1. 引張特性の規格、曲げ特性の規格
(1)引張特性の規格、曲げ特性の規格
合成樹脂、汎用プラスチック製品の強度設計をする上で、ヤング率(縦弾性係数)と材料の強さを詳細に確認することは欠かせない作業です。材料力学的にプラスチックの物性表を見てみると、ヤング率と材料の強さを示す項目に、引張試験で測定したものと、曲げ試験で測定したものがあることに気づくでしょう。強度設計解析を行う際に、どちらの値を使えばよいでしょうか。今回は引張特性の規格であるJIS K7161-1、曲げ特性の規格であるJIS K7171に基づき、両特性の概要と強度設計における注意点について解説します。
(2)ヤング率
材料の変形のしにくさを示す物性値がヤング率です。材料が弾性変形をする場合、応力とひずみは比例関係となり、ヤング率はその直線の傾きを表します(フックの法則)(図1)。
図1. フックの法則とヤング率
プラスチックの物性表では、ヤング率あるいは縦弾性係数という言葉を見かけることは少ないのです。代わりに使われるのが引張弾性率または曲げ弾性率です(図2)。
図2. 物性表における引張弾性率と曲げ弾性率(出所:デンカ 「デンカABS 一般物性表」)
引張試験で測定したヤング率が引張弾性率、曲げ試験で測定したヤング率が曲げ弾性率です。両者の違いについては後述します。
(3)材料の強さ
弾性材料の場合、応力とひずみの関係は図1のように直線状になりますが、実際には材料の種類や測定条件によって様々な曲線を描きます。応力とひずみの関係をグラフ上にプロットしたものを応力-ひずみ曲線(S-S曲線)と呼び、材料の特性を示すために用いられます。材料の強さは応力-ひずみ曲線を使って定義されています。
図3. 応力-ひずみ曲線と材料の強さ
応力が増えずにひずみが増える最初の部分(曲線の凸部分)を降伏点、その時の応力を降伏応力といいます。また、材料が破断、せん断する時の応力は破壊応...