資材の買い方 儲かるメーカー改善の急所101項(その19)

更新日

投稿日

生産マネジメント

2.モノづくり〈現場改善の基本〉

◆ 資材の買い方

 私はカイゼンを実行して経営を良くすることを皆でやろうとしているコンサルタントです。しかし、モノづくりにおける経営判断は時に分かりにくいのです。そこでいろいろなたとえ話を使ってカイゼンの判断材料にしてもらおうとしています。今回はそのたとえ話を一つご紹介します。

 私はノートを一冊買う必要がありました。そこで文房具屋に行き、100円のノートを一冊選びレジに持って行きました。するとレジのご主人が「じつはもうすぐ棚卸しで、在庫を減らしたいので特別割引です。100冊買って下さったら、半額でお売りします!」というオファーがありました。新品のノートが100冊で半額です。お得! という状況です。さて、私はノートを100冊買ったでしょうか?

 お分かりですよね、買いませんでした! でもナゼでしょう?

 もちろん100冊は要らないからです。1冊で十分。しかしこれは一番の理由ではありません。最大の理由は、いくら半額だといっても100冊買ったら5000円も払わなければいけないという事実です。実はその時私の財布には給料日の一週間前で7000円しか入っていなかったのです。平均すると1日1000円で、お昼ご飯やすべてをまかなうのに、5000円払ってしまったら残りは2000円で、何と1日300円で過ごさなければならない…。100円払えば済むところを5000円も払うバカがどこにいる!という普通の判断です。

 私たちは個人での買い物だと、キャッシュを意識しますが、会社でモノを買うときはこの意識がほとんど消えてしまい、一冊100円が50円になるなら50%のコストダウン!と数字上の判断になってしまいがちです。

 もちろん100冊のノートが必要であれば一冊50円での買い物は素晴らしいのですが、往々にして使用量にかかわらずコスト計算をしてしまうことがあるようです。もし100冊買ったノートが、結局10冊しか使わなかったとしたら、10冊のために5000円払っていますから一冊のコストは500円です。100円で10冊買えば支払いは1000円でコストは一冊100円ですから大損です。

 購入品のコスト計算はすべて生産されて、売れて、代金回収が済んだところでするのが本当のコストだと思いますが、それではいつになっても計算できないので、すべて売れた仮...

生産マネジメント

2.モノづくり〈現場改善の基本〉

◆ 資材の買い方

 私はカイゼンを実行して経営を良くすることを皆でやろうとしているコンサルタントです。しかし、モノづくりにおける経営判断は時に分かりにくいのです。そこでいろいろなたとえ話を使ってカイゼンの判断材料にしてもらおうとしています。今回はそのたとえ話を一つご紹介します。

 私はノートを一冊買う必要がありました。そこで文房具屋に行き、100円のノートを一冊選びレジに持って行きました。するとレジのご主人が「じつはもうすぐ棚卸しで、在庫を減らしたいので特別割引です。100冊買って下さったら、半額でお売りします!」というオファーがありました。新品のノートが100冊で半額です。お得! という状況です。さて、私はノートを100冊買ったでしょうか?

 お分かりですよね、買いませんでした! でもナゼでしょう?

 もちろん100冊は要らないからです。1冊で十分。しかしこれは一番の理由ではありません。最大の理由は、いくら半額だといっても100冊買ったら5000円も払わなければいけないという事実です。実はその時私の財布には給料日の一週間前で7000円しか入っていなかったのです。平均すると1日1000円で、お昼ご飯やすべてをまかなうのに、5000円払ってしまったら残りは2000円で、何と1日300円で過ごさなければならない…。100円払えば済むところを5000円も払うバカがどこにいる!という普通の判断です。

 私たちは個人での買い物だと、キャッシュを意識しますが、会社でモノを買うときはこの意識がほとんど消えてしまい、一冊100円が50円になるなら50%のコストダウン!と数字上の判断になってしまいがちです。

 もちろん100冊のノートが必要であれば一冊50円での買い物は素晴らしいのですが、往々にして使用量にかかわらずコスト計算をしてしまうことがあるようです。もし100冊買ったノートが、結局10冊しか使わなかったとしたら、10冊のために5000円払っていますから一冊のコストは500円です。100円で10冊買えば支払いは1000円でコストは一冊100円ですから大損です。

 購入品のコスト計算はすべて生産されて、売れて、代金回収が済んだところでするのが本当のコストだと思いますが、それではいつになっても計算できないので、すべて売れた仮定で計算されてしまいます。

 資材の購入はいろいろな外的条件もあり複雑ではありますが、このキャッシュフローという当たり前の考え方を常に持つことも大切です。そうすると要るだけ要るときに買うということが一番いいという結論が出てくるのです。

今回の言葉  

****************
 ロットで買うな、要るだけ買え。
****************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」
日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
在庫を利用して購入コストを下げるには(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...

 前回のその2に続いて解説します。   1.負荷調整によってスループットを稼ぐ    スループットを稼ぐには、下図のように生産...


生産の平準化とは:改善のヒント(その6)

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...


職場の全員がコスト意識を持つには 見える化(その3)

【見える化 連載目次】 1. 情報の取り扱いで競争力をつける 2. 見えないことの方が大切なことがある 3. 職場の全員がコスト意識を持つに...

【見える化 連載目次】 1. 情報の取り扱いで競争力をつける 2. 見えないことの方が大切なことがある 3. 職場の全員がコスト意識を持つに...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
クリーンルームの停電復帰後対応とは

        今回は、クリーンルームの停電復帰後対応を解説します。停電が発生するとクリーン度を維持できなくなり、クリーンルームの停電復帰後対応には...

        今回は、クリーンルームの停電復帰後対応を解説します。停電が発生するとクリーン度を維持できなくなり、クリーンルームの停電復帰後対応には...


機械加工現場のイージーミスを減らす方法について

   今回は、マシニング加工やワイヤーカット放電加工などにおけるイージーミスを減らす(無くす)方法について、事例から解説します。 1. 「関...

   今回は、マシニング加工やワイヤーカット放電加工などにおけるイージーミスを減らす(無くす)方法について、事例から解説します。 1. 「関...


成膜装置のワーク保持動作のダメージ・発塵対策へのアイデア

       成膜装置においてはワーク(製品)のハンドリングも大切なポイントです。ワークを保持する搬送トレイ(搬送キャリア)では、ワークを安定的に保...

       成膜装置においてはワーク(製品)のハンドリングも大切なポイントです。ワークを保持する搬送トレイ(搬送キャリア)では、ワークを安定的に保...