中国工場の実状を知る、経営層について 中国工場の品質改善(その12)

 

【第2章 中国工場の実状を知る】

【経営層について】

 前回のその11に続いて解説します。

(3)日系中国工場

 日系中国工場の場合、ほとんどの工場で日本人駐在員が総経理や工場長になっています。中には「自分の任期の間、何事もなく過ぎればよい」と考えている日本人駐在員のトップもいます。こういったトップの考えは、例え口に出さなくても周りにいる中国人スタッフに伝わってしまい、工場全体の士気に悪影響を及ぼすことになります。

 中国工場のトップとして赴任した多くの日本人駐在員は、赴任にあたりミッションを持ち、工場を少しでもよくしようと日々奮闘しています。真面目な人ほどすべてを自分でやろうとしてしまいます。しかし、実際には、日本人トップが中国で仕事を自分一人ですべてを切り盛りするのは不可能です。

 中国で仕事を進めるための一つのやり方としては、自分の片腕となる信頼できる中国人スタッフを持つことです。そうした中国人スタッフを持つことで、仕事をスムーズに進めることが出来ます。

(4)香港企業の日本人事業部長

 筆者が仕事で関わった香港企業での話です。東莞に工場を持っているこの企業は、それなりの規模でいくつかの事業部を持つ事業部制を取っていました。事業部のトップである事業部長の考え方や方針が、その事業部の方針となります。

 筆者が関わったのは、その中で一つだけ日本人が事業部長をやっていた事業部でした。工場長も日本人でしたが、日本人はこの二人だけで他はすべて香港人、中国人でした。

 この事業部がすごいと思ったのは、顧客への対応でした。顧客から引き合いがあると、顧客満足を第一に引き合い内容以上の回答を提案するのです。工場のものづくりにおいても、顧客の要望に応える、期待以上の対応をする雰囲気を従業員から感じました。

 この顧客対応は、日本人事業部長の考え方・方針から...

来ているものでした。事業部長はこう言っていました。「顧客の期待以上のものを提供する。それは我々が生き残るために必要なことなのです」と。トップの方針が見事に反映していた事例でした。

 次回は、日本人駐在員について、解説します。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行   筆者のご承諾により、抜粋を連載

 

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