静電気の誤った常識 静電気の見える化とは (その1)

 静電気が問題になっている現場は日本中に多数ありますが、自分の工場で必要な『静電気除去レベル』が分からずに、除電が不十分だったり、逆に要求以上に高価な除電器を購入している現場も多いようです。除電をする前に、まずは目に見えない静電気を『見える化』することが重要です。今回は『静電気を見える化』する方法について、2回に分けて解説します。
 

1. 静電気の誤った常識

 図1のグラフが示すように、乾燥時(相対湿度:10~20%)の発生要因別の帯電量は、湿潤時(相対湿度:65~90%)の20倍以上になります。
 
        
                     図1. 静電気帯電量
 
 その変化点は、図2に示すように相対湿度50%付近であり、50%を切ると急激に帯電量が高くなります。 
                  
                   図2. 相対湿度対静電気帯電量
 
 一般常識では冬場には静電気が発生しやすいと思われていますが何故でしょう?冬場の大きな原因は室内の暖房です。冬場、外気温が低下して室内を暖房すれば室温が上昇し、それに伴いその気温の飽和水蒸気量が上昇して相対湿度が低くなります。図3のように、温度10℃、相対湿度が50%の室内の場合、暖房で室温が25℃になると相対湿度は20%に大きく低下します。
 
                   
                      図3. 暖房と相対湿度
 
 日本の太平洋側は冬場に降雨量が少なくなり、絶対湿度が低くなります。従って製造現場で、春、夏、秋は特に問題がないのに、冬場に静電気トラブルが発生することが多く、その対策は相対湿度の改善がポイントです。
 

2. 静電気の見える化による品質改善

 静電気トラブルを改善する場合、QCサークル等でよく使用されている次のステップで改善を進めましょう。
   【 問題の認識 ⇒ 現状把握 ⇒ 原因分析 ⇒ 対策立案、実施 ⇒ 効果確認 ⇒ 歯止め&標準化 】
 

(1) 現状把握

 『品質管理』は正しい測定から始まります。静電気トラブルを改善する為に、初めに現状把握を客観的データに基づいて把握してください。それにはまず、静電気測定器にて現場の帯電量を測定しましょう。目に見えない静電気も静電気測定器で測定し、数値化すれば「静電気の見える化」が可能です。グラフ等で表現すれば、改善前との差を誰が見てもわかるようになります。また現在の歩留り率、チョコ停止率等のデーター収集も重要です。...
 

【静電気測定器の選び方】

 半導体工場では数Vで半導体が破壊されてしますので、帯電量を測定する電位計も精度が高く、信頼性の高い製品が必要ですが、価格が5万円以上と少し高額です。一方、食品工場での静電気によるトラブルは数百Vから発生するトラブルが多いので、測定精度は少し低く安価な2万円前後の静電気測定器でも使用できます。各工場の必要とする要求レベルに適した静電気測定器を選択してください。
 
                            
 
 次回は、静電気の見える化による品質改善の (2) 原因分析から解説を進めます。 

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