―中国華南の現場から―海外生産 納期対策最前線

1.海外生産納期事情(はじめに)

 筆者は10年余りにわたり、電子機器のものづくりコンサルタントとして華南での汎用機器や業務用機器の生産に携わってきました。製品の多くはアジア系、日系のEMS(電子機器の組み立て請負工場)で生産されています。今回は彼らの日ごろ納期管理の事情と発注者としての留意事項・課題、筆者がリスクとして対応指導したことなどを紹介します。 以下、工場での納期の管理を、主に部品と組み立てに分けて記載します。

 

2.部品の納期管理

 発注から納入まで、特にリードタイムが長い部品は、LSI、日本製部品、欧米製部品などで、 通常2~3ヶ月ほど要します。特に日系メーカの部品類は、在庫を極力持たない生産管理がなされていることから、生産地が日本、あるいは同じ中国内にかかわらず長い傾向にあります。また、ゲーム機などのクリスマス関連、エアコンなどの季節ものは製品販売時期の3~4ヶ月前に部品が逼迫する傾向にあります。

 そのための対応の一つが、完成品のフォーキャストシステムをEMSと発注者との間で構築することです。その他に マルチベンダー認定方式があります。震災や洪水などの後考えられた部品供給のリスク分散が主たる目的ですが、納期対策としても有効です。実態としては、これらの構築に関する発注者側の対応は多様であり、傾向的には日系を含めたアジアの客先が、日本の客先よりも理解度は高いといえます。

 最も有効な手段は、部品の在庫ですが、よほどの信頼関係を築くか、契約で条件を明確にしない限り、部品在庫を行なわないのがアジアのEMSです。当方のEMSあるいは発注側への提案は少なくも1ロット分の部品在庫を持つことですが、これを保証し受け入れる発注者は少ないのが実態です。

 

3.生産における納期管理

 組み込み電源やサブ組み立ては、EMSから専門メーカへ発注されることが多いのですが、納期管理の盲点となることも多々あるのが実態です。彼らも多くの部品を使用し、部品納期確保には腐心しているはずです。発注後のフォローアップは不可欠です。

 EMSの内部では生産ラインのボトルネックを把握するのも重要です。傾向的には機能検査、大型のメカ組み立てなどが該当しがちです。中には凝った内外装の段ボールケース組み立てに人手と時間を要するプロセスも見受けられます。自身がEMSに発注する際は、外注品、ボトルネックとなりがちな工程は把握しておきたいものです。

 作業者が納期管理の主要因となる場合もあります。中国の春節休日の前後の1カ月ほどは、工場の人員が3割、もしくはそれ以上減ることもあります。あるいはスキルの高い作業者が大量に退職し、その補充や訓練に数カ月かかることもあるのがこの時期です。また、賃金の高騰に伴い、納期が迫っても残業や休日出勤をさせない経営者もいます。EMS訪問では、この辺りを探るのも訪問目的の一つと考えます。

 

4.納期交渉は論理的に

 納期の前倒しや遅延の場合は、シビアな納期交渉が持たれます。発注側はとかく感情的になり、交渉相手に怒鳴ったり、脅迫めいたことを言う場合も多々聞いています。日本国内では今でも「お客様と下請け」という半ば差別用語とも言える言葉が使われていますが、海外では「CustomerとSupplier」であり、あくまで対等の立場です。感情的にならず、是非エンドユーザの事情やビジネスチャンスなどを含めた論理的な説明・説得を期待したいと思います。

 

5.日本企業のサプライチェーンと納期の関連性

 日本企業のリードタイムが長い原因の一つは、アジア企...

業と比べて、サプライチェーンが複雑であることと思われてなりません。代理店が国内、海外と2,3か所にわたっていることから、事務処理や情報も複雑化し、納期のみならず当然価格も高くなります。これに比しアジア企業は直販が主流です。これも日本人がつい考えてしまう「海外・国内」という認識に一因があるように思われます。また、仲買を介在させるという伝統的なことも考えられます。

 しかし、情報の有効活用やグローバルな市場競争の観点から、昨今はこうしたサプライチェーンの見直しが必要と考えています。

 

6.おわりに

 以上、特に華南の納期管理事情や留意事項について紹介しました。 ものづくりを海外に頼る以上、QCDの一つである納期は極めて重要です。上記の状況を、皆様の頭の片隅に置いていただけたら幸いです。

 

図1.海外生産における納期管理の関係図

 

 

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