電子デバイスの信頼性設計プロセスとその手法

1. 信頼性設計と量産性

 
 「部品、機器の品質は80%以上が設計で決定される」といわれています。製品設計を「狭義の品質」すなわち、初期特性と外観のみで捉えやすいですが、これは設計プロセスの1ステップにすぎず、製品として市場に投入するには完成度の低い段階にあります。初期性能を実現させると同様に重要なのが、量産性と信頼性設計です。
 
 信頼性設計はコストと信頼度のバランスの上に成立しています。このバランスを決定するのは設計センスであり、判断基準になるのは精度の高い信頼度の予測になります。

◆関連解説『信頼性工学とは』

 

2. 信頼性設計の考え方

 
 設計した製品はどのくらいの寿命を有し、また、客先の要求に答えているかの検証は重要な設計プロセスとして位置づける事ができます。また、製品寿命を検証するときに、どのようなツールを用いて検証するかは設計スキルとして大切なことです。
 
 ここでは信頼性設計の各プロセスで使用するツールを整理しましたので、次に紹介します。
 

2.1 信頼性設計の手順

 
 信頼度設計の目標値を設定するのが最初のステップになります。目標値を設定するためにはユーザの要求を把握する必要があります。あるいは類似品の市場での信頼度実績を調査します。
 
 次に信頼度予測のステップになります。信頼度予測するには下表で示した代表的な方法がありますが、設計の精度でいえば「信頼性試験」「市場実績」から算出するのが一般的です。いずれの方法でも試作品、量産品を用いた試験による信頼度の確認が必要になります。
 
 最後に使用実績データから達成された信頼度を確認することになります。
 
 
 

2.2 信頼性設計プロセスと手法の関係

 
 「QC七つ道具」に対して鈴木和幸氏は、「信頼性七つ道具」を提案しています。[1]
 
 前者がそれぞれ独立した手法にたいして、後者は七つの道具が関連性を持つことによって信頼性設計をサポートすることが大きな特徴です。ここでは、設計をサポートする「信頼性データベース」を構築するための七つ道具に「故障率法」「DRBFM」「QA network」などの手法を追加し、設計プロセスにおける各手法の位置づけ、さらに各手法間の相関を明確にしました。それを下図に示します。
 
 図の左縦軸が信頼性設計プロセスを示します。それぞれの設計プロセスのインプットは「信頼性データベース」になります。「信頼性データベース」のインプットは「故障率法」「寿命分布モデル」「FTA」「FMEA」がアウトプットであり、「信頼性試験」「故障解析」「DRBFM」などが担います。信頼度は定量的な予測だけではなく、事故情報、工程情報など定性的な情報も重要なインテリジェンスとして形式知化することが重要です。
 
 

3. 信頼性データベース

 
 各手法から蓄積された「信頼性データベース」...
は設計者間あるいは組織間でも共有化され常に最新版であることが望ましい形です。「信頼度目標設定」「信頼度設計」「設計審査」プロセスにおいて、データベースにアクセスすることを設計のチェック機能としてシステム化することにより、設計の標準化、質の向上、タクトの短縮、さらには「価値の創造」に貢献できると期待しています。
 
【参考文献】
 [1] 信頼性七つ道具 CARE研究会著 鈴木和幸編著 日科技連出版社(2008)
  

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