクリーン化4原則について個別に解説します。  ...


防塵紙もしくは無塵紙、クリーンペーパーの扱いについて

 別稿にて、短繊維と長繊維の話をしました。今回は、防塵紙から出る繊維ゴミについてお話しします。防塵紙の他、無塵紙、クリーンペーパーなどと呼ばれています。 ...

 別稿にて、短繊維と長繊維の話をしました。今回は、防塵紙から出る繊維ゴミについてお話しします。防塵紙の他、無塵紙、クリーンペーパーなどと呼ばれています。 ...


「クリーン化技術」の活用事例

もっと見る
クリーン化は、ものづくり企業の基本

 クリーン化指導で通っていたある会社の現場監督者から聞いた事例です。私が訪問する少し前に技術発表会があり、その場で発表したある技術課長の話です。   ...

 クリーン化指導で通っていたある会社の現場監督者から聞いた事例です。私が訪問する少し前に技術発表会があり、その場で発表したある技術課長の話です。   ...


クリーン化による強い現場づくりとは

1. 強い現場とは     苦戦を強いられる日本の製造業にとって、最大の資産は「人」です。決められた事を決められた通りやる「あたりまえ」の製造は既に我々...

1. 強い現場とは     苦戦を強いられる日本の製造業にとって、最大の資産は「人」です。決められた事を決められた通りやる「あたりまえ」の製造は既に我々...


防塵衣のクリーニングについて

 今回は、ものづくり企業の防塵衣のクリーニング全般について解説します。   1. 防塵衣着用の目的  クリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、...

 今回は、ものづくり企業の防塵衣のクリーニング全般について解説します。   1. 防塵衣着用の目的  クリーンルームの中でのゴミの最大の発生源、...