企画が通らない時に、確認することとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その59)

1. 企画の承認が得られない悩み

 商品・R&D開発テーマの企画提案について、なかなか承認が得られないという相談を受けました。この悩みは大企業で起こりがちとも言われますが、企業の規模に関わらずどの企業でも起こり得る課題となっています。

 もちろん企画担当者は必死に将来の市場を予測したり、コア技術の研究を行い、これだという商品を考え、非常にレベルの高い活動をされているにも関わらずです。昨今はさかんにVUCA時代と叫ばれ、経営トップが簡単には判断できない、決断の先延ばしが問題視されています。

 R&D活動の最初から既存事業に匹敵する市場規模や利益を求めることに終始して投資をやめてしまうことは将来を考える上で残念な状況です。このような状況では、何を企画提案しても意味がないと嘆かれる企画担当者も多く目にします。しかしそれでも与えられたミッションは変わりません。では一体、企画の何を見直せばよいのでしょうか。

2. 企画を考える前に行うこと

 企画の内容については、それぞれコンサルティングの中で改善プランを提示していますが、ここではまず初めにチェックする項目を紹介します。本来は企画を考える前、最初に行う項目です。それは、「狙うターゲットを仮整合する」です。狙うターゲットとは、既存の顧客に近しい顧客・既存製品(技術)の改良を目指すのか、または完全に新規の顧客・製品(技術)を目指すのかです。

 ある企業の企画提案では、既存事業の企画担当者がながらく使っていたプラットフォーム技術をベースに新規R&Dテーマの企画を提案しました。このプラットフォームは10年来使用している鉄板技術でした。企画担当者はこの技術を踏襲することを前提に企画を作り、稟議承認の場に立ちました。特に問題もないプラットフォームでしたので、難なく承認を得ることができると考えていたのですが、なぜか却下されてしまいました。

 却下された際の経営トップからのコメントが「ありきたりで新しくない・面白くない」と一言。そうです、ここで初めて既存技術の延長戦上にある新規R&Dテーマを求めてはいなかったことに気づいたわけです。

 他にも、既存事業にひもづいているはずの新規R&Dテーマが、既存技術や既存製品に近しい企画を望まれなくなってきたというケースを目にします。この理由の1つとして既存事業トップであっても、目まぐるしく変わる社会変化に応じた新規事業・新商品創出への期待やプレッシャーが強くなっていることがあげられます。

 せっかく時間や工数をかけて企画提案を行うのですから、企画を考える前にまずはどんなゴールを目指しているのか、ありたい姿はどんな状態か、目指すターゲットは何かを整合することを惜しみなく行うことを推奨します。

 とかくコミュニケーションを取る時間がない、面倒だという声を耳にしますがこの機会を作ることで企画そのものの目的がはっきり...

します。

3.  まとめ:2 ステップで考える

 さらに補足するならば、狙うターゲットを明確にした後、初めて直近の開発で「何を」「どのレベルまで」行うかを整合するための企画を作成し、提案するという2ステップで進めるスタイルが経営トップと企画担当、開発担当が共通の目的を理解し合う上で効果的です。

 ここまで「狙うターゲット」と一言で解説しましたが、市場規模や業界、技術分野など具体的に深掘り行うことでより理解が深まることは言うまでもなく、段階的にコミュニケーションの機会を増やすプロセス作りも並行して行うことをお薦めします。

◆関連解説『技術マネジメントとは』

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