中国工場の実状を知る、部品・材料について 中国工場の品質改善(その35)

 前回のその34に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 【3.5 教育と定着の具体的内容】

 ここでは教育の具体的内容と定着のための考え方を説明します。

(1)教育の内容

 前回のその33、①、②に続いて解説します。

③ 主管・科長への教育

 主管・科長は主に管理業務ですから、マネジメントができ、コミュニケーション取れることが前提になります。そして主管・科長クラスには、課題解決能力を持ってもらうことが必要です。担当する工程での不具合対策の立案・実施や問題点を自分たちで見つけ改善していく力が必須なので、そのための教育をしなければなりません。加えて、主管・科長は工場長を補佐する立場であると考えています。ですから経営方針を理解し、それを自部門の業務に落し込み管理することが求められますので、そのための教育が必要となります。

(2)定着のための施策

 次に定着のための施策ですが、考え方の基本は従業員の動機付けです。そのためには、仕事に対するやりがいを与え「どうしてこの会社・工場で働くのか、この仕事をするのか」という動機を与えるようにします。

① 自分の仕事の重要性を理解させる

 やりがいについては、自分のやっている仕事に対してやりがいを感じてもらうことです。そのためには、製品の品質がどれだけ重要なものかを話した上で、3Mのところで書いたように自分がやっている仕事(作業・検査)が製品の品質を守るためにどれだけ大切なことで、そしてそれが会社にとっても重要なものであるということを理解し認識させることがとても大事になります。

② 頑張った人、成果を出した人に報いる人事制度とする

 やりがいのもう一つは、やはり給与です。高い安いというのはもちろん重要な要素ですが、頑張れば給与が上がる、多く貰えると感じてもらえるような給与体系にすることが大事です。社内の資格取得やスキル習得が給与に反映される給与体系にすることで、作業者の意欲を引き出す仕組みを作りましょう。

 また、昇格についても基準を明確にし、公にすることで公正な人事制度となり、従業員のモチベーションにつながります。

③ 従業員とのコミュニケーションを取る機会を設け、従業員を大事にしていると伝える

 もう一つ加えるとすればこれで、従業員が会社にとって大事な存在であると位置づけ、それを従業員が実感できるようにすることです。

 例えば、春節の時期に行う忘年会や新年会をただの宴会終わらせないで、そこで会社の思いが伝わるようにします。また、そういう場では、普段は言葉を交わす機会のない作業者たちと会社幹部がコミュニケーションを取り、思いを直接伝えるようにしてもらいたいものです。

【旧正月の行事は従業員のモチベーション】

 旧正月の中国工場では、忘年会や新年会が開かれます。これは年に一度のビッグイベントといってよいでしょう。工場の規模にもよりますが、従業員全員参加で行う会社も少なくありません。

 以前、支援した大連の会社でも近くのレストランを貸切りにして、従業員総出で盛大に開いていました。そこではカラオケや踊りなどが行われ、ある女性の班長などは、切れのあるダンスを披露して仕事上の顔とは違う一面を見せてくれました。

 中国工場では従業員の定着率を少しでも高めることが、品質管理の面からも必要であり、取り組まなくてはなりません。今は従業員の意識も以前とは変わってきているので、給料に加えて働くことへのモチベーションを持たせることが大事になっています。

 そのためには、少しでも「自分の工場」と思うような帰属意識を持ってもらうことです。工場で働くモチベーションが帰属意識につながります。こうした意識を持たせるには日頃からの従業員に対する意識付けや仕組みが必要ですが、たまに行うイベントも大事な役割を果たします。

 筆者が駐在していた工場では、旧正月明けに12、3人座れる円卓が50卓くらいある大きなレストランを貸切りにして盛大に新年会を催していました。

 新年会のメインは、所属ごとの歌や踊りでした。グループでの出し物となるのでぶっつけ本番...

ではできませんので、事前の練習が必要ですが、実はこれが従業員の楽しみになっていたのです。踊りの衣装も揃(そろ)えてみんな一生懸命練習していました。衣装の費用については、上限金額を決めて会社が補助していました。

 旧正月の忘年会や新年会もただ飲み食いするだけでなく、従業員の意向を酌んだ催しにすることで、従業員が工場で働くモチベーションに少しでもつながるようにしたいものです。大事なのは、工場トップと従業員が直に接する場ということです。この機会をうまく使ってトップ自らが従業員を大切にしているということを伝えてください。

 従業員のモチベーションに関しては、この1回の催しだけで事足りるものではありませんが、積み重ねですから一つひとつの機会を大事にしたいものです。

 次回は、3.6 中国工場での人材マネジメントから、解説を続けます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載 

◆関連解説『生産マネジメントとは』

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