ばらつき要因、ノイズ因子 超実践 品質工学 (その4)

 

【超実践 品質工学、連載記事へのリンク】

  1. 未来の品質
  2.  機能性評価
  3.  機能定義
  4.  ばらつき要因、ノイズ因子
  5.  SN比について
  6.  機能性評価の使いどころと効果
 
◆関連解説『機能性評価とは』
 

1. 外乱と内乱という区別

 
 機能性評価の手順②のばらつき要因を考える際に、外乱と内乱という区別を知っておくとよいでしょう。製品を人、品質の悪さを病気にたとえると、外乱は空気中のウイルスや生活習慣、内乱は血圧や血中成分の変化です。外乱を原因とし、内乱が発生し、その結果として病気(品質不具合)になるのです。
 
 外乱とは製品の外側からくるばらつき要因のことで、お客様の①環境条件や、②使用条件であり、機能を変動させるおおもとの原因となるものです。①環境条件の例としては、環境温度や湿度の違い、振動や衝撃、腐食性のガスの存在などがあります。また、②使用条件は自動車の例では、渋滞が多い街中での走行なのか空いている高速道路での走行なのか、同乗者はどこに座っているのか、などの条件の違いが挙げられます。外乱は、その製品を使用するシーンをできるだけたくさん想定して、さらにはお客様が実際に使用するところを観察して、取り上げることが大切です。
 
 内乱とは製品が外乱にさらされることによって、製品の内部で起きる変化のことです。外乱と内乱は、原因と結果の関係にあります。たとえば、外乱である環境温度が高い場合は、製品内部の部品は膨張して寸法が変化したり、油の粘性などの特性が変化したりします。また電気回路の抵抗素子や配線の抵抗値が大きくなります。内乱を考える際には、必ずしも外乱から順に考える必要はありません。製品内部の材料や部品が、原因はともかく、どのような変化をする可能性があるかを考えていけばよいのです。
 

2. ばらつき要因とノイズ因子

 
 ばらつき要因を考えて列挙する際には、図4のように、外乱(環境条件、使用条件)、内乱(変動、劣化)に分けて特性要因図で整理するとよいでしょう。特性要因図を見ながら多くの人の意見を出し合うと、知識が共有されるだけでなく、抜けや漏れに気が付きやすくなるので、ぜひ実施してみてください。
 
 
図4. 特性要因図
 
 なお、一般的な電気・機械製品で考えられる外乱、内乱についての網羅的なリストを筆者著書「これでわかった! 超実践 品質工学」(日本規格協会、2016年)の127ページに掲載しました。ばらつき要因の抜けがないかのチェック等に有効活用できますので、さらにご興味のある方はそちらをご覧ください。
 
 特性要因図に取り上げた多数のばらつき要因から、重要な要因を取り上げ、ノイズ因子とする。ノイズ因子はその厳しさ(水準)を決めて、ばらつき要因を組み合わせて複合的に与えて評価することが重要です。ここが信頼性試験と大きく異なるところです。
 
 ばらつき要因からノイズ因子を選ぶ方法、ノイズ因子の厳しさ(水準)の決め方、ノイズ因子の組み合わせ方は、同書、131~155ページに詳しく解説しました。また、この中ではたった1つのサンプルで複合的なノイズ因子の影響を評価する...
方法も紹介しましたので、試作しにくい製品を実機で評価する場合は、ぜひ参考にしてください。
 
 さらに、ばらつき要因やノイズ因子を網羅的・体系的に抽出する手法として、XCN®(クロスチェック付きなぜなぜ分析、三菱電機株式会社の登録商標)があるあります。これについては、後日、技法解説で別に紹介することとしましょう。
 
 次回は、SN比は意味を理解して、ツールで使いこなすを解説します。
 
 

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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