プラスチックのひずみ 安全設計手法 (その8)

 

【安全設計手法 連載目次】

 プラスチックを上手に使いこなすためには、プラスチックの性質をよく理解することが重要です。その中でも応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。今回はプラスチックにおける応力とひずみの関係について、前回のその1に続いて解説します。
 

4. 応力-ひずみ曲線2

 
 材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、プラスチックの弾性変形範囲は非常に狭いので、設計を行う上では注意を要します。弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。英語で応力はStress、ひずみはStrainなので、頭文字を取ってS-S曲線とも呼ばれます。応力-ひずみ曲線1の続きです
 

(4) 衝撃エネルギー吸収能力

 曲線で囲まれている部分の面積は、衝撃エネルギーを吸収する能力を示します。この部分の面積が大きい材料は、変形させても粘り強く、衝撃に強いということを示しています。プラスチックの種類により応力-ひずみ曲線は様々な形になります。プラスチックの応力-ひずみ曲線の代表的な形を図5、それぞれの曲線に対応するプラスチックの例を表1に示します。
 
図5. 応力-ひずみ曲線の形
 
表1. 応力-ひずみ曲線と特徴とプラスチックの例
 
 同じプラスチックでもグレードや配合剤の有無などにより違った曲線になります。材料メーカーに依頼するなどして、使用材料の応力-ひずみ曲線を入手することがです。
 

5. 応力-ひずみ曲線の変化

 
 応力-ひずみ曲線はプラスチックの種類によって異なるだけではなく、同じ材料でも条件によって形が変化します。
 
【温度の影響】
 温度が高くなると、強度や硬さは低下する一方で、粘り強い性質になる。プラスチック製品を設計する際に、どのような温度環境で使用されるかを考えることは極めて重要です。
 
図6. 温度の影響
 
【ひずみ速度(引張速度)の影響】
 ひずみ速度(引張速度)が速くなると、温度の場合とは逆に強度や硬さが大きくなり、粘り強さがなくなります。
 
図7. ひずみ速度(引張速度)の影響
 
【ガラス繊維の影響】
 ガラス繊維を配合すると、強度、硬さ共に大きく向上しますが、粘り強さは低下します。
 
図8. ガラス繊維の影響
 
【熱劣化の影響】
 すべてのプラスチックは徐々に熱劣化が...
進みます。熱劣化したプラスチックは伸びがなくなり、脆性材料のような性質になります。
 
図9. 熱劣化の影響
 
 

6. トラブル回避

 
 プラスチックの応力とひずみの関係は、材料の種類によって様々なパターンがあり、配合剤の有無や使用環境、経年劣化などによっても変化します。そのような性質をよく知った上で設計を進めることが、トラブルを回避するために重要なことです。
 
 

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